痛ましい事故です。平成28年4月14日、大阪市淀川区の認可外保育施設「たんぽぽの国」に預けられた男児が保育中に呼吸が止まり、死亡しました。何と初めて預けられた日の出来事でした。

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(3/14追記)
【ニュース】認可外保育「たんぽぽの国」の死亡事故、施設長ら3人を書類送検へ
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認可外保育施設で1歳男児が死亡 初の通所で昼寝中に

大阪市淀川区東三国の認可外保育施設「たんぽぽの国」で今月4日、預かっていた1歳の男児が昼寝中に意識不明となり、搬送先の病院で死亡する事故があったと大阪市が12日、発表した。大阪府警が原因を調べている。

大阪市や施設によると、男児は4日午後に初めて預けられ、うつぶせの状態で昼寝を始めたが、後に姿勢を横向きに変えた。保育士は、昼寝の様子を横目で見ながら、他の子供にお菓子を与えていたというが、同3時半ごろに異常に気づいた。同4時半ごろ、救急搬送された病院で男児は亡くなった。

事故当時は保育士と従業員の2人で、死亡した男児を含む1~3歳の11人の子供を預かっていた。事故は男児の親類が市に通報して発覚。市は事故当日に施設を特別立ち入り調査し、昨年8月以降、保育従事者が1人になったり、保育士が不在になったりする時間帯があるなど、市の指導監督基準を満たしていない場合があったと指摘した。

施設は、同じ建物に入っている人材派遣会社が平成6年12月に開設した。

中野栄造施設長兼社長(43)は「結果として重大なことになり、ご遺族に大変申し訳ない」と話した。

http://www.sankei.com/west/news/160412/wst1604120062-n1.html

大阪・認可外保育施設で1歳児死亡

大阪市淀川区の認可外保育施設で、先週、1歳の男の子が昼寝中に心肺停止となり、その後、死亡していたことがわかりました。

死亡したのは1歳2か月の男の子で、今月4日、大阪市淀川区の認可外保育施設「たんぽぽの国」に初めて預けられました。

昼寝を始めて約1時間後の午後3時半ごろ、男の子がうつぶせになっているのを保育士が発見し、病院に搬送されましたが、死亡しました。

当日は、子ども11人が預けられていて、保育資格のあるスタッフを含む2人が勤務していたということです。

「(他の子に)おやつを食べさせながら見ているという状態でした。(男の子が)下を向いていたので抱えたら、もうすでに顔色が悪かったようです」(運営事業者ベルサンテスタッフ中野栄造代表)

「偶発的な事故だったんじゃないかなと思います。他の保育所よりはいいと思ってうちは預けていました」(この保育施設の利用者)

「園長先生が近隣の保育園の悪口とかを言うようなことがあったので、ちょっと不安に感じたので1か月分の料金を収めていたんですけど、2、3日でやめました」(以前この保育施設を利用した人)

男の子の死因はわかっておらず、警察が施設を立ち入り調査して事故の原因を調べています。

http://www.mbs.jp/news/kansai/20160412/00000057.shtml

事故現場は大阪市淀川区東三国5丁目

事故が発生したのは淀川区東三国5丁目15番14号(ベルサンテビル2階)でした。新大阪駅に近くマンションが建ち並んでいる地域です。この地域は新大阪・梅田等のビジネス街へ通勤しやすいです。

周囲には認可保育所も少なくありません。大阪市子育て支援施設マップ(非公式)によると、事故現場の周囲にはポラリスこども園・つくしんぼ西保育園・あい保育園西三国(平成28年4月新設)・かいせいプチ保育園東三国園(小規模保育)があります。

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(紫はフルタイムでも厳しい、青はフルタイムなら概ね入所可能性あり)

しかしこの地域は、保育所が完全に不足しています。特に1歳児クラスは申込が多いのに比べて募集数が少なく、毎年数多くの児童が入所出来ない状況です。東三国・宮原・西宮原は淀川区内で最も入所が厳しいエリアです。1歳児入所は少なくともフルタイム共働きが必要です。

死亡した男児もひょっとしたら認可保育所へ申し込んだが入所出来ず、認可外保育施設で空きを待っていたのかもしれません。

実は淀川区東三国では過去に同じ様な死亡事故が起きています。いわゆる「ズンズン運動事件」です。こうした事故・事件が立て続けに起こるのは、保育所不足に関する地域事情と無縁ではないでしょう。

施設運営者は保育士等の人材派遣業者・行政処分歴有り

事故が発生した施設を運営しているのは、主に保育士等の派遣事業を営んでいる「ベルサンテスタッフ株式会社」です。本社は事故が発生したビルの4Fにあります。派遣する保育スタッフの子供を保育していたのでしょうか。

保育士を派遣している業者が、自社で保育施設を運営するという話はしばしば聞きます。保育士等は自社への登録人材で確保できるのが強みです。ここで保育ノウハウを積み、派遣社員の研修的な役割も果たしているのでしょう。

実は同社は昨年8月に労働者派遣事業改善命令を受けています。

労働者派遣契約に基づく労働者派遣の役務の提供を受けようとする者から、抵触日通知を受けずに、故意に労働者派遣契約を締結していた一般労働者派遣事業主に対する行政処分について

第1
被処分一般派遣元事業主
名称 ベルサンテスタッフ株式会社

京都労働局のプレスリリースから引用

労働者派遣契約に基づく労働者派遣役務の提供を受けようとする者から抵触日(派遣受入期間の制限)通知を受けずに、労働者派遣契約を締結していたとするものです。

法令遵守・内部管理体制に何らかの問題があったと考えられます。

大阪市は事故当日に特別立入調査を実施

死亡事故の詳細は大阪市ウェブサイトに掲載されています。

認可外保育施設で発生した死亡事故について

平成28年4月12日14時発表

平成28年4月4日、次の認可外保育施設において、預かっていた児童が、心肺停止状態となり救急搬送され、搬送先の病院で死亡する事故が発生しましたので、公表します。

1 事故が発生した施設
認可外保育施設「たんぽぽの国」
施設の所在地 大阪市淀川区東三国5丁目15番14号 ベルサンテビル2階
設置者 ベルサンテスタッフ株式会社(代表取締役 中野栄造)
開設日 平成6年12月20日

2 事故の概要
平成28年4月4日14時過ぎ、1歳の男の子が、当日初めて当該施設に預けられ、14時40分頃から午睡を始め、15時30分頃保育士が男の子の異常に気づき、人工呼吸を行いました。その後、119番通報するとともに、電話先の指令員からの指示により心臓マッサージを含めた心肺蘇生を行いましたが、心肺機能は回復しませんでした。救急隊到着後病院搬送を行いましたが、搬送先病院により死亡が確認されました(注:16時半頃)。
同日17時40分頃、男の子の親戚からの本市への通報により、本事案を認知したものであり、当該時点では、施設からの事故報告はありませんでした。

3 事故原因
現段階では不明

http://www.city.osaka.lg.jp/hodoshiryo/kodomo/0000351348.html

大阪市が死亡事故を知ったのは保育施設からの連絡では無く、死亡した男児の身内からの通報でした。慌てていたとは言え、施設の運営体制に何らかの問題があった事が示唆されます。

大阪市は死亡事故が発生した当日に特別立入調査を行っています。「重大な事故が発生した場合又は利用者から苦情や相談が寄せられている場合等で、児童の処遇上の観点から施設に問題があると認められる場合には、届出施設であるか否かにかかわらず、随時、特別立入調査を実施できる(認可外保育施設に対する指導監督要綱)。」とされているものです。事後的なとは言え、極めて迅速な対応です。

これにより、重大な不備が確認されました。

4 最新の立入調査結果
平成28年4月4日事故発生日に、特別立入調査を実施。
その結果、平成27年8月20日立入調査以降、「保育従事者が1人で保育する時間帯があったこと。」及び「有資格者が不在の時間帯があったこと。」の2点の不備が確認されましたので、「認可外保育施設指導監督基準を満たす旨の証明書」を4月5日に返却させました。
※ 認可外保育施設(届出対象施設に限る。)において、立入調査の結果不備事項がなかった場合に「認可外保育施設指導監督基準を満たす旨の証明書」を交付

5 今後の対応
事故当日及び翌日に実施した特別立入調査の結果を踏まえ、事故に対する再発防止策を検討するとともに、類似施設に対しても、睡眠時の安全確認並びに緊急時の対応について周知し、事故防止対策を図ります。

過去の出勤簿や預かり児童・時間を記載した記録等から、保育従事者・有資格者の不足が発見されたと推測されます。「保育従事者が1人勤務の時間帯がある」「月極契約乳幼児数に対して有資格者が不足している」というのは、保育事故が発生した多くの施設で共通している事項です。

乳幼児の健康や安全を確認するには数多くの大人の目(特に保育士の様な専門職)が必要です。これらが不足していると、乳幼児に不測の事態が生じても気づかない時があるでしょう。

大阪市は調査結果を積極的に公開

大阪市は定期的な立入調査や特別立入調査の結果を「認可外保育施設最新立入調査結果」で公表しています。同施設への調査結果も記載されています。

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また、このページには、事故が発生した保育施設と同じ指摘を受けている施設が幾つか掲載されています。特別立入調査が行われ、従事者・有資格者の不足が指摘された施設も少なくありません。

こうした結果を公表しているのは実は珍しい事例です。大阪市の保育行政については賛否両論がありますが、情報を積極的に公開している体制は極めて良心的です。他の自治体でも見習って欲しいです。

認可外施設の利用を検討している保護者は、この表が大いに参考になります。ただ、「基準を満たす証明書」が発行されていても、保育の内容はまちまちです。大切なお子様を安心して預けられるか否かは、何度か見学をしてから判断して下さい。

とはいえ、男児を預けた保護者も見学等はしていたでしょう。どうしたら、この様な痛ましい事故は避けられるのでしょうか。

なお、大阪市では認可外保育施設に関する情報は全て中之島の市役所本局へ集まっている様子です。区役所は殆ど情報を有していないのが実情です。以前にとある区役所へ相談に行ったところ、「うちではよく分からない」と言われて区内の認可外施設一覧表(ウェブサイトを印刷した物)を渡されただけでした。

施設利用者等からの生の情報が集まりやすいのは区役所です。しかし、そうした情報を集約する機能や体制が不十分です。この施設に関する情報や苦情、ひょっとしたら淀川区役所の保育係に届けられていたかもしれません。

男児の冥福を祈ります。