国立教育政策研究所が発表した「令和6年度 経年変化分析調査・保護者に対する調査 調査結果資料」によると、中3数学以外の全教科で平均スコアが大きく下落していると明らかになりました。極めて深刻な事態です。

 文部科学省は全国学力テストの結果とは別に、難易度が同じ問題で小学6年と中学3年の学力の変化を調べた2024年度の「経年変化分析調査」の結果も公表した。

 中3数学を除く全ての科目で平均スコアの下落がみられ、同省は「新型コロナ禍の長期休校などが、その後の学力に影響した可能性がある」としている。

 小6は国語と算数、中3は国語、数学、英語で、13年度以降4回目。24年度は小学校1200校と中学校1500校が対象で、対象校の半数でコンピューター使用型(CBT)を導入したが、同じ出題でも誤答率や無解答率が上がった問題があり、同省は筆記形式校のみでスコアを分析した。表示の仕方などが影響した可能性があるという。

 分析によると、小6は国語と算数、中3は国語と英語で、基準点を500点として算出するスコアの平均が基準年(英語は21年度、その他は16年度)より下落し、いずれも500点を下回った。特に中3英語の下落が目立った。中3数学は前回より8点下がって503点だったが、前々回と比べると大きな差はなかった。

 調査を受けた小6、中3は新型コロナ禍の長期休校などを経験しており、併せて行った保護者への質問調査では、スマートフォン使用やテレビゲームで遊ぶ時間が前回より長くなり、校外での勉強時間は短くなっていた。文科省は「対面授業の減少などが影響した可能性がある」と分析している。 

https://news.yahoo.co.jp/articles/8230ff5c4121491534516d45075573c10fd12a1f

関連する資料はこちらです。

https://www.nier.go.jp/24chousakekkahoukoku/kannren_chousa/pdf/24keinen_summary.pdf

同研究所の担当者は下記の様に分析しています。
・学校外での勉強時間が長いほどスコアが高い
・テレビゲームの使用時間が長いほどスコアが低い
・スマートフォンの使用時間が一定程度を超えるとスコアは低下
・保護者と勉強の話をする子供の方が勉強時間が長い
・学校生活が楽しければ良い成績を取ることにはこだわらない保護者の子供の方が勉強時間が短い
・授業が「よく分かる」と回答している児童生徒の方が勉強時間が長く、テレビゲーム、SNS・動画等の時間が短い

分析内容は妥当です。学校外での勉強時間が長いとスコアが高く、テレビゲームやスマホの使用時間が長いとスコアが下がります。

社会経済的背景(SES)別の過ごし方も興味深いです。

SESの代替指数である家庭での所蔵冊数が少ない家庭の小学6年生は1日あたりのゲーム及びスマホの使用時間は3時間21分、中学3年生は3時間59分にも達しています。帰宅後の時間はスマホ等に費やされています。

保護者目線でも学力が低下した理由はハッキリしています。「スマホ利用の長時間化」です。

以前に中学校の朝礼にて、校長先生から「スマホを使い過ぎる傾向が強まっています。1日あたり3時間以内にしましょう。」との話があったと子供から聞きました。

咄嗟に「1日3時間!? そんなにスマホで遊んでいたら、他の事は何も出来ないよ。」と突っ込まざるを得ませんでした。

どうやらチャレンジテスト等のアンケートで1日当たりのスマホ使用時間を「3時間以上」や「4時間以上」と答えた生徒が非常に多く、学校側として対応に迫られた様子です。

それにしても「3時間」ですら長すぎます。自宅で学習等を行う時間は取れません。3時間以上もスマホで遊んでいたら、自宅で学習する時間は殆ど取れません。宿題を済ませる事すら難しいでしょう。

スマホの長時間利用は様々な弊害を引き起こします。深夜にLINE・通話やゲーム・ブラウジング等にかまけていたら、十分な睡眠時間も確保できないでしょう。日中の授業は頭に入らず、居眠りしがちです。

一方、スマホの長時間利用や関連するトラブルに対して、学校は想像以上に及び腰です。

学校は様々な問題や弊害を把握していますが、「学校外の事だから・・・・」として向き合おうとしません。働き方改革等による業務時間を削減しようとする圧力も強く、学校外でのスマホ問題には触れたくないのが本音かもしれません。

しかしながら、もはや無視できない段階に至っています。以前に子供がお世話になっている中学校で生徒同士の深刻なSNSトラブルが発生し、外部の公的機関が介入する事態が生じたと聞きました。

その後は全校集会や学年集会の度に学校長や生徒指導主事が「スマホは~」と注意喚起や説教をしたそうです。され、あまりに同じ内容を言い続けられる事に子供が辟易していました。

学校の対応が鈍いのは、文部科学省の姿勢もあるでしょう。

成績低下の原因として真っ正面から「スマホ」だと指摘していません。担当者は「コロナによる長期休校や英会話の制限」や「成績向上を求めない保護者が増えた」等といった、本筋とは思えない理由を述べています。国立教育政策研究所の分析内容と噛み合っていません。

家庭での対応はマチマチです。スマホの利用に何ら制限を設けない家庭もあれば、時間や利用場所を約束する家庭もあります。中には子供に持たせない家庭もあります。

ただ、子供と約束したりペアレンタルコントロール等を設定しても、子供は破りがちです。方法は不明ですが、我が家もペアレンタルコントロールがいつの間にか解除されてしまい、最終的には没収しました。

文部科学省や学校が本気で児童生徒の学力向上に注力するのであれば、「スマホの利用制限」に踏み込まざるを得ません。家庭と協力しながら利用時間・利用コンテンツ等を見直す方法もあれば、オーストラリアの様に一定年齢以下はSNS等の利用を禁止する措置も考えられます。

学校等が頼りにならなければ、学力向上を望む家庭は学校外での教育を求めます。端的には塾通いです。学校外での時間の過ごし方により、学力には大きな差が出ます。上位層は従来通りの学力をキープできるでしょうが、下位層は学力低下がますます進みます。二極化が甚だしくなるのも当然です。

子供を公立中学校へ3年間通わせ、学習面で中学校があまり頼りにならないと実感させられました。学力向上に対する意識が低いのに加え、生徒指導(特にスマホトラブル)等が忙しくて手が回っていませんでした。高校入試は塾通いが前提となるのも当然です。

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