プレスリリースを見て驚きました。全国各地で多くの保育所等を運営する株式会社グローバルキッズ(親会社は東証プライムへ上場している株式会社グローバルキッズCOMPANY)が、大阪市内で運営する5保育所を社会福祉法人すくすくどろんこの会へ事業譲渡する旨を公表しました。

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譲渡するのはグローバルキッズ上新庄園グローバルキッズあびこ園グローバルキッズ戎本町園グローバルキッズ東淡路園グローバルキッズ住之江園です。

リリースにもある通り、事業譲渡を行う主な理由は「経営資源の首都圏集中」です。同社は今年4月に東京都等で保育所等を運営する東京建物キッズ株式会社の全株式を取得していました。そうした流れの上で、大阪市内で運営する5保育所を手放すという経営判断を行いました。

また、上記5保育所はファミリー層の転入が盛んな市中心部等になく、今後は急速な少子化が予想される地域にあります。こうした立地も影響したと推測されます。

事業を譲り受けるのは社会福祉法人すくすくどろんこの会です。本部は千葉県印西市にあります。全国各地で数多くの保育所・認定こども園・学童保育を運営しています。

同団体のウェブページを眺めていると、「パートナー募集」というページが目に付きました。

過疎地では、保育の空白地が広がっています。待機児童問題の比ではありません。

今後、保育の機会をいっさい奪われてしまう人が、地方のいたるところで増えていくのです。そのような状況を鑑み、どうしたら保育園を継続できるのかを深く考えるようになりました。

結論は、一法人一施設という小さな事業規模ではさまざまな課題を克服することは困難であり、存続することさえ危ういということです。

私たちは、事業規模の拡大と充実を図り、保育園の事業継承にも積極的に取り組んでいきたいと考えています。

https://doronkonokai.or.jp/partner/

「一法人一施設」という事業規模を否定し、事業規模の拡大や事業承継を主張しています。今回の事業譲渡は、規模の拡大を図る同法人にとってはうってつけの案件だったのでしょう。

一方で保育所の利用者や職員にとっては寝耳に水の話だったでしょう。まさか運営法人や雇用主が替わるとは、想定するのは難しいです。

当然ながら保育所の名称は変わるでしょう。同法人が運営する保育所は「地名+杜の保育園」とネーミングされるのが一般的です。ただ、大阪市内に「杜」というイメージは全くありません。

保育理念や運営方針等も変更されると考えられます。園生活にも大きな影響が出るでしょう。職員の大規模な入れ替わりも予想されます。保育所の利用者にとってはメリットが見に出しにくいのが実情です。

但し、本件は大阪市による譲渡承認が前提とされています。運営法人自体の譲渡(全株式の譲渡による完全子会社化等)であれば特段の支障はないと聞きますが、本件は保育所の運営法人自体が変わります。さらに株式会社から社会福祉法人へとも変わります。珍しいケースだと認識しています。

果たして大阪市は差し支えなく承認するのでしょうか。

なお、同法人は委託費の過大受給があったとして、今年3月末に約1,600万円を大阪市へ返還しました。

大阪市内施設の運営にかかる委託費等の返還完了に関するお知らせ

(中略)本日、当社が大阪市内で運営する5施設の運営費について、施設運営にかかる委託費等、15,665千円の返還が完了いたしました。(以下省略)
https://www.gkids.co.jp/news/news827.html

委託費の過大受給と返還、そして保育所の事業譲渡ともなると、大阪市の心証は決して良くないと考えられます。だからといって、譲渡を承認しないという判断も取りがたいです。

一つの要素となり得るのは、利用者の反応でしょう.保護者に対して十分な説明を行い、園児の園生活に支障が生じない様にする必要があります。こうしたプロセスを軽視し、保護者から大阪市にクレームが殺到する事態ともなれば、すんなり承認するのは難しくなりかねません。