平成30年度大阪市保育所等一斉入所(1次調整)では、3,000人以上が入所保留となったそうです。2次調整へ向けて苦悩している様子を、毎日新聞が掲載しています。
ただ、記事の標題「保育所の場所確保進まず」という表現は、事実を正確に反映していない感じます。
大阪市 待機児童ゼロ、遠き春 保育所の場所確保進まず
大阪市が目標に掲げる保育所の「待機児童ゼロ」が、今春の達成を危ぶまれている。2017年度は例年の約2.7倍の予算を投じ、区役所庁舎内にも保育所を整備するなど入所枠の拡大に努めるが、確保できたのは当初予定の8割。4月入所に向けた調整が大詰めを迎え、預け先の決まらない親は焦りを募らせている。
「どうしても探したいんです。生活もあるし……」。認可保育所の2次募集の締め切りだった2月16日、東淀川区役所を訪れた会社員の女性(37)が吐露した。4月に仕事に復帰する予定で、生後9カ月の息子の預け先を探している。「状況が良くなっている実感はない」と訴える。
2歳の息子を認可外保育所に預けているアルバイトの女性(38)は「小規模保育所は対象が2歳までなので息子はすぐ転園になる。認可保育所に入れたい」と話した。
市によると、4月入所に向けて認可保育所(対象は就学前)や小規模保育所(定員6~19人、対象は2歳まで)などに申し込んだのは2月2日時点で1万4548人。1次募集では1万1455人が内定し、3000人以上が未定で多くが2次募集に回った。
市は今年度、認可保育所などを150カ所整備し、6053人分の枠を増やす計画だ。昨年4月開園の小規模保育所「ぴっころきっず中津園」(同市北区)はマンション1階にあり、2月現在で15人が在籍。運営会社は4月から北区役所などの庁舎内で保育所を開く。
待機児童が多い都心部は地価が高く場所の確保に苦心し、整備が決まったのは102カ所(4745人分)。17カ所で整備を進めている庁舎内保育所は、いずれもまだ開所していない。昨年4月時点の待機児童は325人で01年度の1364人からは減ったが、市は18年度、新たに4054人分の入所枠が必要と見積もり、113カ所を整備する方針だ。
ただ、入所枠が増えても都心の保育所に人気が集中しがち。子育て世代が多い西区では昨年4月入所の新規申し込みは678人で、入所決定は444人だった。今春入所の募集は約780人だが1次募集に879人が申し込み、入所枠の拡大を希望者が上回った。(以下略)
東淀川区は上新庄駅付近は入所しにくい一方、離れるに従って徐々に入所しやすくなる傾向があります。
フルタイム・0歳児であれば、ほぼ1次調整で入所できたと推測されます。2次調整で入所を考えるのであれば、自宅に近い・募集人数が多い施設から順に記入している事となるでしょう。
アルバイト勤務からの2歳児入所は難しいのが実情です。募集人数が多い新設園であれば入所できる可能性はありますが、それ以外は募集人数が少なく、点数が足りないケースが専らでしょう。
すぐに転園となってしまいますが、まずは小規模保育施設へ入所し、卒園児加点・新設園への転所を考えるのが無難です。
都心部で苦心?
上記新聞記事には、やや疑問を感じる部分があります。
「待機児童が多い都心部は地価が高く場所の確保に苦心し」、とされています。都心部では確かに場所の確保に苦労しています。中央区や浪速区の保育所では、決まったのは予定の半分以下でした(詳細はこちら)。
しかし、西区・天王寺区等では、ほぼ予定通りに決定しました。特に西区は東部地域で集中的に開所し、入所に必要な点数が明らかに低くなりました。入所募集数へ平成29年の447人から、平成30年は782人へと急増しました。
一方、都心部以外でも決まらなかった地域は少なくありません。港区・大正区・生野区・鶴見区・平野区・東住吉区では全く決まりませんでした。鶴見区を除けば未就学児が大きく減少している地域です。
予定通りに整備が進まなかったのは、むしろ未就学児減少地域での設置計画が過大であり、事業者の応募がなかったという理由の方が大きいのではないでしょうか。
庁舎内保育施設は未開所?
また、「17カ所で整備を進めている庁舎内保育所は、いずれもまだ開所していない」と指摘されています。
しかし、市役所・区役所内に設置する庁舎内保育施設(大半が小規模保育施設、「小規模保育所」ではない)は、当初から平成30年4月までの開所を目指して進められていました。
平成30年4月までに待機児童を含む保育を必要とする全ての児童に対応する入所枠を確保するため、保育所等の整備などこれまでの取組に加えて、今般の庁舎内保育施設の設置など従来の手法にとらわれない特別対策の取組を進めております。
http://www.city.osaka.lg.jp/hodoshiryo/kodomo/0000400029.html
「まだ開所していない」のではなく、「多くが予定通りに4月開所する見通しである」が正しい表現でしょう。
当初計画や保育需要を下回ったものの、「保育所の場所確保」は「当初予定の8割」に達しました。これだけの施設を1年で開所させた政令市等は、他にないでしょう。
ただ、新設事業に対する細かなフォローが欠けていたと感じる部分もありました。多くの施設が4月開所からずれ込んだ、北区の事例が典型的です。
場所・予算・保育士不足の中、市役所はできる限りの対応を行っていると感じます。ミクロ面では課題はありますが、マクロ面では相当な力を入れていると感じます。