第4回大阪市待機児童解消特別チーム会議が開催され、待機児童対策に関する幾つかの方針が定まりました。

大阪市の吉村洋文市長は14日、待機児童の解消に向けた市の特別チームの会議で、市営住宅の空室に0~2歳児が対象の小規模保育所(定員12~19人)を平成30年4月から設置できるか検討するよう関係部局に指示した。1、2階のスペースを改修して運営する形を検討している。

市は昨年12月~今年3月、小規模保育所や認可保育所の分園計60カ所で運営事業者を公募。これまでに30カ所の応募があったが、北区や天王寺区、淀川区などでは応募数が少なく、市営住宅の活用を検討する。

公営住宅の空室を使った小規模保育所は、府が島本町や交野市の府営住宅を使って運営。大阪市は30年4月時点での待機児童ゼロを目標に掲げており、吉村市長は「災害時の安全性などをみながら法律の範囲内で市営住宅を活用する」と述べた。

会議では他に、保育施設で保育士とみなして働く看護師の子供が優先的に保育施設に入所できる取り組みを来年4月から行うことを決めた。

http://www.sankei.com/west/news/170415/wst1704150038-n1.html

小規模保育新設公募への応募率は5割未満!

大阪市は小規模保育施設の新設を積極的に進めています。平成30年度に向けては60箇所の新設を計画しています。

平成29年度 大阪市保育施設等設置・運営事業者(入所枠:12人以上)募集について

しかし、今年1-3月に掛けて行われた公募手続(整備補助金対称分)では、僅か26箇所への応募しかありませんでした。応募率が5割を切る、散々たる状況となっています。

特に厳しかったのは、北区(募集4:応募0)・都島区(募集3:応募0)・中央区(募集3:応募1)・天王寺区(募集9:応募1)・淀川区(募集8:応募3)・阿倍野区(募集5:応募1)です。

つまり、西区(募集5:応募4)を除いた待機児童問題が深刻な地域は、殆どで小規模保育施設の公募が難航しているのが実情です。

吉村市長が掲げる積極的な待機児童対策に対し、事業者が「大風呂敷だ、採算が厳しい、保育士が採用できない」等の理由により、反応しなかっと言えそうです。

大阪市営住宅低層部分を小規模保育施設に提供

そこで打ち出したと推測されるのが、「市営住宅の空部屋を小規模保育施設へ提供する」という方針です。NHKによると、北区・天王寺区・淀川区・阿倍野区が対象とされています(中央区は市営住宅なし)。

市営住宅の活用は昨年の同会議でも検討されていました。多額の改修費・近隣住民の理解等が課題とされています。

では、果たして上手くいくのでしょうか。市営住宅の分布・入所ニーズから検討してみます。

北区は難しそう

北区の市営住宅は12箇所(1333部屋)があります。その大半は豊崎・中津・長柄といった旧大淀区内にあります。

一方、北区で待機児童問題が最も深刻なのは区南東部(同心・南森町・西天満等)、次いで東部(扇町・中崎・本庄南部等)です。残念ながら市営住宅がある地域と待機児童問題が深刻な地域は重複せず、通勤経路からも大きく外れています。

しかし、北区は市営住宅がある地域でも保育所等への入所希望者が多く、入所するには高い点数が必要となっています。希望者に対する保育所等が不足しており、多くの入所希望者は集まるでしょう。

ただ、こうした地域では民間事業者が独自に敷地等を確保し、保育所等を設置しているケースが多数見受けられます。たとえばポポラー大阪長柄園茶屋中津保育園です。敢えて市営住宅を提供する必要があるのかは疑問です。

天王寺・淀川・阿倍野は検討の余地有り

対照的なのは天王寺区です。同区の市営住宅は8箇所(932部屋)があります。区内中心部に近い便利な場所にある市営住宅が多いのが特徴的です。立地は何ら問題はありません。

また、天王寺区は区内全域で待機児童問題が深刻です。どの市営住宅に設置されても多くの希望者が集まりそうです。

淀川区は29箇所(4374部屋)という多くの市営住宅が立地しています。その半数は加島・三津屋といった、待機児童が殆ど生じていない地域にあります。こうした市営住宅に小規模保育を設置する必要性は乏しいでしょう。

同区で待機児童問題が深刻なのは三国・宮原地域です。三国本町・西宮原・西三国等にある市営住宅が考えられます。

阿倍野区の市営住宅は12箇所(739部屋)あります。区中心部は少なく、北部(金塚の再開発地区等)や南部(北畠等)に集中しています。

同区で特に待機児童問題が深刻なのは北部です。高松・松崎・三明市営住宅がある地域と完全に重なっています。実は高松・三明は市営住宅内に公立保育所が設置されています。

考えやすいのは、こうした市営住宅内に小規模保育を設置し、公立保育所を連携施設とする方法です。

集合団地等に保育所と小規模保育を設置している前例があります。森之宮保育園(城東区)が連携しているもりのこルームです。3歳児の優先入所枠が設けられる事も多く、先が見えて保護者も安心できます。

市営住宅の立地や他地域との均衡を踏まえると、北区は難しい一方、天王寺区・淀川区・阿倍野区は可能性があると感じました。

空き部屋があるのか?

しかし、課題は山積みです。改修費用・近隣住民の理解に加え、「そもそも空き部屋があるの?」という点です。こうした市営住宅は立地がよく、かつ家賃は民間住宅より極めて安く設定されています。募集に対して申込みが殺到しているのが実情です。

少なくともこれらの区にある市営住宅は現時点では満室となっています。随時募集一覧に全く掲載されていません。

ちょうど良いタイミングで空き部屋が生じ、小規模保育事業者とのマッチングが成り立ち、施設が開所する・・・・・偶然性は相当高そうです。

看護師(みなし保育士)の子供も優先入所へ

同会議では、「保育所でみなし保育士として働く看護師の子供」も保育所へ優先的に入所できる制度を設けると決まりました。平成29年4月入所分から保育士の子供の優先入所が始まりました。これを看護師にも広げる内容です。

注意が必要なのは「病院等で働く看護師は対象外」という点です。あくまでみなし保育士として働く看護師のみです。

「市立幼稚園の認定こども園化」を推進か

会議では「市立幼稚園の認定こども園化」についても報告が行われたそうです。

大阪市立幼稚園は応募者が決して多くなく、施設数も徐々に減少しています。3歳児募集枠の拡大・保育ニーズの受け止め(こども園化)等、子育て世帯が求めている内容に応じ切れていないからでしょう。

待機児童解消チーム会議で行われた報告なので、「公立幼稚園をこども園にし、待機児童問題の解消を図りたい」といった内容だと推測あれます。

認定こども園化の善し悪しは分かりません。ただ、大阪市内に私立認定こども園が増えているのに対し、それを指導・監督する大阪市の公立認定こども園が皆無なのは問題があるでしょう。

仮に移行を検討しているのであれば、対象園の保護者や地域の子育て世帯等に早く情報を出して欲しいです。原案が完成してからでは遅すぎます。