大阪市立小学校(約300校)において、教諭に代わって授業等を行う「講師」が64人も不足しているそうです。

大阪市小学校の教員、『64人足りない』 病欠など教諭の不足を補う”講師”も不足

大阪市立小・中学校の教員の数が合わせて70人も足りていない状況で授業が進められていることが分かりました。

【公明党土岐恭生大阪市議】
「かなりの数の学校で必要な数の講師が配置されていないのではないか」

【大阪市教育委員会】
「未配置数は小学校が『64名』、中学校が『6名』です」

12月1日現在、小中学校合わせて『70人』も教員が不足していることが明らかになった大阪市。教育委員会が挙げた理由は、講師の不足でした。

【大阪市教育委員会】
「若年の教諭が非常に増えています。それに伴い、産育休の取得者が増加していることが一因だと思う」

大阪市の小学校では、教諭の不在を講師で補っていますが、不足人数は年々増えていて今年度は既に昨年度末よりも不足してしまっています。

さらに今年は4月から復帰を見込んでいたものの病欠を続けることになった教諭が続出し、21人も教員が不足した状態でスタートすることに。市の教育委員会によると講師が不足する理由は、教諭の不在が解消されると契約が打ち切られるなど、生活が安定しないことも考えられます。

教員数の不足は、教諭や講師への負担につながり、さらなる悪循環に陥る恐れもあり、教育環境の改善が急がれます。

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20181206-19015402-kantelev-l27

質疑が行われたのは、大阪市会教育こども委員会(平成30年12月6日開催)でした。作業をしながらインターネット中継を聞いており、この様なやりとりがありました(うろ覚えの部分もあります)。

・教諭や講師が不足している学校では、教頭や教務主任等が補って授業等を行っている。
・今年度は教諭の採用予定数を大幅に増やした。
・講師の待遇に問題があると認識している。

約3,000人が講師として採用、賞与無し・不安定

講師の待遇は大阪市ウェブサイトに掲載されています。

基本給与(平成30年4月現在)

大学新卒(4年制)  月額約238,500円(高等学校勤務の場合)
大学新卒(4年制)  月額約238,200円(小中学校勤務の場合)
大学新卒(4年制)  月額約232,000円(幼稚園勤務の場合)
短大新卒(2年制)  月額約216,100円(高等学校勤務の場合)
短大新卒(2年制)  月額約216,100円(小中学校勤務の場合)
短大新卒(2年制)  月額約210,600円(幼稚園勤務の場合)

※上記の給与額は、教職調整額・地域手当・義務教育等教員特別手当が含まれています。
※給与の他に、一定の基準により通勤手当・扶養手当・住居手当が支給されます。(月の初日に要件を満たしている場合に限りその月の手当が支給されます。ただし、期限満了が月の初日の場合は、その月にかかる手当は支給されません。)

http://www.city.osaka.lg.jp/kyoiku/page/0000379725.html#1

月額給与だけを見ると決して悪くありません。しかしながら期末手当(ボーナス)は支給されず、しかも正規職員(教諭)が病気等から復職すると契約が打ち切られる事があるそうです。

お世話になっている小学校でもある教諭が病気から復職した途端に、ある講師の姿が見えなくなりました。話しやすい先生に訊いた所、返答を避けるかの様に言葉を濁していました。

この様な講師として採用されているのは例外的な措置であり、若干名に留まっているのでしょうか。実は大阪市立学校では平成29年度に約3,000人が講師として採用されていました。

講師採用数(平成29年度)
幼稚園159人
小学校1,405人
中学校785人
高等学校523人

驚くべき数字です。特に小学校は1,405人も採用されていました。3-4年分の教員採用数に相当します。各小学校に4-5人の講師が配置されている計算になります。

これでは「正規職員たる教員の代わりに、講師を便利使いしている」と批判されても仕方ありません。徐々に教員採用数を増やすべきです(平成31年度採用数は大幅に増加しています)。

実は大阪市会で取り上げられる半年以上前に、「大阪市民の声」へ切実な投書が寄せられていました。

 私は、大阪市立小学校に通学する子どもの保護者です。
 子どもの学校だけでなく、多くの大阪市立小学校で起きている事態について学校ではなく、大阪市に大きな憤りを感じています。この事態を広く世間に知らせて、すぐに是正されるよう、投稿しました。

 事態というのは、子どもの担任の先生が妊娠されたというお知らせが、学校から数か月前にありました。母性保護のため、体育の授業等は他の先生が当たるというのも保護者としては十分に理解でき、上の子どものときもそうでした。ところが「他の先生」というのは、校内の教頭先生や教務主任の先生であり、上の子どものときのように講師が来たのではないのです。ただでさえ忙しい先生方が、本来のお仕事をやりくりして、授業に入っておられるのです。

さらに酷いのは、いよいよ担任の先生が産休に入っても新しい講師の先生は来ず、何と校内の「なかよし学級」の先生が担任になったのです。もちろん、なかよし学級に先生の欠員が出て、その子どもたちが不利益を被っていることは言うまでもありません。聞くところによると、大阪市では、講師の先生が大量に不足していて、現在は50人以上「待ち」状態ということで、そういえば他の大阪市立小学校に子どもを通わせている方も同様のことを言っておられました。まずこの数字を情報公開してください。地下鉄の駅で「大阪市の講師募集」の広告を見て、学校の先生をこのように募集している事態に愕然としたこともあります。

 子どもの教育や安全に関わる上で最低限必要な教員の数が「足りない」という理由で、配置できていないことについて、保護者以外の多くの大阪市民は知りません。大阪市はこの法令順守違反の事態をどう説明し、早急に解決を図るつもりでしょうか。新聞・テレビで見るように、現状でも多忙な先生方に「仕方がない」という理由で、いつまで無理を強いるのでしょうか。個人の先生の「不祥事」はすぐに面白おかしくニュースになるのに、大阪市のこの不祥事は、報道も、責任者の処分も、改善もされていません。

大阪市の講師に応募が少ないのも、これまで先生方のがんばりを認めず、さんざん先生方のマイナス面ばかり強調してきたからではないのですか。私たち保護者はそれを知っています。大阪市教育委員会事務局はもとより、教育長・教育委員・市長にもこの責任があるのは明らかです。

 大阪市は「前例にないからできない」という言い訳はしないでください。また「身を切る改革」を進めているということですが、結局切られているのは、子どもや保護者、先生方です。現在、同じ被害を受けている保護者どうしで連絡を取って、弁護士さんと相談しているところです。この問題を置き去りにしたままでは、「都構想」は勿論「万博誘致」にも賛成できません。子どもたちが、今すぐ、一日も早く安全で安心して過ごせるよう願っています。大阪市の早急な情報公開と取り組みを、市民は厳しく見守っています。

http://www.city.osaka.lg.jp/seisakukikakushitsu/page/0000426354.html

正論そのものです。全面的に賛同します。

20-30代教員ばかり、40代がいない

講師不足と同時に教員不足も生じています。キーワードは「若年の教諭が非常に増えている」という答弁です。

文部科学省の公立学校教員採用選考ウェブサイトから、平成13年度以降の大阪市教員採用試験(小学校)の受験者数・採用数(H30・H31は合格者数)を集計しました。

採用年度受験者数採用数倍率H30.4.1時点の最小年齢
H131751313.540
H14346854.139
H156751684.038
H166942552.737
H178884322.136
H189395411.735
H1910533343.234
H209723302.933
H218163502.332
H229933233.131
H239712653.730
H249912593.829
H259472094.528
H2610362883.627
H2711035352.126
H2811063523.125
H299992074.824
H308723412.623
H318984901.822

平成13年度(2001年度)は就職氷河期の真っ只中であり、教員採用数も著しく落ち込んでいます。平成14年度から少しずつ採用数が回復し、平成17年度(2005年度)には432人まで増加しました。

以後、増減はあるものの、概ね200人~550人のレンジで推移しています。

注目すべきは年齢です。表では平成30年4月1日時点での最少年齢(大学に現役合格→採用試験に4回生で合格→翌年に入庁)を掲載しています。

これによると、37歳~30歳の教員が非常に多い事が読み取れます。多くの女性が出産し、産休・育休を取得する年代です。数年前から容易に予想できる事態でした。

重要な問題なのは、20-30代の教員を指導し、学校現場の中心となる40代教員の少なさです。平成12年以前の採用数は全国的に少なく、大阪市も例外ではないでしょう。

現在の40代はいわゆる団塊ジュニア世代が中心です。人口ボリュームがあり、学生時代の授業日数が多く(週休2日制は未導入)、そして厳しい受験戦争に晒されていました。

十分な人数を採用できていれば、今頃は学校管理職として活躍していた筈です。しかし、大阪市や殆どの自治体は採用数を絞っていました。

歪な年齢構成にあっては、経験が浅い教員や育児休業取得者を代替する講師を十分に支援できません。講師不足に加え、この40代教員不足が学校に大きく影響していると考えられます。

お世話になっている小学校でも、40代の教員が非常に少ないと感じています。思い浮かぶのは30歳前後と50歳前後の先生ばかりです。小学生の保護者と同年代の先生が非常に少ないのです。

教員不足を補う為に、大阪市は平成31年度の採用予定数を大幅に増やしています。490人を合格としました。

一方、気掛かりなのは「教員の質の低下」です。どの様な試験形態であれ、一般的に競争倍率が低下すると合格者の質も低下します。特に競争倍率が2倍を切ると、実効性のある選考が行えないと聞きます。

必要なのは多くの優秀な教員志望者が受験し、採用者へ十分な研修や指導を行い、長く勤続し、優秀な人間をより権限と責任あるポストに充てる体制でしょう。

大阪市の学校はどうなるのでしょうか。