(事故が起きた滝川小学校、グーグルストリートビューより)

名古屋市立滝川小学校で、児童の命が危機に瀕する事故が起きました。

頭部を強打して児童が異変を訴え、保護者が医療機関への搬送を依頼したにも関わらず、養護教諭は「目をぶつけたのになんで吐くのか」「まずは保護者が診て欲しい」と拒否しました。

5日午後1時過ぎ、名古屋市昭和区の小学校で、5年生の男子児童が友達を負ぶって遊んでいたところ、つまずいて転倒し、顔面を骨折する大けがをしましたが、学校が救急車を呼ぶなどの対応をしていなかったことがわかりました。

男子児童は、保健係のクラスメイトと、養護教諭がいる保健室に行き、目がぼやけていて、焦点があわないことを訴え、嘔吐もしました。

しかし、学校は救急車を呼ぶなどの対応をせず、学校に駆け付けた母親が救急車を呼びました。

https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/88789?display=1

当該校は名古屋市立滝川小学校です。名古屋市東部の高級住宅地・文教地域にある学校です。

名古屋市教育委員会の記者会見によると、事故後の流れは下記の通りです。

◆教育委員会の会見で示された内容
・7月5日(火)午後1時10分頃、児童(10歳)が給食後の休み時間中、他の男子児童をおんぶして小走りで教室の中を移動していた際に、転倒した。その際、両手はおんぶをしていた児童の足を持っていたため、手をついて受け身をとることができず、顔面を床で強打した。

・児童が職員室にいる担任に、上記のことと、物が二重に見えることを伝えた。

・午後1時20分頃、児童は保健室に行き、左目の痛みを訴え、嘔吐した。養護教諭(20代女性)が患部に腫れや変色が見られなかったことや、眼球が動いていたことを確認し、保冷剤で患部を冷やした。

・午後1時30分頃、養護教諭は保護者に迎えにきてもらうよう連絡した。その際、母親は「学校から病院へは連れて行ってくれないのか」と電話した養護教諭に伝えたが、学校は、まずは保護者に児童の様子を見てもらうという判断をした。その電話のやり取りで事故を知った校長も、保健室で児童の様子を確認した。顔色がよくなかったため、校長は横になるよう指示をした。

・午後1時40分頃、保護者が来校した際に、児童が再び嘔吐した。保護者はこのまま病院に向かうことにした。

・午後1時50分頃、学校の北門付近で、児童が痛みと気持ち悪さを訴えたため、母親が自ら119番通報した。

・午後1時55分頃、救急車が到着し、病院に向かった。

・午後2時20分頃、救急車が病院に到着した。

・午後3時40分頃、この病院では手術が出来ないため、別の病院に救急車で移送した。

・午後7時05分頃、左側眼窩底骨折による手術を開始し、午後8時40分頃に手術が終了。現在、入院・治療中。

https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/89301?display=1

保護者は激怒しています。子供の様子が素人目にも異常だったのに加え、児童の訴えを養護教諭が無視していたからです。

母親によりますと、迎えに行った時、男子児童は顔が真っ青だったということです。

男子児童は顔面を骨折していて、病院に運ばれましたが、危険な状態だったため、別の病院に移されて、目に約3センチのプレートを2枚重ねて入れる緊急手術を受けました。

男子児童は現在も入院中で、物が二重に見える状態が続いているということです。

https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/88789?display=1

男子児童は転んで目のあたりを強打し、保健室の養護教諭にものが二重に見えることを訴え、嘔吐もしましたが、「目をぶつけたのになんで吐くのか」などと言われて、救急車を呼んでもらえなかったということです。

https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/89146?display=1

子供にとって頭部の怪我は本当に怖いです。お世話になっている保育所も学校も「少し過剰では無いか」と思えるほどに対応して下さっています。すぐに保健室で様子を観察し、急いで受診する必要が判断した際は保護者了解と前後する形で救急車を呼んだり医療機関へ向かったりしています。

本事故では強打した場所やシチュエーションが非常に悪いのが特徴的です。土では無く硬い床の上、しかも友人を背負っていました。運動場で1人で転んだのとは、衝撃が全く違います。

本件では母親が学校へ「医療機関へ連れて行って欲しい」と要望しています。しかし、学校はこれを断りました。児童の容体を正しく把握していなかった為です。これは養護教諭の「目をぶつけたのになんで吐くのか」に象徴されます。
「目をぶつけたのになんで吐くのか」
この発言が本当ならば、養護教諭失格です。医療機関へ連れていなかった事以上に、児童・保護者との信頼関係が無くなってしまいました。

学校長の判断にもいささかの疑問が残ります。顔色が悪かったにもかかわらず、横になる様に指示しただけでした。ただ、養護教諭が即座に医療機関へ搬送する判断を躊躇い、かつ保護者が数分後に来校する状況を踏まえると、学校長の判断もやむを得ません。

滝川小学校の対応に大きな問題があるのには、実は伏線があります。同じ名古屋市昭和区にある名古屋市立向陽高等学校において、柔道部の練習中に頭を強打して生徒が亡くなった事故が発生しました。

 第1志望の高校に進んで3カ月。倉田総嗣さん(当時15)は柔道部の稽古中に繰り返し頭を打ち、命を落とした。

 2011年春、名古屋市立向陽高校に合格。体を鍛えたいと柔道部に入った。体格が小さくても光る技を磨こうと、自宅でもゴムを使い背負い投げを練習していた。

 5月の夜、「部活の稽古で頭を打ってから、頭痛が続く」と母親の久子さん(61)に訴えた。翌日、病院でCTを撮ったが、異常は見つからなかった。

https://digital.asahi.com/articles/ASPCV5FQ6PC1OIPE00N.html

柔道部の事故では意識を失った後に即座に搬送されました。が、1ヶ月後に帰らぬ人となりました。詳しい経過は下記報告書に記載されています。

名古屋市立向陽高等学校柔道事故調査報告書
https://www.city.nagoya.jp/kyoiku/cmsfiles/contents/0000052/52831/houkokusyo.pdf

滝沢小学校の杜撰な対応を見ていると、向陽高校柔道部事故の教訓が活かされていないと言わざるを得ません。両校はわずか2.5kmほどの距離しかありません。事故後12年が経ち、危機感が形骸化しているのでしょうか。