少子化問題が指摘されていますが、大阪市の中心部では逆の問題が生じています。児童数の急増です。
大阪市 都心回帰140教室不足 22年度、3区26小学校 マンション増、対応苦慮
大阪市中心部の3区(北、西、中央)で2022年度、計26小学校で約140教室が不足する可能性があると市教委が推計していることが分かった。高層マンションの建設ラッシュで子育て世帯が増えているためで、児童数が倍増する学校も。必要な教室数を確保しようと市教委は校舎増築などの対策に躍起だが、ただでさえ手狭な中心部だけに四苦八苦している。
利便性の高い中心3区は都心回帰で人口増が続き、児童数も増加。近年のマンション増がそれに拍車をかけている。一部の学校では敷地内に校舎増築などを始めたほか、特別教室を普通教室に転用することなども検討。吉村洋文市長は「将来的には市立高校の再編で空いた校舎の活用も含めて考える」と話す。
増築に必要な用地を確保できないケースもある。西区の市立西船場小学校は児童1人当たり運動場面積が5・6平方メートルで、文部科学省基準(1人当たり10平方メートル)の半分程度。休憩時間には高学年と低学年が交代で校庭を使う。今年度の児童数は14学級485人。22年度推計では29学級952人で、ほぼ倍増する。市教委は同小に16教室分の校舎を増築する予定だが、用地確保が困難なため苦肉の案を地元に示した。同じ敷地内の西船場幼稚園を廃園にして機能を約500メートル離れた靱幼稚園に移し、そのスペースに校舎を増築するというものだ。
ただ、教室数は増えても児童1人当たりの運動場面積(22年度)は3・6平方メートルに狭まる。地元住民や小学校、幼稚園の保護者から反発の声が上がり、見直しを求め市議会に4000人分を超える署名を提出。開会中の市議会では廃園の是非が審議される。
少子化と人口減の時代にもかかわらず児童数が急増するケースは、一部の都市部などで生じている。文科省は15年1月、公立小中の適正規模などの手引で「交通網の整備などによる都市計画や住宅開発等によって、児童生徒数が急激に増加する例も見られる」と警鐘を鳴らしていた。
1965年に約315万人だった大阪市の人口は、90年代には250万人台に減少。2000年ごろから増加に転じ、16年に270万人を超えた。ただ、市全体では少子化傾向で、児童数は82年度の約22万5000人が、12年度には約11万6000人に半減。児童数急増は中心部の一部に限った現象だ。
中心部からの転出が続いた時代には、小学校の統合を進めた。中央区では91年度に4校を統合し中央小を新設。同校では、16年度の23学級812人が22年度推計では35学級1255人となる。教室不足の可能性があるが、閉校した各校の跡地は売却済みという。
不動産経済研究所大阪事務所によると、繁華街の梅田と難波に近い西区などは人気エリア。東日本大震災の影響で建設工事費が高騰し、郊外型マンションの割安感が薄れた。笹原雪恵所長は「都心のマンション全体は値上がりしているが、手が届かない範囲ではない」と話しており、都心への転入傾向が続きそうだ。
市内中心部における児童急増に関して、第8回大阪市総合教育会議にて検討が行われました。細かい資料が同会議ウェブサイトに掲載されています。
(4ページ以降)その結果、大阪市は市長をトップとする「緊急対策チーム」が発足させる事としました。
児童急増の大阪市 小学校改善チーム発足へ
大阪市の都心部で児童数が急増し小学校の大きさが不十分となっている問題に対し、吉村市長は自らをトップとするプロジェクトチームを発足させると決めました。
「北区、西区、中央区っていうのは、これまでの既存の考え方じゃないやり方でもやらなきゃいけない。対策チームを立ち上げて、そこでやりたいと思う」(吉村洋文大阪市長)
23日朝の会議で吉村洋文市長は、児童数が急増している北区、西区、中央区で小学校の校舎や運動場の大きさが不十分となっている問題を包括的に解決しようと、自らをトップとするプロジェクトチームを発足させると話しました。
大阪市によりますと、北区の扇町小学校では現在398人の児童数が5年後に824人、西区の西船場小学校では485人が5年後に952人となるなど、市内の13校で児童数の急増によって校舎などが足りなくなると見込んでいます。
専門家からは民間ビルを借り上げて教室に活用する案などが出されていて、市長はそうした意見も反映しながら一部の緊急性のある学校を除き、来年度中に対策方針を固めたいとしています。
上記資料には「経過と現状」「課題」「学校適正配置審議会委員からの意見」という項目があります。
◎経過と現状
○経過昭和59年の文部省指導(31学級以上を有する学校を過大規模校として解消を図る)に基づき、大阪市では分離新設を基本としながら、校区調整や分校設置により適正化を行い、過大規模校はいったん解消
○現状人口の都心回帰により、市内中心部で児童数急増による過大規模校・施設狭隘校が発生する状況過大規模・施設狭隘となることが想定される学校:北区(4校)・中央区(6校)・西区(3校)◎課題
○新たな視点での対策の検討・学校周辺に適当な用地が見つからないため、従来の対策(分離新設・分校設置)での対応が困難・校舎増築・教室改造等の応急的な対策も、学習環境への影響を考えると対応に限界⇒既存の手法に加えて、新たな視点に立った過大規模校・施設狭隘校への対策が必要⇒他都市事例(施設の高層化・複合化)や一定期間の用地の借上などの検討
○将来推計の精査・児童急増対策の検討には、各校の児童数のピークや将来的な増減傾向などの把握が必要⇒学校ごとに異なる状況に対応するため、より実情に即した将来推計となるよう精査⇒校区単位での中長期的な将来推計の算出についても検討◎学校適正配置審議会委員からの意見
・中学校区・行政区を越えた対応の検討中学校区や行政区を越えた校区調整などが考えられないか
・他都市事例の調査研究校舎の高層化や複合化などの他都市事例について、調査研究を行い、実現可能性の検討が必要ではないか
・民間不動産の活用建物だけでなく、民間ビルのフロア等を借り上げ、教室として活用することを検討してはどうか
・他の行政財産の活用大阪市の既存の行政財産を暫定的にでも学校施設として活用できないか
・人口流入の調整大型マンション建設の調整(一時的な延期など)といった他都市事例もある。大阪市として都心部に居住誘導するのか、一定の抑制をするのかについて、考え方の確認が必要ではないか
・都市計画・まちづくり部門との連携児童急増対策の検討においては、行政内での都市計画・まちづくり部門との密接な連携が必要不可欠ではないか
・ビッグデータ等の活用信頼性のある中長期的な児童数推計の算出において、民間が所有するビッグデータ等の有効活用はできないかhttp://www.city.osaka.lg.jp/seisakukikakushitsu/cmsfiles/contents/0000391/391984/03siryo3.pdf
参加者の意見等は、私の現状認識と概ね一致しています。
上記資料には、北区・中央区・西区の学校配置図・児童生徒数・校地面積等が記載されています。
大半の小中学校の校地面積は1万平方メートルを下回っており、校舎等を増築する余地はあまりありません。都心部にある為、隣接地等への拡張も困難でしょう。
更に大阪市は廃校となった小学校跡地の売却を積極的に進めていました。跡地にタワーマンション等が建ち、小学校が足りなくなるのは滑稽としか言い様がありません。
当時の政策判断はともかく、今後の跡地売却は慎重に判断するべきでしょう。
従来の方法では、児童急増への対策は困難と言えます。都心部の実情に即した思い切った対策が必要です。たとえば東京では、オフィスビルの低層部分に小学校を設置する計画が進んでいます。
東京駅前の再開発に伴い、再開発予定地区の中央に位置する中央区立城東小学校が、地上45階(約245メートル)の超高層ビルの低層階に入る。着工は平成30年1月、竣工は平成33年4月の予定。
従来の学校と比べて、何かしら不便に感じるケースも生じるでしょう。「狭い」というのが代表例です。話を具体的に進めるに際しては、検討段階から住民(特に子育て世帯)と共に進め、「満点では無いが納得できる」結果を導くのが重要でしょう。
プロジェクトチームで一定の方向性が出ても、計画が実行・完了するまでには多くの年月が必要です。例えば校舎を増築する場合は、予算・設計・工事等で少なくとも3年が必要と言われています。
「都心部の新築タワーマンションに入居したのは良いものの、保育所には入れない、小中学校は混み合って運動できない」という状況が起こりつつあります。
こうした地域への居住を予定している方は、ぜひ地域の小中学校の現状をご確認下さい。また、保育所については当ウェブサイトに詳細な情報を掲載しています。
強いて言うのであれば、対策は遅すぎました。
中心部への人口急増は以前から分かっていた事でした。都心部の地価下落・タワーマンション等の急増・共働き世帯の増加・女性の社会進出等、全ての要素が都心部への子育て世帯の集中を示唆していました。
どうしてもっと早くから対策が出来なかったのかが悔やまれます。
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