世田谷区立保育園で働く保育士が、園児に対して「心理的虐待」に該当する行為を行っていました。

当初は「不適切な保育」という一歩引いた表現でしたが、有識者による検討会等を経て改められました。

 東京都世田谷区の区立保育園で、保育士が園児の嫌がる不適切な行為を繰り返していた問題で、区は、発覚した行為のすべてが「心理的虐待にあたる」と認定した。区への取材でわかった。

 区が認定した保育士の行為は、昼寝の時間に二つ折りにした敷布団を園児の上半身に落とす▽行動がゆっくりの園児に「まだ終わってなかったのか」と言いながら、頭の上に音がするくらい(の強さで)両手を振り下ろしてあてた▽食事の際、泣いた園児を隣の部屋に1人にした▽泣いていた園児を年齢より下のクラスに連れて行った▽トイレでいたずらをした園児に対し、おむつを使用していないのに「トイレが使えないやつはおむつで寝かせるぞ」と言った▽昼寝の際、視界をふさぐように園児の顔にバスタオルをかぶせた――など9点。

 区が昨年10月、情報提供を受けて調査を開始。当初は園児に外傷がないことなどから「不適切な保育」としていたが、専門家ら外部の有識者でつくる検討会での見解を踏まえ、心理的虐待に当たると判断した。区は、この保育園を含む区立保育園で人権研修を実施。年度内に改善策を取りまとめる予定。

https://digital.asahi.com/articles/ASP2H7J10P2HUTIL01Z.html

これは非常に巧妙な手口です。身体的虐待を加えると目撃証言や痕が残りますが、この様な形の虐待行為ならば証拠が残りにくいです。保育士としての職務を通じて身につけた知識を悪用したと言わざるを得ません。

情報提供を受けた世田谷区はこっそりと済ませようとしましたが、区議会議員等から反発の声が上がり、議会での報告を迫られました。

世田谷区立のある保育園で、保育士が子供に暴力を振るっているとの情報が区にもたらされたのは今年10月。区は議会で公けになることを恐れたのか、福祉保健委員会所属の委員にそれぞれ個別に報告して済まそうとしていたようだが、さすがに「それはおかしい!」との声が上がり、委員会報告を行ったのが先月11月11日。その時点で詳細はわからなかったが、12月1日に再び報告があり、事の一端が判明した。事件はメディアでも報じられた。

https://hieshimasusumu.com/blog/937/

委員会に報告された内容は議事録に掲載されています。

 3不適切な保育の内容でございます。聞き取り調査から複数の証言があり、当該保育士が認め、臨時保護者会までに確認した不適切な保育の内容についてでございますけれども、①子どもとのアイコンタクトをしたとしつつも、敷き布団を保育士の膝の高さから園児の体に落とした。②夏場のシャワー時、嫌がる園児に水をかけた。これは真水ではないというふうに聞いております。③保育士が園児の頭に手を置いたり、軽くポンと押し、何々しないと何々だよなと威圧的な言い方をした。④午睡時に、おまじないで、園児の頭、ひたいに消しゴム等を置き、寝かせたということでございます。これらの行為につきましては、保育所保育指針や世田谷区の保育の質のガイドラインに照らしても不適切な保育でございます。

 4当該保育士及び保育園の対応でございます。当該職員は、十月十六日から当該保育園での保育から外し、また、十月二十一日からは保育課で研修を行っているところでございます。また、当該保育園に対しましては、現在、保育課教育・保育施設育成支援班で保育士を派遣し、園児の様子や保育の確認等を行っており、また、十月二十九日には、園内において不適切な保育を防ぐための研修を行ったところでございます。

 5今後の対応等についてでございます。特定教育・保育施設の指導権限がある保育認定・調整課では、子ども・子育て支援法に基づく特別指導検査が完了次第、結果を施設設置者―この場合、区長になりますが―宛てに通知をする予定でございます。また、保育課では、不適切な保育に関する検証や、全区立保育園における再発防止に向けた改善策を年度内に取りまとめてまいります。

令和2年11月 福祉保健常任委員会-11月11日-01号

特別指導検査により、更なる具体的な行為が明らかになりました。

特別指導検査の結果、心身に有害な影響を与える行為といたしまして、記載のとおりですが、①午睡の際、寝入りばなの子どもに二つ折りにした敷布団を上半身に落とす行為をした。②食事の片づけのとき、行動がゆっくりの子に「まだ終わってなかったのか」と言いながら、頭の上に音がするくらい両手を振り下ろして当てた。③食事の準備のとき、座っていない子どもに「何回も言ってんだろ」と言った。あるいは着替えをしていたが、手間取っていた子に「何でこんなことも分かんねえんだ」と言ったというような乱暴な言葉を使用した。④食事の際、泣いてしまった子どもを隣室に一人にした。⑤食事の際、飲み込めなくても口から出してはいけないと強く指導をした。⑥おやつを食べなかった子どもの指導で、泣いていた子どもを年齢より下のクラスに連れていった。⑦トイレにトイレットペーパーでいたずらを二日続けた子どもに対し、おむつを使用していないのに、「トイレが使えないやつはおむつで寝かせるぞ」と言った。⑧午睡の際、おでこに消しゴムを置いて動けないようにして寝かせる行為をした。⑨午睡の際、幼児クラスで視界を塞ぐように子どもの顔にバスタオルをかぶせたという指摘を受け、子どもの人権に十分配慮するとともに、子ども一人一人の人格を尊重して保育を行うこと、一人一人の子どもが自分の気持ちを安心して表すことができ、周囲から主体として受け止められ、主体として育ち、自分を肯定する気持ちが育まれるようにすることの指導を受けました。

令和 2年 12月 福祉保健常任委員会-12月01日-01号

敷布団を落とす、両手を頭に振り下ろす、暴言、1人で放置、食事の強要、下のクラスへの連行、オムツの強要、午睡時の拘束等、様々な行為が行われていました。

身体にケガや痕が残ったりする暴行を除く、様々な虐待が行われていました。

世田谷区は「不適切な保育」や「心理的虐待」と称していますが、これは紛う事なき「虐待」です。「心理的」は蛇足です。

子供への虐待は本当に嫌になりますね。特に昨年はコロナ禍によってストレスが溜まり、その矛先が子供に向いてしまった側面もあるでしょう。

保育士も人間ですから、園児に対してイライラする気持ちもあるでしょう(親も同じですが)。

その気持ちを即座に行動へ移すのではなく、一呼吸を置き、冷静に対応したいですね。