2025年4月に実施された全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)の都道府県・政令指定都市ごとの結果が公表されました。

都道府県・指定都市別データについて(2025年9月30日)
https://www.nier.go.jp/25chousakekkahoukoku/factsheet/prefecture_city.html

今年からは各都道府県・政令市毎、小学校・中学校、教科別の正答率・四分位・標準偏差を記した「ノート」と呼ばれる資料を公表しています。他の都道府県・政令市との順位比較より、各々の都道府県・政令市の状況を冷静に認識して欲しいとの考えがあるのでしょう。

まずは大阪府(大阪市を含む)の小学校です。

https://www.mext.go.jp/content/20250930-mxt_chousa02-000043165-05.pdf

国語や算数の箱ひげ図は全国と同じです。理科はやや苦手なのか、全国より大幅に下にシフトしています。

正答数の層分布では正答数が最も低いD層や次に低いC層の割合が全国平均より大きく、正答率が高いA層やB層の割合は小さくなっています。若干ながら全国平均より学力下位層がやや多く、上位層が少ないと言えるでしょう。

続けて大阪府の中学校です。小学校と比べ、全国平均から大きな差が生じています。

箱ひげ図の国語は第1四分位・第2四分位(中央値)・第3四分位も全国平均を7点程度も下回っています。いずれの学力層も全国平均より差が付いています。

数学は少し異なります。第1四分位や第2四分位は全国と同じ値ですが、第3四分位は大きく下回っています。上位層は全国と同程度ですが、数学の授業を全く理解できていない下位層が多い事を示しています。

次は大阪市の小学校です。

概ね大阪府の小学校と同様の傾向を表しています。目立った差はありません。

最後に大阪市の中学校です。

国語や理科の箱ひげ図は大阪府と同じですが、数学は第2四分位が下がっています。大阪府より学力上位層(A層)が少なく、下位層(C層・D層)が多くなっています。数学の平均点も全国平均を2.3点下回っています。

大阪府でも大阪市でも小学校は全国平均との差は僅かですが、中学校で拡大しています。すなわち、中学校の3年間で全国平均との差が開いていると考えられます。中学校での学習指導に何らかの課題等があると考えられます。

学力向上は難しい

大阪市教委も中学校も試行錯誤を繰り返していますが、なかなか学力向上には繋がっていません。

我が家がお世話になっている中学校でも、学力下位層への対応が課題になっています。小学校での授業を十分に理解できていない状態が進学する生徒が多いのが、中学1年生から躓く生徒が多いと聞きます。特に数学は顕著です。他教科より多くの学習指導員や補助教員は配属されていますが、非常に苦戦しているそうです。

宿題を出すのも簡単ではありません。小学校ではその日の宿題内容を連絡帳に転記し、出来たのを保護者が確認して押印する流れとなっていました。宿題の点検作業の一部を保護者が担っています。

しかし中学校は異なります。課された宿題の有無も、提出の有無も保護者からは見えません。仮に先生がもう少し宿題を増やしたいと考えても、提出して欲しい(=学力が足りていない)生徒に限って提出率が低く、保護者の協力も得られにくいそうです。

学校間の格差も開いています。同じ大阪市内にも関わらず、学内平均点に倍近くの違いがある中学校もあります。進学先の中学校にも違いが生じています。学力上位層の厚みは、公立高校文理学科への進学数・進学率を見ると分かりやすいです。

一般的には数多くのタワマンがある地域の中学校は平均点が高く、工場地帯や社会経済的に恵まれていない地域の中学校は平均点が低い傾向があります。家庭環境による差です。

大阪市が力を入れようとしても、家庭環境の差は如何ともし難いです。もしもこれを突破しようとするのであれば、7時間授業や補習の強制と言った劇的な方法が必要となるでしょう。管理型の私立高校が用いていると言われる手法です。

また、地域の子育て世帯における家庭環境は、中学校にも逆流します。

学力を重視しない家庭や何らかの問題がある家庭が多ければ、「授業よりも部活動を」「不登校を減らす為、競争を緩くして欲しい」「生活指導を重視して欲しい」といった声が強まり、中学校もそうした意見に引きずられます。

そうした風潮が長年に渡って続けば、いつの間にか「校風」と呼ばれます。

大阪市の多くの地域では進学する小中学校を一定の範囲から選択できます(学校選択制)。私も数校を見学しました。学力テストの結果と学習環境・校風には一定の相関性がありました。ぜひとも様々な学校を見学して下さい。受験の有無とは関係なく、私立中学校の見学もお勧めします。