(食中毒が発生したアスク志木駅前保育園、グーグルマップより)
埼玉県志木市の私立保育園にて、ノロウイルスを原因とする食中毒が発生しました。
食中毒は大阪市内等でも時折発生する事案ですが、報道発表等に興味深い点がありました。
1 行政処分の内容
朝霞保健所は、食中毒を発生させた(1)の設置者に対して、(2)の給食施設(原因施設)での営業停止の行政処分を本日行った。(1)設置者:株式会社ジェイキッチン
代表取締役 荻田 和宏(オギタ カズヒロ)
愛知県名古屋市東区葵3-15-31
(2)給食施設:アスク志木駅前保育園
志木市本町5-20-15
(3)違反内容:食品衛生法第6条第3号違反
上記営業施設により調理提供された給食を摂食した者のうち園児14名、職員6名に対しておう吐、下痢を主症状とするノロウイルスによる健康被害を生じさせた。
(4)処分内容:食品衛生法第62条において準用する第55条に基づく給食停止命令
処分年月日:平成27年3月8日
給食停止3日間:平成27年3月8日~3月10日
(給食提供自粛:平成27年3月6日~)
(5)病因物質:ノロウイルス2 指導内容
朝霞保健所では、給食停止期間中に食中毒の再発防止を目的として、設置者に対して、施設の消毒を指導するとともに、調理従事者に対する衛生教育等を行う。3 食中毒事件の概要
(1)探知
平成27年3月5日(木)、志木市子育て支援課から、「市内の保育園で園児及び職員複数名が5日14時頃からおう吐や下痢を発症している。」との通報が朝霞保健所にあり、食中毒・感染症の両面から調査を開始した。
(2)調査結果(3月8日9時現在)
ア 患者の発生状況等
(ア)喫食者:35名(園児28名、職員7名)
(イ)患者: 20名(園児:14名、職員:6名)(男性7名、女性13名)
(園児1歳~3歳、職員20代、40代)
うち受診者13名、入院者なし。 患者は全員、快方に向かっている。
(ウ)喫食日時:3月4日(水)昼
(エ)初発日時:3月5日(木)11時30分頃
(オ)主な症状:おう吐、下痢
(カ)喫食メニュー:3月4日の昼食(鮭の照り焼き、ひじき煮、サラダ、ごはん、味噌汁)イ 上記給食施設を食中毒の原因施設と断定した理由
(ア)患者の共通食が原因施設の食事のみであること。
(イ)患者7名(園児4名、職員3名)の便から、食中毒の原因となるノロウイルスが検出されたこと。
(ウ)調理従事者1名の便から、ノロウイルスが検出されたこと。
(エ)患者の主症状及び潜伏期間がノロウイルスによるものと一致したこと。http://www.pref.saitama.lg.jp/a0001/news/page/150308-01.html
当該給食を食べた方の内、半数以上に食中毒の症状が発生したそうです。
入院患者がおらず、全員が快方に向かっているのが不幸中の幸いです。
埼玉県からのプレスリリースにある通り、食中毒が発生したのはアスク志木駅前保育園です。
同保育園は日本各地で数多くの保育園等を運営している株式会社日本保育サービスの下にあります。
この保育園にて調理業務を行っていたのは株式会社ジェイキッチンです。
保育所向け給食の請負を主たる事業内容としています。
日本保育サービスとジェイキッチン、実は両社は株式会社JPホールディングスの100%子会社です。
3社は共に名古屋市東区の同一拠点に本社を置いており、代表番号も同一です。
同社のIR資料によると、保育所を運営しする日本保育サービスに対してジェイキッチンが役務提供(給食の調理)を行う形となっています。
ジェイキッチンが各保育園における給食調理業務を請け負っている構図です。
http://www.jp-holdings.co.jp/ir/library_data/20140630.pdf#page=8 より作成
一般的な私立保育所の多くは自園内に調理室を設置し、そこで調理担当の方が仕入・仕込み・調理等を行っているでしょう。
我が家がお世話になっている保育所では調理担当の職員が数名います。
保育所名で調理担当職員を募集する旨の求人広告が出ており、保育所と雇用契約を結んでいる様子です。
毎日100人以上の食事を作っており、さぞ大変な作業だと感じています。
朝はトラックから食材を受け取り、給食の時間に間に合わせる為に手際よく加工・調理している姿が見えます。
余談ですが味の評判は上々で、自宅の夕食より美味しいと聞きました(少し複雑・・・)。
一方、日本保育サービスが運営する保育園においては、若干形が異なっている様子です。
報道資料等から推測すると、各保育園の給食施設はジェイキッチンが保育園内に設置し、同社が調理した給食を各保育園に提供しています。
同社が運営する保育園は平成26年3月末で131園あります。
調理施設が各保育園に分散しているとはいえ、食材・調理設備・什器類の仕入は一括して行えます。
一括仕入によって費用を安く抑えられ、充実した給食の提供や利潤の拡大が可能となるでしょう。
一連の報道を見ていて、同社の代表取締役が異動している事にも気付きました。
平成27年2月17日付で荻田和宏氏が常務取締役から代表取締役へ就任していました。
前任の創業者たる山口洋氏は同日付で関係する全ての役職から退いている様子です。
異動の理由は「体調不良による入院のため」と記載されています。
この時期の異動、しかも創業者が会長・顧問等の名誉職等に残っている様子も確認できません。
唐突に何かが発生したのでしょうか。
http://www.jp-holdings.co.jp/ir/library_data/20150217.pdf