12月20日の大阪府コロナウイルス陽性者は250人でした。少しずつですが減少傾向を現し始めています。

一方で重症者や重症病床使用率・死者は高止まりしたままです。医療機関に掛かっている負荷は非常に高く、様々な面で「通常医療の質」が低下しています。

それは同時に「保健所の過負荷」という形でも現れてくるでしょう。既に大阪市保健所は業務量が限界に達しています。

大阪市保健所、業務量が限界に 他府県応援や効率化で維持

 新型コロナウイルスの感染拡大が続き、感染の封じ込めを担う大阪市保健所の業務量が限界に近付いている。感染経路や濃厚接触者を特定する「疫学調査」が追い付かず、クラスター(感染者集団)の把握に時間差が生じるケースも発生。感染拡大の波に備えて体制を強化していたが、他府県からの応援や業務の効率化で何とか体制を維持している状況だ。

 市保健所の現状について、松井一郎市長は18日、記者団に「これだけ患者が増える中で速やかに全て対応できる状況にない。組織を拡充してきたが、人材も無尽蔵にあるわけではない」と危機感を示した。

 大阪府によると、府内の1週間単位の新規感染者数は今月4日、過去最多の2631人を記録。約1カ月前との比較では3倍以上となっている。大規模な繁華街を抱える大阪市内の感染者は市外より約1・5倍多い。

 保健所は新たに判明した感染者について保健師による疫学調査を実施し、感染経路や濃厚接触者を特定。感染拡大の防止に欠かせないが、11月以降の感染者数の急増とともに、負担が重くのしかかっている。

 市保健所によると、感染者1人につき濃厚接触者は平均5人とされる。感染者への聞き取りから濃厚接触者に該当する可能性がある人を割り出し、PCR検査の受診などにつなげる。

 感染拡大に伴い、クラスターの発生現場が市内でも、市外の人が関係する事例が増加。他都市の保健所との連携が欠かせず、作業が複雑化しているという。

 保健所の業務は疫学調査だけにとどまらない。市民からの受診相談や感染者の基礎的なデータ入力、患者の自宅・宿泊施設療養の判断など多岐にわたる。

 業務量が増大するにつれ、濃厚接触者の把握が遅れるケースもみられる。市内で11月20、27両日に判明したクラスターは当初、感染経路不明とされていた。把握が遅れれば感染拡大や重症化のリスクも高まる。

 一方、市は感染拡大の波を予見し、今春から保健所の体制強化を進めてきた。5月に保健所内に約50人体制のコロナ対策専門班を新設。9月には増員して約100人体制としていた。

 だが、感染拡大は想定以上だった。市保健所の担当者は「日々、確認される陽性者への対応だけなら何とかなるが、濃厚接触者が増えすぎると手が回らない」と訴える。現場では、日付が変わるころまでの勤務が常態化しているという。

 こうした中、市保健所は今月7日以降、全国知事会を通じて岩手や京都など9府県から医師や保健師ら約20人の応援を受けている。大阪府からも約30人の外部人材が派遣され、濃厚接触者の検査調整などを担う。

 業務の効率化も進めている。疫学調査の記録表から他のデータとの重複項目を削除したほか、電話で聞き取っていた濃厚接触者の健康観察も、15日以降は本人の電話申告に切り替えた。

 関西大の高鳥毛(たかとりげ)敏雄教授(公衆衛生学)は「段階的に患者が増える感染症に対峙(たいじ)することで、保健所の人材不足が浮き彫りになった。中長期的には、保健所の増設が検討されるべきだ」と指摘する。

https://news.yahoo.co.jp/articles/46187c084d003249ee477731267a81dba9e6b950

また、和歌山県の仁坂知事も「保健所の検査が追いついていない」「現場が忙しすぎる」と指摘しています。

 一例を挙げると、和歌山の人と大阪の人が会食をしていて、和歌山の人の感染が確認されたので、当然その濃厚接触者ということで、大阪に通報をしました。我々は自分達がやっているように最寄りの保健所がすぐに飛んで行って、その人にPCR検査をして、感染しているかどうか確かめているだろうと思っていたら、その後、検査がされていないことが分かりました。

仮にその人が発症していたら、あるいは無症状の感染者であったら、更に大勢の人にうつすことになります。こういう状態が続くと、いずれ感染爆発が起こるのは理論的に自明であります。私はこういう例を発見した時には大阪に通知して、偉そうにならない程度に、改善しないと危ないですよ、爆発に繋がりかねませんとアドバイスしていたのですが、中々改善に繋がらず残念でありました。現場が忙しすぎて、分かっていても対応できなかったのかもしれません。

https://www.pref.wakayama.lg.jp/chiji/message/20201210.html

この影響が生じていると推測される資料があります。

大阪府が日々公表している「新型コロナウイルス感染症患者の発生および患者の死亡について」という資料の末尾には、府内で発生したクラスターが「医療機関」「(高齢者・障害者)施設」「他(学校・児童施設・企業事務所等)」と三分類して掲載されています。

http://www.pref.osaka.lg.jp/attach/23711/00376026/1220.pdf

大阪府内の感染状況は大まかに大阪市内:市外が1:1となっています。医療機関や施設クラスターは大阪市内・市外で満遍なく発生しています。

しかしながら、これ以外のクラスター(「他」)には著しい偏りが見られます。11月25日に「16:大阪市の児童施設関連②」クラスターが発生した以降の約1ヶ月間、大阪市内では「他」に分類されるクラスターが発生していないとされています。

この間、大阪市外で「他」に分類されるクラスターは約20箇所で発生しています。にも関わらず、大阪市内で発生していないとは考えられません。大阪市内でも12月以降に学校・児童施設・企業事務所等でクラスターが相次いで発生していると考えるのが自然です。

では、どうして大阪府が発表する資料に掲載されていないのでしょうか。ここで上記の産経新聞記事に戻ります。「大阪市保健所の業務限界」です。

新型コロナウイルス感染症対策で最も重要なのは「死者の発生を防ぐ」「医療崩壊を防ぐ」事でしょう。

死者の殆どは高齢者です。高齢者施設でクラスターが発生すると重症化から死に至る高齢者が急増します。また、医療機関内でクラスターが発生してしまうと機能が著しく低下してしまいます。

ここからは推測となりますが、大阪府内の保健所(特に大阪市保健所)は医療機関や高齢者・障害者施設でのクラスター追跡(濃厚接触者の判定)に注力し、反対に高齢者が少ない学校・児童施設・企業事務所クラスターの追跡に重きを置いていない可能性があります。

12月20日に公表された「東大阪市の企業事業所関連」クラスターからも窺えます。11月30日に初事例が公表されたにもかかわらず、クラスターと認定されたのは12月20日でした。

※「東大阪市の企業事業所関連」には、下記項目から移動 「感染経路不明」:9件(11/30に発表した1事例、12/2に発表した2事例、12/10に発表した1事例、12/12に発表した1事例、12/15に発表した1事例、12/16に発表した1事例、12/18に発表した1事例、12/19に発表した1事例)

大阪市と同様、東大阪市もコロナウイルス感染者が非常に多い地域です。保健所も極めて厳しい状況に置かれています。

業務量が限界に達してしまった為、限られた人的資源をより重要な分野(=高齢者施設や医療機関での感染拡大を防ぐ)へ振り向けたのでしょう。

大阪府内の医療機関・保健所の機能は限界に達しつつあります。年末に何らかの病気や大ケガに襲われてしまうと、通常の医療が受けられない可能性が高いです。

特にこの年始年末はリスクが伴う行動は控え、「安全第一」で過ごすべきでしょう。皆様もお気をつけ下さい。