衆議院総選挙の投票日は10月22日(日)です。

今回の選挙で各党が主張しているのは「子育て支援策」です。特に注目されるのは「教育無償化」です。

実は大阪府大阪市・守口市では、一足早く「無償化(範囲はまちまち)」を導入しています。その効果はどうなっているのでしょうか。大阪日日新聞が掘り下げています。

効果は「不明」

 大阪市は2016年度、「全ての子どもたちが質の高い教育を受けられる環境づくり」の一環で、政令市では全国で初めて幼児教育の無償化を導入した。現在4、5歳児の4万人強が対象で予算は約55億円に上る。最終的には3歳児までを目指す。

5歳の長男と2歳の長女を育てる会社員の女性(43)=同市中央区=は、一駅離れた保育所に通わせている長女を、来春から自宅近くの私立幼稚園に通わせる予定。「無償化がなかったら切り替えは考えなかった」と話す。

無償化が、保護者に新たな選択を促した形だが、全ての子どもたちの環境づくりと、どう結び付いているかは不透明だ。

対象年齢のうち、保育所や幼稚園に通っていない幼児の割合は、制度の導入前後で大きく変わらず約5%で推移し、通わせる動機付けになっていない。前述の女性は「長男の無償化された分は、生活費に回っていると思う」と苦笑する。

市担当者は「未来への投資が狙い。すぐに何らかの効果が出ているかは分からない」と説明。効果を検証する予定もないという。

http://www.nnn.co.jp/dainichi/news/171005/20171005030.html

大阪市は4-5歳児を対象とした教育無償化(幼稚園保育料は無償、保育所保育料は概ね半額)を導入しています。吉村市長が強く主張した「全ての子どもたちが質の高い教育を受けられる環境づくり」の一環です。

記事にもある通り、制度導入前から保育所等や幼稚園に登園している4-5歳児は約95%に達していました。残りはインターナショナルスクール等の認可外保育施設、家庭内保育を行っていると推測されていました。

しかし、制度導入後も割合は大きく変わっていないそうです。殆どの4-5歳児は制度導入前から幼稚園等で教育を受けており、「幼児教育に掛かる費用」が制約条件とはなっていませんでした。

浮いた保育料はどうなっているのでしょうか。生活費に回っている家庭、将来の為に貯金している家庭、習い事等に消費している糧、様々でしょう。無償化によって増えた可処分所得が、そのまま幼児教育に投じられたとは言い難い状況です。

つまり、教育無償化の最大の目的は「子育て世帯の家計援助」です。経済的には助かりますが、これをもって「教育投資」と主張するのは事実と異なっています。

「教育投資」を行うのであれば、まずは量(保育所等の新規整備)や質(教員の研修、人件費アップ、設備の充実)の充実、お稽古事等に利用できるバウチャー制度の導入等が必要でしょう。

就労意欲刺激

 守口市は17年度から幼児教育・保育の無償化を実施。0~5歳児約4600人を対象に、公立保育所の民営化で生まれた6億7500万円を充てた。

保育所や認定こども園の本年度の利用申込数は、前年度比40%増の1052人。市は無償化が要因の一つとみる。

就労意欲を刺激し、転入の動機付けになったケースもあり、1970年をピークに減り続けてきた人口は本年度に入って微増傾向。少子高齢化対策にもつながっているが、保育所の待機児童問題は解消されていない。

受け入れ枠の十分な確保策が改めて課題として浮上し、市担当者は「このままだと人口はまた減り続ける。何とか流れを止めたい」と対策を講じていく構えだ。

守口市は人口減少を食い止める施策の一つとして教育・保育無償化を導入しました。全ての未就学児を対象とした、非常に大がかりな制度です。

導入初年度の今年は、保育所等の申込数が40%も増加しました。同時に新規施設を開設した為、待機児童数等は微増に留まっています。しかし、来年度以降は分かりません。

保育所等に入所した人と出来なかった人・しなかった人との不公平感も指摘されます。

高所得世帯では6万円以上も必要だった0歳児保育料が無償となりました。しかし、入所できずに認可外保育を利用する方は、高額の保育料を支払っています。

また、家庭保育を行っている世帯には、こうした援助等はありません。「保育所に預けないと損」という感覚を引き起こします。結果として、記事小見出しの通りに「就労意欲を刺激」するのでしょう。

しかしながら、0-2歳児を育てている多くの世帯が保育所を利用しだすと、保育所等は今以上に不足します。共働き等でポイントが高い世帯は入所・保育料無償で高所得、そうでない世帯は入所できずに高保育料・低所得となりかねません。不公平感が拭いきれません。

教育・保育無償化は必要か?

子育て世帯にとって教育・保育無償化はありがたい施策です。しかし、効果・不公平感・幼保保育料の格差・待機児童問題・財源等、副作用は非常に多岐に及びます。

限られた財源の中、効果的かつ納得感がある子育て支援策が必要でしょう。各党の主張は厳しく吟味していきます。