年度末に衝撃的な話です。

神奈川県川崎市にある認可外幼稚園「A.L.C.貝塚学院」及びキッズスクール「A.L.C.アルファウイング」が、唐突に閉園しました。近く自己破産を申請する意向としています。

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(3/30追記)
支援企業が現れました。ただ、具体的内容は定かではありません。

【ニュース】「A.L.C.貝塚学院」(認可外幼稚園)が経営継続? 代表者が大相撲川崎場所勧進元も務める(株)サンが資金援助?


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同園には300人の児童が登園しており、新年度からの保育の場が消滅してしまいそうです。

川崎の無認可「幼稚園」倒産 新年度直前に保護者困惑

川崎市川崎区にある認可外の幼稚園「A.L.C.貝塚学院」が倒産と閉園を保護者に通告していたことが27日、分かった。運営会社は近く、自己破産を申請するとしている。市や保護者によると園には300人ほどが通っており、新年度直前の突然の知らせに保護者らの動揺が広がっている。

保護者や民間信用調査会社によると、同学院を運営しているのは1974年設立の有限会社「アメリカンラングエイジセンター」(同区)。関連会社とともに、体操や英会話を教えるキッズスクールも区内で運営している。

保護者によると、26日夕に同学院から閉園を告げる一斉メールがあった。倒産の理由について「無認可のため、10月から始まる幼保無償化の対象外で園児が集まらず継続が困難になった」などと説明。29日に保護者向けの説明会を開くとしている。

同学院は学校教育法上の幼稚園の認可はなく、市は「幼稚園に類似する教育施設」「幼児園」と位置付けている。認可外のため、施設への補助は行っていないが、市は申請があった場合、1人につき年額2万2千円を保護者に助成。2018年度は市内在住の3~5歳の園児約250人が補助を受けていた。

市には困惑した保護者からの問い合わせが多く寄せられており、各区役所で相談に応じるとしている。

https://www.kanaloco.jp/article/entry-157258.html

幼稚園が突然閉鎖、動揺する保護者「新しく探すのは…」

川崎市川崎区の認可外幼稚園「A.L.C.貝塚学院」を運営するアメリカンラングエイジセンター(同区)が事業継続を断念し、自己破産を申請する方向で準備していることがわかった。帝国データバンク横浜支店が27日、発表した。負債額は調査中。26日夕に一斉メールで閉園を知らされた保護者らの間では動揺が広がっている。

帝国データバンクによると、同社は1974年に設立。40年以上、幼稚園の運営を手がけてきた。独自のカリキュラムによる園児教育で知られ、幼児英語教育による知名度は高いという。少子化に伴う入園児数の減少などで債務超過状態が続いていた。

保護者あてには26日夕、「認可幼稚園無償化などの影響を受け、本年4月以降の事業継続ができない状況となりました」とする一斉メールが送られた。また27日には、保護者説明会を29日に実施する内容の封書が届き、今月内に破産手続き開始申し立てを行うことも明記した。

ある保護者によると、園では入園時、金融機関よりも高い金利をうたう「債権」と呼ぶ預かり金制度があった。3年満期で、数十万~100万円単位で預ける保護者もいたという。(以下省略)

https://www.asahi.com/articles/ASM3W4DB4M3WULOB00P.html

A.L.C.貝塚学院は川崎市川崎区田島町15-19にあります。

最寄駅はJR南武線小田栄駅(徒歩5分程度)です。また、自転車を10分ほど漕ぐとJR川崎駅にも辿り着けます。川崎市の中心部にほどよく近い場所と言えそうです。

「認可外幼稚園」とは聞き慣れない言葉です。調べたところ、定義規定らしき文章を衆議院議員が議院へ提出した質問主意書にて見つけました。

いわゆる「幼稚園類似施設」に対する幼児教育無償化措置に関する質問主意書

周知のように、保育の必要性が「ある」と認定された二号認定、及び三号認定の場合は、認可保育園、認定こども園という認可園の他に、認可外保育施設(例えば、自治体基準の施設、ベビーホテル並びにベビーシッター等)に通う子どもが「幼児教育無償化」の対象とされている。
ところが、安倍内閣が進めている「幼児教育無償化」は、無償化の「対象外」となる子どもが生じる。
つまり、保育の必要性が「なし」と認定された一号認定(専業主婦等)の場合は、国が認可幼稚園、認定こども園のみを「幼児教育無償化」の対象としているため、自治体基準の幼稚園類似施設や自然保育など国の認可基準を満たさない幼児教育施設、いわゆる「幼稚園類似施設」に通う子どもは「幼児教育無償化」の対象外となる(以下、国の認可基準を満たさない幼児教育施設を「幼稚園類似施設」と記述する)。
仮に、国がこのようなやり方で「幼児教育無償化」を施行するならば、幼稚園類似施設は入園希望者が激減し、園の存続が危うくなる等の怒りと悲鳴があがっている。(以下省略)

いわゆる「幼稚園類似施設」に対する幼児教育無償化措置に関する質問主意書

実は今回の事態を、この質問主意書が予想していました。

記事にある通り、同園は学校教育法上の幼稚園ではありません。

ただ、川崎市が「幼児園」(幼稚園に類似する教育施設)と位置づけ、登園する児童1人につき年間約2万2000円の助成を行っていました。

幼児園児保育料等補助金

制度内容
幼児園(幼稚園類似の無認可幼児教育施設で別途市の基準に該当する施設)に通園する園児の保護者に、保育料等を補助いたします。
対象となる園については、お問い合わせください。なお、私立幼稚園及び保育所については対象外となります。

補助対象
申請年度の10月1日現在、(1)市内在住であり、(2)市内又は市外の幼児園に通園している3歳、4歳、5歳児の保護者。

補助額
幼児1人につき年額22,000円(所得制限はありません。)

http://www.city.kawasaki.jp/450/page/0000030606.html

また、政令市たる川崎市は、市内の認可外保育施設への指導監督権限を有しています。その為、川崎市への相談が相次いでいるのでしょう。

同園は3月25日に卒園式を行いました。その翌夕に保護者へメールにて閉園通知を送りました。

また、同社は体操・水泳・バレエ教室を行っているキッズスクール「A.L.C.アルファウイング」も運営しています。

ブログは3月22日まで更新されています。年度末に閉園する兆しは全く感じられません。

少子化等で在園児が減少、、資金繰りに行き詰まりか

帝国データバンクが倒産速報記事を掲載しています。

有限会社アメリカンラングエイジセンター

認可外幼稚園「A.L.C.貝塚学院」運営
自己破産申請へ
TDB企業コード:200747252

アメリカンラングエイジセンター運営の「A.L.C.貝塚学院」

(有)アメリカンラングエイジセンター(資本金1600万円、川崎市川崎区渡田山王町20-35、代表鈴木美代子氏)は、3月27日までに事業継続を断念し、近く自己破産申請の意向であることが判明した。

当社は、1974年(昭和49年)10月に設立され、40年以上にわたって幼稚園の運営を手がけてきた。認可外幼稚園「A.L.C.貝塚学院」を運営するほか、幼児向けに体操、水泳、バレエ、英会話などを教えるキッズスクール「A.L.C.アルファウイング」を関係会社とともに展開、ピーク時には4カ所で教室を開いていた。認可外幼稚園「A.L.C.貝塚学院」は、独自のカリキュラムによる園児教育で知られ、「どの子でも育て方一つでなんでもできる!才能教育」をモットーに、「健康でバランスのとれた国際人の育成」を目指していた。幼児期に英検5級や4級の取得を目指すなど、当地での長年の運営により、幼児英語教育における知名度は高く、2005年9月期の年収入高は約3億2000万円を計上していた。

しかし、近年は少子化にともなう入園児数の減少により厳しい環境が続いていた。この間、過年度の不動産売却損などから、従前より脆弱な財務内容を余儀なくされ、債務超過状態が続いていた。2018年9月期の年収入高は約2億8000万円にとどまったうえ、借り入れ負担も重荷となるなか、ここにきて事業継続を断念。3月27日までに、保護者に対して閉園を連絡していた。

負債は現在調査中。

http://www.tdb.co.jp/tosan/syosai/4563.html

同園は長年に渡って地域に根ざした幼児教育を行ってきました。

しかしながら少子化・新しい保育施設の充実によって入園児数が減少し、そして今年10月から実施される予定の幼児教育無償化が決め手になったのでしょう。

既に解散登記を申請?、不動産は担保割れ

登記情報提供サービスから同園を運営する(有)アメリカンラングエイジセンターの登記情報を取得しようとしたところ、「登記事件の処理中」とのエラーメッセージが表示されました。

何らかの登記申請が行われている最中に表示されるメッセージです。既に解散登記等が申請されているのかもしれません。

同園が設置されている土地(2筆、合計約770平方メール)及び建物には、金融機関によって4億円(昭和60年)及び5000万円(平成2年)の根抵当権が設定されています。

ただ、路線価を基準にした土地の評価額は約1億7000万円に過ぎません(H30路線価図の田島ふれあい公園)。

地価が高騰していた時期に設定された根抵当権は、現在の土地の時価を遙かに上回る担保価値に基づいています。

所有不動産の担保余力に乏しく、資金繰りに行き詰まったと推測されます。

高額な受験料・入園料、実態不明の預け金

同園への受験料・入園料等は高額でした。在園児の保護者や卒業生がmixiに投稿しています。

お金に関しましては現在はわかりませんが、以前は…
・入学時に30万ほど(制服、教材込み)
・入学金とは別に預けるお金があり1口5万で2口以上だったような…(3年後?に戻ってきます)
・夏休みに入る前に後期分4万程。
冬休みに入る前に進級分7万程払います。
(名目は拡充費…etc書いてありますが、実際は拡充なんてされてませんがね…)
なんだかんだ、不明なお金はかかると思います。
(預けるお金でクラス分けや待遇が違います。)

受験料10万円くらい、願書出願時に支払い。
入園が決まれば債権(1口5万円2口以上)を購入しますが、3年満期で利息とともに返ってきます。
入園までに、制服、かばん(2種類)、スモック、教材費、設備費、プール利用料、バスを使うならバス代などの支払いで20万ぐらいかかった気がしますあせあせ(年払い、月払いが選べるものもあります)
9月前には後期の費用が5~10万くらいだった気がしますあせあせ(飛び散る汗)

お勉強系幼稚園ですので、小学校受験する方も多くいらっしゃいます。
確かにお金がかかる気はしますが、それなりの教育はしていただけるので、私は通わせてよかったと思っています。

https://mixi.jp/view_bbs.pl?comm_id=219315&id=39873372

一般的な私立幼稚園でも同程度の受験料・入園料等を必要とする施設もあるでしょう。

しかし、学校教育法上の幼稚園であれば「就園奨励費」が支給され、保護者の実質的な負担額は大きく軽減されます。

いわゆる普通の幼稚園・保育所ではなく、「お受験や豊富な習い事を目的とした、幼児教育施設」と言えるでしょう。

園の特色にも記載されています。

基礎知能 数遊び、+、-、暗算、幼児用漢字、話し方、読み方、50音の読み書き
記  憶 俳句、紙芝居、劇
体  育 跳び箱、マット、鉄棒、体操、平均台など
書 き 方 鉛筆の訓練、線書き、書道
社  会 地図、集団生活、自立
理  科 自然観察
英  語 英会話・英検(年長で4級・5級多数合格)年長週4回、年中週3回、年少週2回
絵  画 大きく、色彩豊かに
音  楽 リズム、歌、木琴、ピアニカ、ハーモニカ
水  泳 室内プール

計画倒産? 分配率は厳しそう

大きな問題が指摘されているのは閉園した時期です。

今は多くの入園者等が入園金・授業料等を振り込み終えた時期です。資金的なゆとりが1年間で最もある時期でしょう。

また、実態が不明確な「預け金」も問題視されています。

卒園時に利息が付されて返還される制度だそうですが、実際には火の車だった資金繰りに使われていたのでしょう。

では、支払った入学金・授業料・預け金等は変換されるのでしょうか。

この時期に破産手続開始申立て等を行うのであれば、手元にあるのは必要最低限の資金しかないでしょう。また、不動産は担保割れしています。

こうした状況を鑑みると、債権者への分配率は非常に低くなってしまうと予想されます。非常に厳しい状況です。

4月からの教育・保育の場を早急に探しましょう

すぐに直面する問題は、在園児の教育・保育の場でしょう。

300人もの園児を受け入れられる幼稚園や保育所が周囲にどれだけあるのでしょうか。2園に相当する園児数です。川崎区役所が主導となって各園に連絡し、空き定員等を確認しているのでしょう。

今は4月からの教育・保育の場を探すのが最重要です。

他園への入園を希望している方は、今すぐにでも見学・入園手続を済ませるべきでしょう。早い者勝ちかもしれません。

追記:今春の入園予定者が予定の半数に留まっていた

昨夜、同園の経営幹部が川崎市を訪れ、「今春の入園予定者が予定の半数しかおらず、経営が成り立たなくなった」と説明していたそうです。

突然閉鎖の幼稚園「入園が予定の半分 経営成り立たず」

2019年3月28日 15時08分

川崎市の認可外の幼稚園が施設を突然閉鎖し、子どもや保護者に混乱が広がっている問題で、園の幹部が27日夜、川崎市役所を訪れ「この春、入園する子どもが予定の半分ほどになり、経営が成り立たなくなった」などと説明していたことがわかりました。

川崎市川崎区の認可外の幼稚園「A.L.C.貝塚学院」が施設を突然閉鎖した問題では、子どもが通園中や入園を控えている保護者から「園と連絡が取れない」などと川崎市に相談が相次ぎ、混乱が広がっています。

市によりますと、この幼稚園の幹部の女性が27日夜、市の幼児教育担当の部署を訪れ、今回の問題について説明したということです。

幹部は「この4月に入園する子どもが予定の半分ほどしか集まらず、経営が成り立たなくなった」と話し、運営会社が破産の申し立てを行う予定だと伝えたということです。

また在園する子どもはおよそ330人いると説明したということで、川崎市が児童の転園先が見つかるまで継続できるか確認したところ、難しいと答えたと言うことです。

幼稚園は29日、保護者を対象にした説明会を開くとしていて、市は保護者に詳しく説明するよう求めるとともに今後の対応を検討することにしています。

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20190328/k10011864261000.html

ギリギリの資金繰りで自転車操業を続けていたところ、見込んでいた入園料等を確保できなかったのでしょう。

入園予定者が予定を大幅に下回る事は、遅くとも年明けには分かっていた筈です。

その時点で3月末での閉園を公表していたら、こうした大きな混乱を招きませんでした。

経営幹部の説明を鵜呑みにするのは難しいです。