悲しい事件につき、解決金の支払い・刑事告訴の取下げ・適切な保育の実施等を内容とする和解が成立しました。
大阪府高槻市の認可外保育所「ひよこ共同保育所」で平成23年、当時1歳3カ月の須川駿一郎ちゃんがうつぶせ寝のまま放置され窒息死したとして、両親が所長と保育士、市に計約6千万円の損害賠償を求めた訴訟は19日、所長と保育士が解決金2500万円を両親に支払うなどの内容で、大阪地裁(三木素子裁判長)で和解が成立した。
両親側の代理人弁護士によると、和解内容には、大阪府警に受理された所長らの刑事告訴を両親が取り下げるほか、保育所が1歳未満の乳児をあおむけに寝かせ、1歳以上の乳児も適切な寝かせ方にすることなども盛り込まれた。市との間では両親側が請求を放棄することで合意した。
訴状によると、駿一郎ちゃんは23年4月、保育所で昼寝中、うつぶせ寝のまま心肺停止状態で見つかり、病院で死亡が確認された。両親側は訴訟で、保育所は安全に保育する注意義務に違反し、市も是正指導しなかったと主張していた。http://www.sankei.com/west/news/150319/wst1503190075-n1.html
これまでの裁判の流れは、原告を支援している「ちゅーりっぷの会」のフェイスブックに詳細に記されています。
https://www.facebook.com/ChurippunoKai
事故の検証を求めていたご両親にとり、和解の受諾は苦渋の決断だったとうかがえます。
また、高槻市との和解内容は高槻市議会での質疑・関連資料に掲載されています。
認可外保育施設で発生した入所児童死亡事故にかかる損害賠償請求事件の和解について
1.訴訟の概要
事案の概要 平成23年4月、市内認可外保育施設において、午睡中に、入所児童の呼吸が停止しているのを保育士が発見し、救急搬送されたが死亡。
原告 当該児童の両親
被告 当該施設の施設長及び保育士1名(保育中の注意義務違反など)
高槻市(施設に対する指導監督責任違反など)
提訴日 平成24年7月23日(大阪地方裁判所)
2.和解条項案(本市に係る部分)
(1)被告高槻市は、当該児童が死亡したことについて衷心から哀悼の意を表明するとともに、今後とも安全かつ充実した保育の実現に努める。
(2)原告らは、被告高槻市に対する請求をいずれも放棄する。
(3)原告らは、本件に関し、被告高槻市に何ら法的責任がないことを認め、原告らと被告高槻市との間には、本件に関し、何らの債権債務が存在しないことを相互に確認する。
(4)訴訟費用は各自の負担とする。
3.和解を受諾する理由
(1)原告らが、本件に関し、本市に法的責任がないことを認めていること。
(2)原告らと被告施設長らとの間においても和解が成立する見込であること。http://kitaoka.seesaa.net/article/415907073.html(議会での質疑等はリンク先に記載あり)
認可外保育施設での死亡事故を主たる内容とする民事訴訟に共通するのは、(1)立証が困難(立証責任は原則として原告)、(2)行政の責任追及が困難(指導・監督義務の水準・裁量等)という点です。
また、それ以上に重要なのが、事故の原因究明や再発防止策等につき、行政が積極的に関与する意思がないという点です。
たとえば認可保育所で同様の事故が発生した場合、行政は児童福祉法・社会福祉法等に基づく特別監査を行う場合があります。
関西で積極的に行っているのは京都市です。
「せいしん幼児園」に対する特別監査実施結果について(プールで4歳児が溺れて死亡)
「春日野園」に対する特別監査実施結果について(職員が園児を投げ飛ばし、1名が重傷)
リンク先には詳細な調査報告書も掲載されています。
万が一にも認可外保育施設等で同様の事故が発生した場合にも同等の調査等が行われれば、事故原因の解明や再発防止に繋がるでしょう。
同じ保育施設の事故でありながらも、原因究明・補償(認可保育所等の管理下の事故では日本スポーツ振興センターから災害共済給付が行われます)等に著しい差が生じるケースもあります。
言い難い理不尽さを感じます。
認可外保育施設を利用される際は、認可外保育施設の探し方・選び方や“よい保育施設の選び方 十か条(厚生労働省)を確認の上、必ず施設を見学してからご利用下さい。
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(4/1追記)
亡くなられた児童のご両親が依頼したの弁護士法人FAS淀屋橋総合法律事務所だそうです。
ニュースファイルによると、同事務所の斎藤ともよ・繁松祐行弁護士が担当しました。