養護費相当額(推計)は保育所保育料の半分弱を想定

養護費推計150122

それぞれの所得階層毎に、保育所保育料から幼稚園保育料を控除した金額を「養護費相当額」としています。これによると養護費の上限額は10,600円となりました。

しかし、市長は会見で「養護費は現行の40%台を想定している」と発言しています。単純に幼稚園教育費を控除した場合、養護費は現行の30%台となってしまいます。

養護費相当額をやや上乗せし、所得毎の逆転現象やマイナス化が生じない様に調整を加えた上、2月市会に予算議案として提出されるのではないでしょうか。

「教育の重視」=「教育費無償化」が正しいのか?

市長が教育を極めて重視しているという考えが伝わってきました。しかし、その為の具体的な方法が「教育費の無償化」というのは腑に落ちません。教育費が高騰して幼児教育を受けられない世帯が多いのであれば理解できるのですが、現在の大阪市はそうではありません。

年齢別の在籍状況(2011年)

http://www.city.osaka.lg.jp/kodomo/page/0000038257.html

大阪市内に在住している5歳児の内、保育所・幼稚園に在籍している5歳児は全体の約95%となっています。2011年調査による数字ですが、2016年でも大きな変化はないでしょう。

大阪市では幼稚園保育料・保育所保育料は応能負担となっています。所得が低い世帯の保育料は全額免除ないし低廉な金額となっています。「貧しくて児童教育を受けられない」という状況は考えにくいです。

教育を重視するのであれば、もっと他にやり方があるのではないでしょうか。教育内容の充実を図るのであれば教育費無償化ではなく、幼稚園・保育所の充実が必要でしょう。具体的には職員の加配(保育士不足を招く副作用は危惧されますが)・施設運営費補助金等(特に職員人件費)の増額・就学前カリキュラムの実行が考えられます。

また、保育料以外の部分(主食費・給食費・用具費等)の負担感が大きくて幼児教育の負担感に繋がっているのであれば、そうした部分への補助という方法も考えられます。

親の所得格差が子供の教育格差を更に広げかねない?

何より引っかかるのは、「親の所得格差が子供の教育格差にならないようにしたい」という市長発言と打ち出した施策が矛盾している点です。この意見には概ね賛成です。

しかし教育費無償化の効果は高所得世帯ほど大きく、生活保護世帯等には何ら効果がないのです。高所得世帯は無償化によって生じた資金をお稽古事等へ充てられます。教育費無償化によって、親の所得格差が子供の教育格差を更に広げる方向へ働きかねません。市長の意見と矛盾する危険性をはらんでいます。

お稽古事等も教育の一環です。お世話になっている保育所でも、多くの児童が水泳やピアノといったお稽古事に通っています。であれば、こうした活動に一定額の補助を行うのは一つの方法でしょう。塾代助成事業の拡大版です。

理念は賛成、しかし手段に疑問

子育て世帯として、確かに5歳児教育費が無償となるのはありがたいです。しかし、それをもって「教育を重視している、充実した」とするのは納得できません。

市長の掲げる理念は重要であり賛同しますが、実現する手段に疑問が残ります。いわゆる「目的と手段の不一致」です。ましてや、20億円以上の税を投じる施策です。

恐らくは2月市会でこうした部分も指摘されるでしょう。論戦が待たれます。