ネット上で話題になっているコラムがあります。

母になるなら流山市はやめろ父になるなら流山市はやめろ

つくばエクスプレス(TX)開通に伴って都内へのアクセスが急激に良くなった千葉県流山市へ子育て世帯の転入が相次ぎ、学区変更が相次いで行われているそうです。

流山おおたかの森駅から秋葉原駅(終点)までは31分で到着します。京都→大阪(JR新快速)、宝塚→梅田(阪急)と同程度の時間です。

評判の良い新設小学校の学区内に分譲マンションを購入したものの古く・遠い小学校へ学区が変更され、流山市の甘い見通しや反省の無さに対して強い不満が綴られています。

新設小学校の建築が遅れて、、ならよくわかるよ。でもそんな理由じゃなくて、なんで古い小学校に行けだよ。100m前にある新設小学校ではなく1.5km先の古い小学校かよ

学童数計算の甘さを市議に批判されたり しかも今や、保育所の待機児童だって県内1位2位を争うこの街。これのどこが子育ての街??

母になるなら流山市はやめろ父になるなら流山市はやめろ

流山市のファミリー世帯・30代人口の急増は、既に4年前に指摘されていました。

30代人口急増!流山市、”異端”の街づくり

計画的に子育て世帯を呼び込んだ結果、計画を激しく上回る転入が生じてしまったのでしょう。流山市議のブログに背景がまとめられています。

児童急増問題の検証と対策 ~小学校区変更の経緯~

偶然ですが、昨日5月29日に「第1回 大阪市内中心部児童急増対策プロジェクトチーム会議」が開催されました。

大阪市の中心部で児童・生徒が急増し、学校の教室不足が見込まれる問題で、吉村洋文市長を委員長とするプロジェクトチームが立ち上がり、29日に初会合を開いた。特に規模が拡大する小学校から対策の検討を進めることを確認した。

同チームは教育長や北区、中央区、西区の3区長らで構成。教育委員会だけでなく、市として横断的に対策を考える狙いがある。

市内では、若い世代の「都心回帰」により、3区で児童数が急増している。昨年度は3区内にある小学校26校は計324学級だったが、2022年度は計527学級になると推計。将来的には中学校でも教室が不足するとみられている。

もともと校地が狭い学校もあり、別の土地の活用や高層型校舎の可能性についても検討する。吉村市長は「中長期的な目線で、かつスピーディーに対策をとることが大切だ」と話した。

http://www.asahi.com/articles/ASK5Y54VMK5YPTIL01B.html

都心回帰で子どもが増加している大阪市の中心部で5年後には、8割の小学校で教室が不足することがわかりました。

大阪市中央区の「中央小学校」。学校の統合やマンションの乱立などで児童の数が増え、現在は向かいの公園を校庭として利用しています。大阪市ではいま、校庭や教室不足が深刻な問題となっています。

市によりますと、5年後の児童数は北区の扇町小学校で今年度の倍となる824人に。中央区の中央小学校では872から1255人、西区の堀江小学校では今年度の1013人から大幅に増えて1640人となるなど、3つの区では8割の小学校で教室が不足することがわかりました。

大阪市では校舎を高層化して受け入れ児童を増やす案や、民間ビルを借りる案などを検討していて、今年度中に対策をまとめる方針です。

http://www.mbs.jp/news/kansai/20170529/00000050.shtml

大阪市内に高層マンション続々も…児童急増で“教室足りない”(産経新聞)
大阪市教委 5小学校、5年後に児童倍増 都心回帰、市中心部3区 46学級1640人の大規模校も(毎日新聞)

流山市と同じく、大阪市中心部でも児童が急増しています。平成25年及び29年の就学前児童数を比較してみました。

大阪市全体では約2%ほど減少しています。しかし、北区・中央区・西区・浪速区といった中心部では、5年間で就学前児童が20%以上も増加しています。

増加率・増加数ナンバーワンは西区です。5年で25%・1188人も増加しています。一般的な小学校2-3校分に相当する増加数です。

短期間でこれほどに急増すると、当該地域の小中学校・保育所・幼稚園等は全く足りません。今更ながら市長を中心としたプロジェクトチームを立ち上げ、対策を検討しています。

こうした事態に至ったのは、子育て世帯の都心回帰と物件供給、そして市内中心部の小学校の統廃合・跡地売却が主な理由です。

前者は多くの場で語られています。大阪市中心部では大型マンション・タワーマンションの建築が各地で行われています。ファミリータイプが多く、共働き子育て世帯の入居が少なくないと聞きます。

以前にタワーマンション新築による保育所等の不足に要注意という記事を投稿し、保育所等の不足を指摘しました。同じ事態が小中学校でも発生しています。

物件供給がある限り、子育て世帯の転入は止まらないでしょう。都心ではないものの、流山市も同じ状況だと思われます。しかし、行政が物件供給をコントロールするのは極めて難しいのが実情です。

また、大阪市特有の事情として見逃せないのが「小学校の統廃合・跡地売却」です。こうした地域の小学校で児童が減少した昭和末期から統廃合が行われ、多くの小学校跡地が売却されました。

大阪市ウェブサイトに平成26年3月までに統廃合された小学校が掲載されています。大半が市内中心部、ここ数年で児童が急増している地域です。

難波小学校と元町小学校の統合 → 難波元町小学校(昭和60年4月)
堂島小学校と曽根崎小学校の統合 → 曽根崎小学校(昭和61年4月)
大宝小学校・芦池小学校・道仁小学校の統合 → 南小学校(昭和62年4月)
曽根崎小学校と梅田東小学校の統合 → 大阪北小学校(平成元年4月)
長原小学校と大和川小学校の統合 → 長原小学校(平成元年4月)
愛日小学校と集英小学校の統合 → 開平小学校(平成2年4月)
桃谷小学校・桃園小学校・東平小学校・金甌小学校の統合 → 中央小学校(平成3年4月)
精華小学校・南小学校の統合 → 南小学校(平成7年4月)
済美小学校と北天満小学校の統合 → 扇町小学校(平成16年4月)
扇町小学校と大阪北小学校の統合 → 扇町小学校(平成19年4月)
中津南小学校と中津小学校(一部大淀小学校)の統合 → 中津小学校(平成22年4月)
塩草小学校と立葉小学校の統合 → 塩草立葉小学校(平成26年4月予定)

http://www.city.osaka.lg.jp/kyoiku/page/0000267190.html

確かに当時の大阪市中心部は児童が減少しており、複式学級を有していた小学校も少なくなかったです。子育て世帯は大阪市を避け、近郊地域(特に北摂地域)を好む傾向が強かったです。

当時の政策判断として児童が少ない小学校を統廃合し、充実した教育を行える規模に再編したのは合理的でした。問題視されるべきは、「売却した跡地が少なくない」という点です。

統廃合された小学校の跡地利用をまとめてみました。

学校跡地利用(太字は売却・民間利用)
難波小学校大阪市立浪速スポーツセンター
堂島小学校堂島 ザ・レジデンス マークタワー
中央道仁小学校大阪市立島之内図書館等
中央芦池小学校大阪市立南幼稚園運動場
大阪北小学校タワーマンション計画(住友不動産)
梅田東小学校大阪市梅田東学習ルーム
平野大和川小学校大阪市文化財協会長原調査事務所
中央愛日小学校淀屋橋odona・オフィスビル
中央桃園小学校児童公園
中央桃谷小学校社会福祉会館
中央東平小学校タワー ザ 上町台 など
中央精華小学校大型商業ビル(エディオン等)
済美小学校ザ・パークハウス梅田
北天満小学校未定
中津南小学校大阪YMCAインターナショナルスクール
浪速立葉小学校未定

統廃合された小学校が北・中央区に集中しているのに、改めて唖然としました。こうした地域の商家が中心となった財産を拠出し、小学校を開いたという歴史的な経緯があった為でしょう。

約半数が民間事業者へ売却され、多くはマンションが建築(計画含む)されています。こうしたマンションに子育て世帯が転入し、統廃合された小学校の多くで児童が急増しています。自縄自縛とはこのことでしょうか。

物件供給がある限り、利便性が高い地域への子育て世帯の転入は止まらないでしょう。しかし、行政が物件供給をコントロールするのは極めて難しいのが実情です。

利便性が良い地域のマンションを購入したものの、保育所には入れない・小中学校は窮屈・挙げ句の果てに学区変更で就学先を変更されられた・・・・冗談にしては厳しすぎます。

マンション開発業者は、都合の悪い事は言わない(言いたくない)でしょう。売るのが目的ですから。

学区の状況は開発業者から聞くのでは無く、行政やネットを利用して自分で調べるべきです。とは言え、限界もあります。学区変更を予想するのは難しいです。地域住民ですら分かりません。

大阪市中心部の児童急増は非常に危惧しています。いつか大きな事故が起きてしまうのではないでしょうか。「母・父になるなら大阪市はやめろ」と言いたくありませんが、言われても仕方ないのが実情です。

「金が無い・土地が無い・我慢してくれ」は通らない言い訳です。プロジェクトチームの議論に注目したいです。

なお、同チームの第1回会議開催の案内等がネット上で見つかりませんでした。今後は会議予定の事前公表、及び議事要旨・議事録等の公開を願います。

(追記:教育委員会に問い合わせた方の話によると「一般傍聴の予定は無い、議事録等も公開しない」との事でした。マスコミには伝えるのに市民には伝えないとは、おかしな話です。)

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(6/13追記)
MBSのVOICEで特集されました。

大阪市内の小学校の体育館の様子を紹介。かつてはドーナツ化現象で人口が少なくなるとも言われてきたが、現代都心部で子どもが増え、学校の教室不足が深刻化している。その背景のひとつには大阪市の読みの甘さがあった。西区は子育て世代に人気のエリアだが、保護者らは「遊具も使えない」などと憤っている。大阪市立堀江小学校には児童1000人以上が在籍しており、広がってラジオ体操もしづらい状況。現在6学年で30クラスのマンモス校で、図工室や多目的室も通常の教室として改装した。西区は工場・材木店の多い地域で、その跡地に大型マンションが建設された。小学校周辺は高層マンションが立ち並んでいる。予測では児童数は更に増え、5年後には1640人の生徒を抱えることになるとされる。中山大嘉俊校長はあと15教室から必要で、増築の必要があるだろうと語る。運動場に新校舎を建てる工事をしているため、今年の運動会の会場は京セラドームで行った。本当は学校で運動会をしたいが、校長も子どもの運動面積がないなどと頭を抱えている。

大阪市の小学校児童数自体は減っており、25年前の半分。しかし西区など都心部では増え続けており、5年後には30の小学校で約140教室が不足する見込み。特殊な背景があるのは北区。ドーナツ化現象のため児童数が激減した北区では小学校の統廃合が相次ぎ、17校から11校に減った。小学校跡地を大阪市は売却し、今ではタワーマンションが立っている。先を読めずに土地を売却した大阪市に保護者は不満を抱いている。子どもたちの遊び場にも困っているなどと保護者は話す。

大阪市は現在教室不足解消のプロジェクトチームを発足させ検討を進めている。この状況を予測できなかったのかと市の教育委員会に見解を求めたところ、児童数が減っている状況だったため予測は難しかったとの回答が得られた。マンションが立ち子どもが増えるというループは認識しており、慎重に判断すると教育委はしている。市は今後10・20年後を予測し学校の配置計画を検討するとしている。

みんなで遊べないためお昼休みの時間を学年でずらしているという状況だと言う。北区では昔あった小学校の統合を繰り返し、受け皿となった扇町小学校の生徒数は現在412人で、5年後には800人を超えると予想される。中野雅至は予測しろというのも難しく、大阪市を責めるのもかわいそうだと話した。しかし打つべき手はあるため努力はすべきだと話した。吉村市長は対策として、新校舎の高層化や周辺民間ビルを借りることを検討している。本当に難しいが一方でこの状況は大変、マンションの建設に対して声掛けをしていくことも重要だと思いますねなどと話された。

https://tvtopic.goo.ne.jp/kansai/program/mbs/112/607386/

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