(7/7追記)
条例改正案は否決されました。意外な結末に驚きました。
大阪府富田林市で市立幼稚園を4園に統廃合するなどとする条例改正案が否決されました。
https://news.yahoo.co.jp/articles/36b9a9c7589e6966a16ee45d1f40e5da0442d274
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大阪府富田林市(とんだばやしし)は公立幼稚園・保育所の大規模な再配置を検討しています。公立幼稚園13園を4園、公立保育所6園を4園に(代わりに私立保育所2園を新設)する計画です。
これに対し、子供が公立幼稚園へ通っている保護者の一部が「余りに拙速だ」と猛反発しています。
大阪府富田林市の幼稚園に子どもを通わせる保護者たちが、「市立幼稚園の統廃合」について猛反発しています。(中略)
市は2026年度から、現在13園ある(うち3園は休園中)市立幼稚園について、東西南北それぞれ1つずつの4園にすると計画していて、この統廃合で年間約9000万円が削減できるとしています。
佐藤さんの住む北部地域では、娘を含めて45人が通う「喜志幼稚園」などが園児数18人の「新堂幼稚園」に統合される計画です。いまは歩いて5分ほどの喜志幼稚園に通っている佐藤さんですが、2kmほど離れた新堂幼稚園までは車で10分ほどかかります。さらに、2026年度に統合するという計画だと、来年度に入園する佐藤さんの次女は年長の1年だけ転園しなければならないというのです。(以下省略)
公立幼稚園・保育所・小中学校の適正配置(統廃合)は非常に難しい問題です。少子化・財政という行政の事情に対し、保護者の不安・不信や地域からの反対意見が続出するのが一般的です。大阪市内でも子供の数が減少している各地で同じ様な行動が見られました。
様々な事例を検証して改めて気づかされたのが、「行政の素案はほぼ最終案」という当たり前の結果でした。保護者や地域住民が何を言ってもほぼ変わりません。枝葉の部分は修正等が行われたとしても、幹の部分(統廃合する組み合わせ等)は原案通りに進むのが通例です。
小中学校の統廃合に対して激烈な反対運動が展開された大阪市生野区であっても、最終的には概ね当初の計画通りに統廃合が行われています。
生野区小・中学校教育環境再編方針(素案)を修正しました
https://www.city.osaka.lg.jp/ikuno/page/0000258663.html
統廃合に関する行政の計画はよく出来ています。保護者や地域住民と比べ、能力や情報量が全く違います。「明らかにおかしい」というのは余り見かけません(偶にありますが)。
しかしながら当たり前の様に揉めます。そこには得てして行政の情報提供不足や強引な進め方に対する反発があります。
上記TBS記事では2023年6月の広報誌(広報とんだばやし)に「市立幼稚園の再配置」が掲載されたとし、保護者が「突然の廃園通知」に驚いています。
広報誌にはこれまでの経緯等が掲載されています。
https://www.city.tondabayashi.lg.jp/uploaded/attachment/89518.pdf
平成末期にも廃園する方針が検討されていましたが、反対する請願書が市議会へ提出され、方針は見直されました。
令和元年からタウンミーティングを実施、令和3年2月に新たな方針を策定する事を表明、そして令和5年3月に基本方針が策定されました。
問題があるとしたら、令和3年以降の情報公開です。行政からは検討中の内容はなかなか発信されず、最終段階(素案)になってから唐突に公表される事が多いです。想定と全く異なる内容に驚く場合は少なくありません。
平成30年には最新案にて存続するとされている新堂幼稚園を廃園する案が検討されていました(後に請願等を受けて白紙化)。新たな基本方針が策定されたとしても、「数年前と同じ様に園児数が少ない新堂幼稚園が廃園され、こどもが通っていて規模が大きい喜志幼稚園は存続するのでは無いか。」と推測するのは自然です。
しかしながら、これと正反対の素案が公表されました。驚くのは無理はありません。富田林市の北地区では園児が多い喜志幼稚園・富田林幼稚園を廃園とし、その中間にあって園児が少ない新堂幼稚園を存続するとしています。
こうした方針を富田林市が打ち出した主な理由は、新堂幼稚園が中間地点にある・保育室を増築する必要が無い・富田林幼稚園は借地を利用している、というものです。
これにより、新堂幼稚園は5歳児2クラス・4歳児2クラス・3歳児2クラスに再編成されます。
再編後は登園バスも運行されます。旧幼稚園付近を回ります。
廃園後に地域から幼稚園や保育所等が無くなってしまうのではないか、という心配もあるでしょう。しかし、この地域には市立幼稚園や保育所等もあります。
https://www.city.tondabayashi.lg.jp/uploaded/attachment/89200.pdf
北地区にはPL学園幼稚園い加え、8保育所等が存続します。一定の子育て環境は整備されています。
これらを踏まえると、富田林市の計画はよく出来ている印象です。
多くの地域で少子化が進み、それ以上に公立幼稚園離れも深刻です。0-2歳児の内に保育所等へ入園したり、教育や設備が充実した私立幼稚園へ入園する動きが強いです。大阪市内でも公立幼稚園は本当に園児が集まっていません(特に4-5歳児クラスしかない幼稚園は深刻)。
富田林市は2026年度から統廃合を実施する考えです。つまり多くの幼稚園は2026年3月で廃園となります。この春(2023年4月)に3歳児クラスへ入園した園児が卒園するのと同時です。少なくとも既に在園している園児が卒園するのを待つ構えです。
一方で新たな園児が入園し、卒園するのを待つのを避けたい考えも透けて見えます。少ない園児が各園に分散する事によって集団教育が行いにくい状況を早急に改善したいのと同時に、財政支出を早く抑制したいのでしょう。
今年秋には2024年4月に入園する園児の募集が始まります。それまでに条例案を可決しなければ、廃園を実施する時期が更に1年延びてしまいます。
やはり問題は素案を公表した時期です。今年3月に策定されましたが、情報に敏感な保護者以外にはなかなか伝わりません。
広報誌に掲載されたのは5月号です。5カ月後の10月頃に公立幼稚園へ入園申し込みを行う計画だったのが、完全に狂ってしまいました。今から数ヶ月の間に他の幼稚園や保育所等を見学し、検討するのは大変です。
保護者目線としては、こうした計画は途中段階でも一定の情報を公開すると共に、素案の決定・条例案の可決・実施までは相当の時間を確保して欲しいです。
どの幼稚園・保育所・学校へ入園・入学するかは、子育て世帯にとっての一大事です。それをいとも簡単に「3年後に廃園にします。5カ月後の入園申し込みは慎重に判断して下さい。」と言われても余りに急です。保護者が戸惑うのも当然です。
ただ、少子化は今後は更に急激に進みます。子育て環境の充実は必要ですが、幼稚園や保育所等の再編は不可避です。