2017年の国民生活基礎調査が公表されました。

18歳未満の子供がいる世帯(=子育て世帯)において、働いている母親が全体の7割を超えました。また、子育て世帯の年間平均所得は739.8万円でした。

働くママ、初の7割超え 17年の国民生活基礎調査

働く母親の割合が初めて7割を超えたことが、厚生労働省が20日に公表した2017年の国民生活基礎調査で分かった。

調査は昨年6~7月に実施。約6万1千世帯に世帯や就業状況を、うち約9千世帯には16年の所得状況も尋ねた。18歳未満の子がいる世帯の母親は「仕事あり」が70・8%(前年比3・6ポイント増)で、「正規」24・7%、「非正規」37・0%、「その他」(自営業など)9・1%だった。統計がある04年以来初めて7割を超えた。

一番下の子の年齢別にみると、正規で働く母親は子の年齢にかかわらず20%台。一方、非正規は0歳児の母親が10%、1、2歳では20%台前半だが、12~14歳では47%まで上がるなど子の年齢が上がるにつれ上昇する傾向がみられた。

16年の世帯あたりの平均所得は前年比2・7%増の560万2千円。子育て世帯では4・6%増の739万8千円、65歳以上の高齢者世帯では3・4%増の318万6千円だった。厚労省の担当者は「働く母親の増加や給与水準の上昇が影響している」とみる。生活が「苦しい」と答えた人は55・8%で前年より0・7ポイント減った。

あわせて、昨年公表した16年調査の所得などの数値を訂正した。15年の全世帯の年間平均所得は545万8千円としていたが、正しくは545万4千円。相対的貧困率は15・6%としていたが、正しくは15・7%だった。

https://www.asahi.com/articles/ASL7N51NPL7NUTFK01X.html

この記事を読んだ多くの方が「子育て世帯の平均所得が739万円?うちはそんなにない!」と感じられたでしょう。

それもその筈、ここでいう子育て世帯とは「18歳未満の子供がいる世帯」を指しています。「末子が高校生2年生」でも子育て世帯と定義されています。

具体的な数字を見てみましょう。

表7 各種世帯の1世帯当たり平均所得金額の年次推移(万円)
世帯の種類
対前年増加率
H21年22232425262728
(2009)(2010)(2011)(2012)(2013)(2014)(2015)(2016)
全世帯549.6538.0548.2537.2528.9541.9545.4560.2
高齢者世帯307.9307.2303.6309.1300.5297.3308.1318.6
児童のいる世帯697.3658.1697.0673.2696.3712.9707.6739.8

https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-tyosa/k-tyosa17/index.html

いずれの世帯も、ピーク時だった平成6-10年の所得水準に達していません。「失われた20年」を感じさせられます。

この間、少なくとも教育費や社会保険料の負担額は鰻登りに上昇しました。子育て世帯の62%が「生活が苦しい」と堪えています。

子育て世帯の平均所得、中央値は約650万円

こうした統計で気をつけなければならないのは「平均値」です。子育て世帯の平均所得は739.8万円ですが、果たして分布や中央値はどうなっているのでしょうか。

政府統計にピッタリの資料が掲載されています。平成29年国民生活基礎調査 / 所得 報告書掲載 / 児童のいる世帯数の相対度数分布-累積度数分布,年次・所得金額階級別です。

ここから各所得帯毎の世帯数をグラフに表しました。

世帯の累積数は「世帯所得600-650万円」のラインで50.1%に達しました。子育て世帯の平均所得の中央値は「650万円」と言えるでしょう。平均値739万円と比べ、約90万円の違いが生じています。

この一因は、世帯所得400-650万円の層にあります。ボリュームが非常に厚く、子育て世帯の約3割がここに属しています。

父親の所得の劇的低下・働く母親が補う・教育費&社会保険料&家事外注費が重い負担

子育て世帯の平均所得がピークだった平成8年、781.6万円でした。当時はバブル経済が崩壊した後、金融恐慌を目の前にした束の間のひとときでした。

今と比べて男性社員の平均賃金は非常に高く、大半の女性社員は補助的労働力として扱われていました。

それから20年、子育て世帯の平均所得は約40万円も下がっています。父親の平均所得が劇的に下がり、この一部を母親が働く形で補い、約40万円の低下で収まっているのが実情でしょう。

先にも触れたとおり、この20年間で子育て世帯の負担は劇的に上昇しています。共働き世帯であれば、家事の一部をアウトソーシングする費用(外食も含みます)も無視できません。

子育てにお金が掛かり、現役世代の負担は上昇する一方です。少子化が進行するのも当然です。