障害のある保護者が保育所への送迎や行事に参加する際、どれだけ保育所が支援・配慮すべきでしょうか。
電動車いすの母親、保育園遠足参加できず 人権救済申し立て
京都市右京区の保育園に長男を通わせている両親が5日、電動車いすを利用する母親が送迎する際の手伝いを園から拒否されたり、園の行事への参加を認められなかったとして、京都弁護士会に人権救済の申し立てを行った。園と市に対して、障害のある保護者への支援や配慮を求めている。
申し立てたのは右京区の40代の両親。母親は四肢障害がある。長男(6)が、1歳児だった2014年から、同区の民間の市認可保育園に通っている。
申立書によると、園側は当初、母親が送迎する際には職員が手助けするとしていたが、入園後は支援を拒否されたという。そのため、送迎は母親が利用する介護ヘルパーに依頼せざるを得なかったとしている。親子遠足や運動会では「特別扱いできない」として、母親の参加や見学ができなかったという。
両親は今春、園の第三者委員会に苦情を申し立て、親子遠足や運動会に参加できるようになった。だが保育士からは、他の保護者から不満が出ているなどと非難されたという。
記者会見した父親は「園の対応は少し改善したが、妻は送迎に関われないため、子どもの成長について園側と話す機会がなく悲しい思いをしている」と話した。代理人の藤井豊弁護士は「障害のある親が子を預ける部分を誰が支えるのか。保育と福祉をつなぐ仕組みが必要」と訴えた。
園は「母親の障害には、これまで適切に対応してきたが、行政から十分な支援を得られなかった部分もあった」とし、市は「障害のある親への支援について行政が一定の基準を設けるのは難しい」としている。
長男(6)が通う保育園への送迎への協力や行事の参加を拒否されたとして、京都市右京区の電動車いすを使用している母親が父親とともに5日、園や市に対応の改善を求めて京都弁護士会に人権救済を申し立てた。
申立書などによると、40代の母親は手足に障害があり、移動の際は電動車いすを使用している。2014年に長男が保育園に入園。母親が自家用車で長男を送迎した時の保育士の介助や、親子遠足への参加を求めたが、説明のないまま拒否されたとしている。
両親が3月、園の設置する第三者委員会に申し出た結果、対応は一部改善。だが、母親は主任保育士に「他の保護者から不満が出ている」と言われ、精神科に通院するようになったという。
京都市内で記者会見した40代の父親は「真摯な対応を取ってくれず悲しい」と話した。
園の担当者は「多くの園児を抱える中、1人の保護者に保育士がつくのは難しい。4年間、ほとんど要望について話されてこなかった。もっと早く言ってくれれば」と話した。
殆ど全ての保育所は障害を理由に保育を拒絶する事(施設構造・保育士不足等を理由とした例外的な拒絶は除く)なく、その子に適した保育を行っているでしょう。
しかし、本事例は違います。障害があるのは児童ではなく母親です。
保育所は保育に欠ける児童の為の施設です。障害がある児童の保育は考慮していますが、障害がある保護者への対応は想定外でしょう。
保育所は入園前には母親を手助けする等の約束をしていたそうですが、入園後は拒否したそうです。
当初の話と違うという点は保育所に何らかの瑕疵があるでしょう。
しかし、手助けしようとしたが無理だったのが実情ではないでしょうか。電動車いすや成人女性は非常に重く、数人がかりでないと持ち運べません。介助者がケガをする恐れもあります。
保育所の担当者は「多くの園児を抱える中、1人の保護者に保育士がつくのは難しい。」と話しています。「不可能である」が実情でしょう。
送迎について手助けが必要ならば、保育所に頼るべきではありません。配偶者や家族、介護ヘルパー等に依頼すべきでしょう。保護者の介助まで保育所に頼るのは筋違いです。
また、記者会見した父親は「妻は送迎に関われないため、子どもの成長について園側と話す機会がなく悲しい思いをしている」と話しています。
仮に送迎に関われなくても、子供の成長について園側と話す機会はあります。父親や介助ヘルパーと一緒に送迎する、送迎とは別の機会に話す時間を確保してもらう等、様々な方法があるでしょう。
当初は拒否された親子遠足や運動会へは、今年から参加できる様になったそうです。その一方、他の保護者から不満が生じているそうです。
保育所での行事の主役は園児です。行事進行や保育士の仕事等に何らかの影響が生じてしまったのであれば、不満が噴出するのは仕方ありません。
一般的に保育所の運動会が実施されるのは秋です。遠足や運動会の後に他の保護者から保育所へ苦情があり、それを主任保育士が当該保護者へ伝え、人権救済手続に至ったのでしょう。
ただ、登園している長男は6歳です。来年3月には卒園する予定です。今から申立てを行っても、改善される頃には送迎する機会がなくなってしまうでしょう。
報道を読む限り、保護者の要望に対して保育所は可能な範囲で応じ続け、真摯な対応を行ったと感じました。
更なる支援には、行政による支援・対応が不可欠です。保育所の自助努力・親切心の範囲を大きく超えます。
代理人弁護士は「障害のある親が子を預ける部分を誰が支えるのか。保育と福祉をつなぐ仕組みが必要」と主張しています。支えるのは行政であり、少なくとも保育所ではありません。
こうした事態を防ぐ為に、今後、保護者に障害がある園児の入所を拒絶しないかが懸念されます。
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(12/8)
代理人である藤井豊弁護士からツイッターにて指摘を頂きました。ありがとうございます。
記事を誤解される方も多いようなので補足しますが、障害者差別解消法の合理的配慮を求めていたのであり、母親の介助を求めているわけではありません。車椅子での見学スペースの確保、親子遠足の現地集合、園の駐車場までは送り迎えするから子どもを迎えに来てほしいなどです。
— 藤井 豊 (弁護士)不適切保育の相談を聞きます(無料)。 (@fujiyuta0729) December 7, 2018
実際は行事の際に車椅子のスペース設けてほしいとか、親子遠足は現地集合をさせてほしいとか、園の駐車場までは送り迎えするから子どもを迎えに来てほしいなど、そんなレベルの話です。入園から4年間実現してこなかったということなんだけど。
— 藤井 豊 (弁護士)不適切保育の相談を聞きます(無料)。 (@fujiyuta0729) December 5, 2018
母親の介助を求めているのではなく、必要最低限の配慮を求めているに過ぎないそうです。
保育士の配置人数によっては園の駐車場までのお迎えは難しいかもしれませんが、行事参加時の車いすスペースや親子遠足での現地集合は配慮されて然るべきでしょう。
我が家がお世話になっている保育所でも、行事の際は配慮を要する保護者等のスペースが確保されています。