3月28日に開催された大阪市会本会議にて、教育無償化拡大や待機児童対策の強化等を含む新年度予算案・西船場幼稚園廃園条例案等が可決されました。
教育無償化が4歳児・認可外(一部)へ拡大
幼稚園・保育所・こども園に通う5歳児に限られていた教育無償化が拡大されます。具体的には、こうした施設に通う4歳児、及び一定の要件を満たした児童が通う認可外保育施設(一部)です。
詳細は下記の投稿にまとめています。
・【大阪市政】平成29年度から4歳児も教育費無償化へ
・【大阪市政】認可外保育施設(基準あり)も4-5歳児教育費無償化へ
子育て世帯の経済的負担を軽減する措置は喜ばしい反面、その効果は中高所得世帯に集中し、低所得世帯への経済的効果は殆どありません。
また、既に4-5歳児のほぼ全員が幼稚園等へ就園しており、市長が意図する教育無償化を通じた就園率の向上は殆ど生じないでしょう。
心配なのは財政面です。この施策、持続可能なのでしょうか。
西船場幼稚園は平成31年3月31日廃園
議案第236号大阪市立学校設置条例の一部を改正する条例案(平成28年)も可決されました。これにより、西船場幼稚園の廃園も決定されました。
廃園日は平成31年3月31日、つまり2年後です。様々な議論を経ましたが、結果として行政原案通りの内容となりました。
なお、同案には附帯決議が盛り込まれています。
西船場幼稚園の廃園については、西船場小学校区や近隣の小学校区においても子どもの人口増加が顕著であることや、西船場小学校が狭隘であることを踏まえ、以下の事項に留意して、今後も教育環境の改善と子育てしやすい環境の充実に取り組むこと。
西船場幼稚園の廃園にあたっては、靱幼稚園への機能移管を円滑に行うとともに、今後も増加が見込まれる幼児教育ニーズに対応するための受け入れ枠の確保に向けたあらゆる検討に早急に着手すること。
西船場小学校の児童数がさらに増加し、今回増築する校舎でも教室が不足することが見込まれる場合は、狭隘な敷地にさらに増築するのではなく、小学校を分離新設するなど抜本的な教育環境改善策を講じること。
附帯決議を提案したのは自民党です。同党所属、西区選出の永井議員が早い段階から教育子ども委員会にて問題提起しました。「苦渋の選択」という表現を用いて、同議員は賛成討論を行っています。
(省略)
西船場幼稚園の140年にも及ぶ歴史と伝統、またこれまでの素晴らしい教育実践を考えた時に、機能を靭幼稚園に移すとはいえ、西船場幼稚園を廃園せざるを得ないということは、地元の方々の心情を踏まえると、受け入れがたいことでありますが、子どもたちの教育環境を第一に考えた時には、まさに苦渋の選択をしなければならないと判断致しました。よって、この間の議論経過を踏まえ、西船場小学校の児童数のさらなる増加に対して、小学校を分離新設するなどの抜本的な教育環境の改善策に講じるなどの附帯決議を条件に賛成すべきと考えます。
議員各位のご賛同をお願い申し上げ、賛成討論といたします。
半年ほど前に地元の方からメールにて現状を聞いて以来、本件に関して可能な範囲で情報発信等を行ってきました。幼稚園廃園による小学校増築には反対する意見が多い一方、小学生の爆発的増加へ短期間で対応するには一つの現実的な案だったのは否めません。
大阪市の対応の遅さ
本件について最も問題視したのは、大阪市の対応の遅さです。西船場小学校の児童数が爆発的に増加し、教室数や敷地が不足するのは数年前から明白でした。数年前に校舎が増築されましたが、その場しのぎという性質は否めません。
もっと早い段階から問題を公表・共有し、検討を進めていれば、物事がギリギリのスケジュールで進むこともなかったでしょう。
市の担当者は「児童数増大に対応する校舎増築を行うには、この市会で決めなければならない」旨を委員会で繰り返していました。しかし、住民や議会へギリギリの判断を迫ったのは、市の不作為によるものです。
以前に禍根を残す大阪市「いきなり調整方式」(経済学者 日本の最貧困地域に挑む あいりん改革3年8カ月の全記録より)という記事を掲載しました。大阪市のやり方の一つとして、「いきなり調整方式」を照会しました。
すなわち、(1)地域の人々に事前に一切の相談をせず、行政内部で秘密裏に事業を立案し、(2)具体的な事業計画を詰め終え、予算も決まってから、ぎりぎりのタイミングではじめて地域に説明する(いきなり調整方式)。
本件はまさしくこの通りでした。町内会等へはもう少し早いタイミングで紹介された様子ですが、子育て世帯・幼稚園へ通っている保護者等へ説明されたのは、原案がほぼ確定してからのタイミングでした。
原案が修正されることは稀です。もう決まった案だからと諦める人もいれば、ほぼ決まってから公表された案やガス抜きとしての説明会に反発を覚える人もいます。
当事者は子育て世帯、町内会ではない
更に複雑な物にしたのは、町内会等と子育て世帯のズレです。
町内会は古くから住んでいる高齢者が中心となって組織されています。その為、幼稚園の廃園とは直接の利害関係を有しない人が専らでしょう。
幼稚園の廃園や小学校の狭隘化の当事者は、まさしく子育て世帯です。特に西区は地域外から転入した住民が多く、町内会と関わりを持たない方が少なくないでしょう。住民の意見をくみ取るのであれば、こうした世帯へアプローチする必要がありました。
こうした問題は幼稚園に留まりません。全ての地域の小学校や中学校でも同じ問題が生じます。特に子育てに関する問題について、町内会を住民代表と見做すのは間違っています。
だからといって、PTAも少し違います。学校の強い影響を受け、主な役員は高学年の父兄が多いでしょう。小中学校等に関する話が実現する数年後には、当事者は卒業してしまう場合が少なくありません。
子育てに関する話は、少なくとも現在、そして数年後も子育てに関わっている世帯が当事者です。幼稚園廃園であれば、これから入園を予定していた子どもがいる世帯が当事者です。高齢者や卒園する保護者ではありません。
機能移転・こども園誘致・分離新設校が論点に
今後は靫幼稚園への円滑な機能移転・靱公園内へのこども園誘致・扇町高校跡地等への学校新設等が論点となりそうです。
子育て世帯に直結するのは、こども園の誘致でしょう。靱公園の東部に私立こども園を誘致したい意向だそうです。
靱公園がある地域は、大阪市内で最も保育所等へ入所しにくい地域です。特に1歳児入所は極めて厳しい地域です。早期にこども園を誘致し、1-2歳児入所を重視した定員配分が行われれば助かる世帯が多いでしょう。
扇町高校跡地は北区中之島5丁目にあります。この地域の就学先は天満小学校ですが、あまりに遠い為、中之島3-6丁目は西船場小学校への就学が認められているそうです。
同高校は数年前に解体され、現在は更地です(詳細はこちら)。ここに新たな小中学校が設置されれば、西船場小学校等の狭隘化も若干緩和され、同時に中之島地域の住民に喜ばれるでしょう。
様々な施策を通じ、大阪市は市内中心部への転入(特に子育て中の中高所得世帯)を図っている姿勢が垣間見えます。こうした施策を行うのであれば、子どもが過ごす学校を適切に整備するのは当然です。
大阪市内の小中学校は古くて汚い施設が多く、地域の所用で訪れる度に閉口しています。私が数十年前に卒業した小中学校より古くさいのは愕然とします。
児童数に見合う教室を整備すると同時に、時代に見合った修繕・改築・建替も行うべきでしょう。住まいは綺麗な高層タワーマンション、でも保育所には入れない、小学校は老朽校舎は・・・・笑い話ではありません。
この様な子育てに関する話は高齢者主体の町内会ではなく、この地で子育てしていく世帯の意見や思いを重視して欲しいです。
大阪市の対応が遅れたのは大阪維新をひたすら反対しまくる連中がゴネてきたからでしょうに。