東京23区内の自治体で保育料の値上げが相次いでいるそうです。

都内自治体、保育料値上げ相次ぐ 運営費急増

 東京都内で認可保育所の保育料を値上げする自治体が相次いでいる。大田区は9月、利用世帯の約3分の2を対象に保育料を引き上げる。世田谷区は平均5%値上げする。子どもを預けて働く女性が増えるなか、自治体は税金を投じて保育所を運営しているが、費用は急増している。保育所を利用しない世帯との公平性にも配慮し、値上げで増加分や関連費用を補う。

 認可保育所の保育料は公営、民営を問わず一律で、世帯収入に応じて自治体が決める。大田区は9月の保育料改定で、生活保護世帯や低所得層は据え置くか引き下げる一方、残りの65%の世帯を対象に最大25%まで値上げする。2015年度の認可保育所運営経費は211億円と前の年度を11%上回った。

 年齢別の保育料も経費に応じ変更する。従来0~2歳は最も収入が多い層で一律6万3500円。0歳児の保育は1~2歳児と比べて人手が要り、経費がよりかかる。大田区では総経費が1歳児を84%上回っている。

 そこで0歳と1~2歳を分けてそれぞれ値上げし、0歳は最高で7万1800円とする。1~2歳児を2000円上回る水準だ。支払い能力が高い人により多く払ってもらい、「保育の利用者間や自宅で子育てしている家庭との公平性に配慮する」(保育サービス課)という。

 一方、多子世帯に配慮し、これまで第1子の半額だった第2子の保育料は6割減額する。改定で増える1億7000万円分は人材研修など保育の質向上にあてる予定だ。

 世田谷区も9月、保育料を引き上げる。値上げ幅は平均5%。年収700万円程度の世帯では3歳未満の保育料を500円引き上げ2万9700円とする。最も収入が多い層では8%増にあたる5900円アップの7万9000円となる。

 17年度予算で保育所の運営経費は16年度予算比16%増の297億円を見込み、区予算の1割を占める。保育需要が減る兆しはなく、運営経費は当面増え続ける見通しだ。担当者は「持続可能で安定した保育を提供するには値上げが必要だ」と話す。

 練馬区は4月、19年ぶりに保育料を改定した。運営経費全体に占める保育料収入の割合を9.5%から10.8%に引き上げる。約7割の家庭は引き上げ幅が月額3000円以下だが、高所得者層には最大1万5000円の値上げとなった。

 同区調べによると23区平均の保育料収入の割合は12.5%。練馬は値上げしても平均を下回っている。「今後も状況を見て再検討する」としており、さらなる引き上げに向け時期を模索する。

http://www.nikkei.com/article/DGXLASFB27H3O_X20C17A7L83000/

保育料は原則として当該年度の住民税額に基づいて毎年9月に変更されます。大田区や世田谷区は同時に保育料表も変更します。一方、練馬区は9月ではなく4月に保育料表を変更したそうです。

変更前と比べ、大田区では世帯住民税が128,000円未満の世帯において保育料が増減する家庭が混在しています。そして世帯住民税が128,000円を超えるほぼ全て世帯で保育料が増額されています。


https://www.city.ota.tokyo.jp/kuseijoho/ota_plan/kobetsu_plan/kodomo/kaiteisetsumeikai.files/kangaekata.pdf

日経新聞の記事にあるとおり、大田区は0-2歳児保育料を0歳児/1-2歳児に区分しました。0歳児保育料は1-2歳児より300円~2,000円高くなりました。

しかし、0歳児と1-2歳児の保育に要する経費と比べると、保育料の違いは僅かとなっています。大田区は年齢別経費を公表しています。

資料によると、同区における0歳児保育に要する1人あたり費用は約62万円、1歳児は約27万円、そして2歳児は約24万円となっています。


https://www.city.ota.tokyo.jp/kuseijoho/ota_plan/kobetsu_plan/kodomo/hoikuryo_kento/h27_4.files/p6p9.pdf

同区は0歳児保育料に傾斜を掛けたとは言え、要する経費と比べると微々たる割合に過ぎません。恐らく内部では「0歳児と1-2歳児保育料により大きな差を付けるべきだ」という議論もあったのではないでしょうか。

記事では触れていませんが、同区は3-5歳児保育料も値上げしています。上位半数の所得階層世帯では、3歳児保育料が概ね月額2,800円、4-5歳児保育料が月額2,100円の値上げとなっています。

これにより、一部の所得階層では6年間の保育料総額が約35万円ほど増額される見通しです。無視できない増額幅です。

その反面、「従来の保育料が低すぎた」という指摘もあります。同区が都内他区や近隣の政令市と比較した表を掲載しています。

大田区や23区の保育料は、近隣政令市の保育料を大きく下回る水準となっています。自治体の財政状況に余裕があり、低廉な保育料水準を維持できたのでしょう。

しかし、その陰には住民が必要とする規模の保育施設を整備せず、極めて多くの待機児童・入所保留児童を生じさせている状況があります。地価や人件費が高騰している23区内で保育施設を追加的に整備すると、限界費用が急激に逓増するのは当然です。

23区では今後も保育料が引き上げられそうです。大阪市民目線から見ると、これまでが羨ましいぐらいに低い保育料でした。