コロナ第5波に襲われた8月下旬から9月に掛けては、少なくない学校等で臨時休業を行いました。

先々週の時点で既に約半分の学校で2学期中に臨時休業を行った事があったので、現時点では半分以上の学校で行われたと考えられます。

遡ること5か月、4月から5月に掛けて行われたオンライン学習は、多くの学校や家庭が混乱しました。背景事情等を大阪市教育長(教育行政の事実上のトップ)が説明しています。

混乱のオンライン学習…教訓は生かされたか 大阪市教育長に聞く

新型コロナウイルスの感染「第5波」の中、各学校で2学期が始まっている。大阪市は緊急事態宣言下だった4~5月、松井一郎市長の号令の下、市立小中学校でオンライン学習を行ったが、準備不足もあり、学校は混乱。現職校長が市教委の対応に苦言を呈する提言を公表し、処分を受ける事態に発展した。教育現場を翻弄(ほんろう)した1学期の教訓は生かされているのか。市教育委員会の山本晋次教育長に感染対策や学習機会の確保策、校長処分の真意などを聞いた。(以下省略)

https://mainichi.jp/articles/20210909/k00/00m/040/281000c

気になったやりとりを取り上げていきます。

 ――(教諭と児童・生徒がやりとりできる)双方向通信ソフトを使って接続テストを実施するなど一定の成果を上げた一方、通信環境が整わないなど多くの課題があったが。

 ◆市長には、学習者用端末(ノートパソコンやタブレット端末)の配備は終わったが、先生方や子どもたちの慣れの問題や、一斉に使用する場合は通信環境の問題があるので学校間で、ばらつきが出ると申し上げた。できる範囲でオンライン学習を展開し、先生と子どもがオンラインでつながっておくことができれば、子どもの顔色を見るだけでも意味があると考えた。コロナが長期化すれば、オンライン対応がもっと求められるという思いは学校現場とも共有していた。小学校高学年以上では、ほぼ半分の学校で双方向通信による授業を試行できた。

教育長は唐突に展開されたオンライン学習の問題点を認識していました。

オンラインで子供の顔色を見ることはできました。しかし、双方向通信を行えたのは週1回40分のみでした。通信帯域が全く足りなかったと指摘されています。

教育長は「双方向通信による授業を試行」とコメントしています。「授業の試行」であり「授業」とは認識し得なかったのでしょう。

学校の先生も「コミュニケーションを行うツールとしては優秀だが、これで授業を行うのが難しい」と話していました。

多くの保護者は「学校での授業は殆ど行われず、殆どの時間は在宅している。これは実質的に休校・家庭学習への丸投げだ。」という認識だったでしょう。教育長自身が「授業」と考えていません。

 ――学校現場の現状や授業時間の確保を考慮した判断だったのか。

 ◆市教委としてもオンラインを活用して、学習機会を保障する必要性は考慮していた。密を避けることを大原則としながら、保護者の状況によっては学校で預かり、健康管理も含めて登校して給食を提供するという変則的な部分休業を実施した。その中の学びの保障として、できる範囲でオンライン学習をやってもらいたかった。実施状況で学校を評価することはないと市長とも確認していたし、まずはやってみて、課題を具体的に浮かび上がらせて次に備えることが、コロナとの長い闘いでは必要だという認識だった。

「まずはやってみて、課題を具体的に浮かび上がらせて次に備える」という考えは理解できます。

しかし「やってみて」という名目で行われたのは、繋がらないオンライン授業、バラバラの登校時間、相対的にリスクが高い給食提供、大阪市長の「休校では無い」という主張で休みづらい保護者、50時間もの授業の遅れでした。

余りに稚拙です。多くの課題を浮き上がらせたという収穫はありましたが、課題による負担は児童生徒・保護者・学校へ重くのし掛かっています。

 教室での対面授業を通して、子どもの学びの到達度を測るという基本は変わっていない。学校休業になると、今まではプリント学習などしかなかったが、新たにICT(情報通信技術)という選択肢が入ってきた。オンラインで双方向授業などが展開できれば、対面授業との大きなギャップは生まれない。学校現場と一緒に、できるだけいい姿に近づけていきたい。

学校休業時にオンラインで繋がれるのは大きなメリットです。第5波に襲われた9月も、多くの学校で必要に応じてオンライン授業が行われました。非常時に有力なツールです。

ただ、対面授業に相当するのは難しいです。画面が小さくて板書が見にくく、先生が児童生徒のノートを見る事が出来ません。小学生は保護者の手助けが不可欠です。

 今回は、全国的にみると夏休みを延長している教育委員会もあるが、大阪市教委としては、なるべく学校全体の長期休校を避けていきたいと思っている。学級閉鎖や学年閉鎖、休校になった場合には、ICTを活用し、休業期間の学習機会の保障に充ててほしい。先生と子どもをつなぐコミュニケーションの手段としてもオンラインを活用してもらいたい。

夏休みを延長する形で臨時休業を行った地域も多い中、大阪市は通常通りに2学期を開始しました。しかし、結果として、ここ1か月で半数以上の学校が臨時休業を経験しました。

中には学校内で感染が広がった事例もあります。休校すれば避けられた感染でした。が、登校して授業を行う重要性も大きいです。どうすべきだったか、事後的に検証して欲しいです。

◆前回(4~5月)の教訓を踏まえ、インターネットの通信環境がない家庭向けにモバイルルーターの整備などを進めてきた。さらに、通信量の増加に対応できるシステムに変更し、変更までの間の緊急対応としてモバイルルーターを学校へ配備した。また、2学期からは(端末を使って問題を解く)デジタルドリルを導入する。ソフトの充実を図り、先生への研修も実施してきた。やりやすい教科から、子どもたちの状況に応じて各校でやってもらえればいい。

校内や学校と市教委間のネットワークが貧弱なので、多くの児童生徒が接続すると通信が重くなってしまうそうです。その為にモバイルルータを各校に配備し、校内ネットワーク等を迂回して通信を行う事を意図しています。

しかし、学校でモバイルルータに接続した子供から「なかなか繋がらなかったよ」と聞きました。先生が子供の相手をしながら複数台のモバイルルータを管理するのは難しいです。前途多難の様子です。

デジタルドリルも試しています。パソコンで答えを入力・手書きし、自動的に採点されるものです。よく出来ていますが、やはり画面の小ささが気になります。タッチペンが欲しくなります。

新聞記事の後半部分では、独自の提言案を公表して処分された木川南小学校長について取り上げられています。こちらは別記事で取り上げる予定です。

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