「やっぱりなあ」という話です。
女性教諭が児童に差別的発言で「学級崩壊」、大阪の小学校
大阪市立小学校の女性教諭が、担任を務める3年生の学級の児童に対し、「特別支援に行かなければいけない子」といった差別的な発言をしたり、「担任を代わってほしい」「もう辞職する」と指導を投げ出すようなことを言ったりしていたことが18日、産経新聞の取材で分かった。学校側は事態を把握しながら保護者に伝えず、謝罪もしていないという。
クラスには学習についていけない児童が複数おり、授業中に席を立ったり、机の上に座ったりすることが常態化する「学級崩壊」の状態にあったという。
保護者らによると、女性教諭は昨年4月から3年の1クラスを担当。指導の中で、児童を職員室に引きずって連れて行こうとし、見かねた別の教諭が理由を聞くと、他の児童も聞いている状況で「この子は特別支援に行かなければならない」と他の児童と区別するような発言をした。
また給食を食べるのが遅いため、教室ではなく保健室で食べられるように措置していた別の児童の面前で「私が言っても何もしないし、正直言って担任を代わってほしいくらい」と突き放すような言動があった。
クラスの児童の上履きが隠されたり、机の上にごみが置かれたりと、いじめが疑われる事案も複数あったが、女性教諭から学年主任や校長らに申告されず、事実関係の調査がされなかったケースもあるという。
校長は取材に対し、女性教諭に不適切な発言があったことを認めた上で、「市教育委員会からも何回も指導に来てもらい、サポートの人員も投入して、みんなで支えながら取り組んできた」と説明し、「クラスは落ち着いている」と学級崩壊を否定した。
事実関係を保護者に伝えず、発言を受けた児童も含めて謝罪していない点については「連絡を入れておけばよかったという反省はある」と話した。
「保護者からクレームが来て、新聞社から取材があるとも聞いています。私は3月で辞めますから、どうぞ、おうちの方にも言ってください」
大阪市立小の3年の学級で、担任の女性教諭は児童ら全員の前で、こんな投げやりな発言をしたという。学校側によると、昨年4月に新任教諭として赴任。まじめで教育にも熱意を持っていたが、新型コロナウイルス感染拡大に伴う臨時休校など難しい時期に対応を迫られ、次第に指導が追いつかなくなった。
一般に「学級崩壊」は授業規律を失い、正常な学習活動ができない状況を指すが、「いじめ」や「不登校」と違って明確な定義があるわけではない。「100クラスあれば100通りの学級崩壊がある」とも言われ、一律の対処ができない難しさがあるという。
現職の小学校長で、学級崩壊に関する著作もある中嶋郁雄氏は「荒れてしまう学級の先生はみんなから責められている気になり、話し相手もいなくなって、どうしても孤立する。荒れる前に人間関係を築いておけるかが大切だ」と、学校管理職のマネジメントの重要性を指摘する。
大阪市立小のケースではクラスに「学力向上支援サポーター」と呼ばれる職員が複数配置されたが、学校関係者によると、事実上機能していなかったという。(以下省略)
https://www.sankei.com/life/news/210318/lif2103180015-n1.html
毎年、決まり文句のように「○○小学校の○年生が学級崩壊した」という噂話を聞きます。本当の話もあれば、ちょっとした話に尾びれや背びれが付いて大きくなった話もあるでしょう。
新任教諭(採用倍率2.4倍)
一つ目のキーポイントは「新任教諭」という点です。
多くの方がご存じだと思いますが、大阪市教育委員会は教員の採用に苦戦しています。応募者が非常に少ないのが実情です。
特に小学校教諭の採用は大苦戦しています。2020年度の採用試験(2021年4月採用)においては、小学校教諭の採用倍率は2.4倍でした。驚きの低さです。
一般的に3倍を切ると十分な選考が行えないと聞きます。2.4倍ともなると、例年の選考ならば合格水準に達しない志望者も合格させざる得なかったでしょう。
コロナ禍による休校
一定程度の規模がある事業会社と大きく異なるのは、小学校は新任教員であっても1年目から担任を受け持つケースが多い事でしょう。
教科担任制である中学校や高等学校ならば初年度は副担任という形もあるでしょうが、小学校はクラス数に比べて教員数が多くありません。
例年ならば新採教員が新しいクラスに苦戦しながらも、周囲の助けや過去の指導例等を参考にしながらクラスを運営していくのでしょう。
しかし、今年は過去の経験等が通じない1年でした。コロナ禍による休校です。
子供が通っている小学校は3月から5月中旬まで全面休校、5月後半は週1~2回の登校、6月前半は分散登校、ようやく6月後半から通常授業が再開しました。
それ以上に困っていたのは、行き場を無くした子供達です。休校の3か月間、子供の居場所は本当に限られていました。
当時の大阪市内は本当に閑散としていました。繁華街は半ばゴーストタウン、子供が行けるのは近所の公園程度でした。
保護者が付きっきりに近い形で面倒をみた家庭、学校の預かり保育を利用した家庭、自宅でほったらかしにせざるを得ない家庭、過ごし方はそれぞれでした。
その結果、子供達の様子も例年とは大きく違ってしまいました。再開後は落ち着かないクラスが多く、学力差も開き、指導に苦慮したという話も聞きました。
学校・保護者のコミュニケーション不足
学校再開後に児童と教員はコミュニケーションを取れる様になりましたが、教員と保護者のコミュニケーションは難が続きました。
例年は家庭訪問や個人懇談(2回から3回)を行うのですが、今年は個人懇談が1回行われたのみでした。
昨年までなら何か問題や相談事があれば、学校へ出向いて先生に相談する機会もありました。しかし今年は難しく、電話さえも遠慮してしまいました。
学校内の様子もなかなか見えません。授業参観の回数も減りました。学習発表会も行われませんでした、
コミュニケーション不足によって様々な問題が小さな目の内に摘み取れず、大きな木に成長すると手が付けられなくなってしまいます。
学校管理職の指導不足
上記記事では『大阪市立小のケースではクラスに「学力向上支援サポーター」と呼ばれる職員が複数配置』としています。
「学力向上支援サポーター」とは、学力向上を図る為の支援要員です。
「学力向上支援サポーター」とは、大阪市が行う学校活性化推進事業における「学びサポーター」、「学習サポーター」、「理科補助員」の総称。大阪市教育委員会は、4月1日から「学習サポーター」と「理科補助員」を募集している。学力向上支援サポーターを配置することで、児童・生徒の学習や理科教育の充実をはかり、学力の向上を目指す。
「学習サポーター」は、市立小学校・中学校で「書くこと」「読むこと」などを中心とした国語科・算数科・数学科などにおける学習支援を行う。学習プリントなどの教材準備も活動内容に含まれる。
「理科補助員」は、市立小学校における理科の授業時間を中心に、観察・実験などの実施支援を行う。観察・実験などの準備や後片付け、計画立案や教材開発支援も活動内容に含まれ、理科授業の進め方の提案や助言も行う。
報奨金は、学習サポーターは1時間あたり900円、理科補助員は1,000円。
報奨金(時給)から分かる通り、職務は様々な学習支援に限られています。計画立案や教材開発支援も含まれているとされていますが、この時給では期待できません。
当然ながら学級崩壊を改善するキーとなる、児童指導や保護者対応は含まれていません。ここに注力する必要があるのに、サポーターや補助員を投入しても効果は薄いです。
本来は校長・教頭・ベテラン教員がクラスに張り付き、児童に関する様々な問題に対応すべきだったのでしょう。しかし、そうした対応を行った形跡は見えてきません。
氷山の一角
今年の学級運営は本当に難しかったと思います。
一部の児童への対応に時間や労力を取られ、他の児童が疎かに成り、徐々にクラスに落ち着きがなくなり、学級崩壊へ至った過程が浮かび上がってきます。
当該教諭は「この子は特別支援に行かなければならない」と発言したそうですが、恐らくは学級崩壊が進行して精神的に追い詰められている状況での発言だったと推測しています。
学級崩壊を何とか食い止めようとし、とある児童を特別支援学級へ「隔離」しようとしたのでしょう。
誰しもがそうですが、精神面での落ち着きを無くしてしまうと、突拍子も無い発言や行動を行ってしまいます。
差別的発言で学級崩壊したのでは無く、学級崩壊する過程で差別的発言が飛び出したと感じています。
これは氷山の一角です。他の大阪市立小中学校でも、そして全国各地の小中学校で同様の事例が発生しています。