高市内閣が発足してから3日目となりました。内閣発足にあたり、高市首相は閣僚に「指示書」を出しました。首相が重視する分野・方針が記されています。

高市早苗首相の閣僚への指示書全文
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA230EU0T21C25A0000000/

「指示書」より、子育て世帯に関係する分野を抽出しました。

文教分野:複線的な教育制度、いじめ対策、産業界で活躍する人材育成

【松本文部科学相】
(1)関係大臣と協力して、あらゆる人が最適な教育を受けられる社会を実現する。

(2)子どもたちの個性を伸ばし、多様な価値に対応できるよう複線的な教育制度へと抜本的な改革を行うとともに、多様な場で学べる環境を整える。GIGAスクール構想を進め、時間・場所・教材等に制約されない質の高い教育を実現する。

(3)いじめ、自殺、不登校などの問題に真正面から取り組める教育現場を実現する。関係大臣と協力して、登下校時の防犯活動や通学路における交通安全対策を推進する。

(4)文化芸術活動の発展や地域の文化資源の磨き上げなど、文化芸術の振興を図る。外務大臣と協力して、ソフトパワー外交、国際展開を強化する。

(5)産業界のニーズを踏まえて活躍する人材、未来成長分野に挑戦する人材を育成するため、大学改革に取り組むとともに、高等専門学校(高専)や専門高校の職業教育充実等を進める。日本が引き続き科学技術立国として発展するため、内閣府特命担当大臣(科学技術政策)をはじめ関係大臣と協力して、科学技術基盤を強化し、産学官連携による最先端の科学技術・イノベーションへの投資を拡大する。(中略)

文教分野では「いじめ、自殺、不登校などの問題に真正面から取り組める教育現場を実現する」「複線的な教育制度へと抜本的な改革を行う」に着目しました。

いじめ・自殺・不登校等の問題は本当に深刻です。お世話になっている中学校は10人に1人以上が不登校となっています。小学校までは登校できていても、中学校から不登校となった生徒が多いです。

水面下でいじめも発生しているそうです。あからさまな暴力等ではなく、SNSを通じた「ネットいじめ」が起きていると聞きました。

学校内の暴力行為であれば先生方に助けや作為を求められますが、ネットいじめに学校は消極的です。とある先生は「学校として関与できない、したくない。」と断言していました。

こうした児童生徒の一部は、学びの場をフリースクールや通信制高校へ移します。こうした学校を「複線的な教育制度」としているのでしょうか。

我が家がお世話になっている中学校からも通信制高校へ進学する生徒が年々増加しています。しかしながら通信制高校は玉石混合と聞きます。各校毎の実態まで中学校は把握しきれていません。進学後のミスマッチ話を頻繁に聞きます。

周囲にフリースクールで学んでいる児童生徒もいる筈なのですが、その姿は全く見えません。

学校での人材育成は産業界からのニーズを重視する方針を示しています。文系よりも理系、高専や専門高校(工業系か)の充実を進めるとしています。

一方、私立高校授業料無償化を受け、中学生の進学ニーズは普通科高校へと傾斜しています。工業高校等への進学者は減少し続けており、大阪市内では工業系高校の統廃合が進んでいます。

本人の適性によりますが、私立高校普通科から私立大学文系学部へ進学するより、工業高校等で技術を身につけて理系大学へ進学もしくは就職した方が充実した人生が送れるのではないかと思っています(あくまで個人の価値観です)。

参考として、大阪府立都島工業高校の進学・就職先一覧をご紹介します。

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子育て:若い世代の所得を増やす、子育て世帯を支援する

【黄川田地方創生相】
(1)「こどもまんなか社会」を実現するための司令塔機能を担う。関係大臣と協力して、こども・若者の意見表明や社会参画を促進しつつ、その健全育成に取り組む。

(2)「若い世代の所得を増やす」、「社会全体の構造や意識を変える」、「全ての子育て世帯をライフステージに応じて切れ目なく支援する」という3つの基本理念に基づき、関係大臣と協力して、スピード感をもって施策を実行する。2030年代初頭までに、国の予算の倍増を目指す中で、関係大臣と協力して、子育て世代の生活の安定・質の向上のための施策を更に拡充・強化するとともに、

(3)関係大臣と協力して、こどもの貧困対策や児童虐待防止対策等を推進する。登下校時の防犯活動や通学路における交通安全対策を推進する。(以下省略

こども家庭庁が所管する分野では、「若い世代の所得を増やす」、「社会全体の構造や意識を変える」、「全ての子育て世帯をライフステージに応じて切れ目なく支援する」を基本理念としています。

少子化対策や子育て支援の一丁目一番地は「若い世代の所得を増やす」に尽きます。出会いにも交際にも結婚にも子育てにも「お金」が必要です。

ただ、現状の政府の施策は「子育て支援」に偏重しています。少子化対策としては「婚姻数」が重要です。

ただ、結婚前の若い世代の所得を増やしたとしても、婚姻等へ向けた活動で消費するとは限りません。流行りの「推し活」に使われたら、目も当てられないでしょう。だからこそ「子育て支援」ばかりを重視しているのかもしれません。「

後の項目でも「全ての子育て世帯をライフステージに応じて切れ目なく支援する」「子育て世代の生活の安定・質の向上」としています。支援対象は「子育て世帯・世代」です。

少子化対策:具体的な言及無し

実はこども家庭庁を所管する黄川田大臣への指示書では、「少子化」という言葉が使われていません。片山財務相・上野厚生労働相・城内経済財政相への指示書で使われています。

人口減少・少子化を乗り切り、少子化対策を充実させるべく、給付と負担の在り方に関する国民的議論を踏まえ、関係大臣と協力して税と社会保障の一体改革、特に社会保険料負担で苦しむ中低所得者対策としての給付付き税額控除の制度設計に着手する。

少子化対策を充実させる為に給付付き税額控除の制度設計に着手するとしています。が、指示書では具体的な少子化対策に触れていません。

あくまで現時点ではという枕詞が付きますが、高市首相は少子化対策にやや消極的な姿勢が窺えます。