作業の遅れに対し、大阪市の吉村市長は不満げな表情を浮かべていました。
待機児童ゼロへ…大阪市の保育所整備遅れる
来年4月に待機児童ゼロ達成を目指す大阪市は、7日、市有地9か所を保育所用地として活用する方針を明らかにした。しかし、その開設時期が間に合わないことがわかり、吉村市長が怒りをあらわにした。大阪市は、きょう、待機児童解消に向けた会議を開き、現在利用していない市有地など9か所について、保育所用地として事業者を公募し、およそ600人分の受け皿を確保する方針を示した。吉村市長は、来年4月の待機児童ゼロ達成を目指しているが、市役所内への保育所設置などと同時並行で作業が進まず、その開設時期が来年4月に間に合わないことが会議で明らかになった。吉村市長は「(平成)30年4月に間に合うようにスケジュール組んで下さいと副市長にも指示したと思うんですけど、これ出来てないんじゃないですか」と述べた。来年4月の待機児童ゼロ達成に向けては他の対策も進めているが、この開設の遅れが目標達成に影響しないか懸念される。(08/07 18:58)
来年4月の待機児童ゼロを目指していた大阪市ですが、新たに確保するとしていた入所枠のうち4割程度が確保できないことが明らかになりました。
大阪市では、今年4月時点で待機児童や希望通りの認可施設に入れなかった利用保留児童数が約3000人いましたが、吉村洋文市長は116億円の予算をつけて区役所や市営住宅など市の建物に保育施設を設け、新たに6000人分の枠を確保する予定でした。
しかし7日の会議では施設の一部で開設が進んでいないと報告があり、来年4月には目標の6割程度の3500人しか確保できないことが判明しました。吉村市長は「引き続き小規模保育を増やしたい」としています。
http://www.mbs.jp/news/kansai/20170807/00000052.shtml(リンク先に動画あり)
当日は「第5回大阪市待機児童解消特別チーム会議」が行われていました。市長等のやりとりは同会議での出来事です。
低調な第4次募集に不満気?
実は同会議で報告しにくい発表が行われたと考えられます。同日に大阪市ウェブサイトに「保育施設等設置・運営事業者募集の選定結果(第4次募集)」が掲載されました。
何と第4次募集で選ばれた事業者は「ただ一つ(小規模A型)」のみでした。複数の応募事業者があったのですが、最終的に選定されていません。
吉村市長が掲げる「待機児童ゼロ」に冷や水を浴びせる内容でした。「副市長にも指示したと思うんですけど、これ出来てないんじゃないですか」という市長の発言に繋がったのでしょう。
最終的には4,200人以上の定員枠を確保へ
MBSニュースによると、来年4月には3500人程度の新規定員しか確保できていないそうです。当ウェブサイトで独自に調査した内容では、今年5月~来年4月までに開所する保育所等の定員合計は3,881人となっています。
これに加えて、多くの区役所庁舎内にて小規模保育施設が設置され(詳細はこちら)、更に300人程度の定員枠が追加される見通しです。また、市営住宅・市有地等の活用も打ち出しています。
これにより、最終的には4,200人以上の新たな定員枠が確保されそうです。吉村市長が掲げる「6,000人」に対し、少なくとも7割の水準となる公算です。
割安な用地が利用できれば、更に小規模保育は開所できる?
第4次募集の結果に象徴される様に、一定の水準を満たした保育事業者の応募は限界に近づいているでしょう。保育士の採用に加え、用地等の確保が困難となっていると推測されます。
ただ、「保育ニーズが強い地域で敷地が割安に利用できる」という条件を満たすのであれば、追加的に開所したい事業者は少なくありません。区役所等での設置に対する公募では、登録数が募集予定数を大きく上回っています。市営住宅や公有地を活用する方針は正当です。
また、事業者に対応する保育企画課等のマンパワーが限界に近づいているのではないでしょうか。高等森友学園保育園の補助金不正受給・保育士派遣・虐待疑惑等、イレギュラーな対応もありました。相当の時間外勤務が行われているのではないでしょうか。
保護者ニーズは保育所へ集中
気になるのは、吉村市長が「小規模保育を増やしたい」と述べている点です。しかし、大半の保護者は「保育所」への入所を希望しています。
毎年の一斉入所では、大半の保護者が保育所を第1希望としています。6年間の一貫した保育(3歳の壁がない)・きょうだいを1箇所で保育できる(小規模保育だと2箇所保育が前提)・広い園庭を有する施設が多い(小規模保育はほぼ園庭がない)・長い歴史と信頼がある等、様々な理由があります。
市内中心部で保育所を設置できる広い敷地を確保するのは、決して容易ではありません。しかし、こうした保護者のニーズを受け止め、小規模保育ではなく保育所の設置に重点を置いて欲しいと願います。
大阪市はがんばってます
吉村市長は目標に向けて更に保育施設を設置したい考えを示しています。
過去10年間の大阪市の待機児童数と保育所利用枠拡大数の推移のグラフ。平成22年に一挙に手綱を緩めてる。橋下市政で増加させてる。それでも約2000の枠だが、今年度3倍の6000を目標。8月時点で3600確保済。高くてしんどいが諦めない。 pic.twitter.com/dCGFshZIlc
— 吉村洋文(大阪府知事) (@hiroyoshimura) August 8, 2017
しかし、大阪市の計画に対する反応、これまで行われた公募に対する事業者の応募に示されています。目標がやや過大だったのではないでしょうか。保育ニーズ・施設の設置維持コスト等に不安がある地域では、事業者からの応募すらありません。
既に3,600人の新たな定員枠が確保されており、更に数百人程度の上積みが確実視されています。限られたリソースの中で、大阪市は保育施設の新設に可能な限り取り組んでいると感じてます。