2025年5月26日に大阪市令和7年度第1回こども・子育て支援会議が開催され、「大阪市保育所等利用待機児童の状況について」が主要な議題の一つとして議論されました。

大阪市保育所等利用待機児童の状況について

大阪市は、令和7年4月1日時点で、国の定義に基づく待機児童数が初めて「ゼロ」になったと報告しました。これは、国が待機児童調査を開始した1995年(平成7年)以降、初めてのことです。 吉村市長時代に「待機児童解消特別チーム」を設置して以来、保育所の整備や保育士の確保に重点的に取り組んできた成果とされています。特に、令和6年には横山市長のもと、予算を前年の2倍に増額し、1,778人分の入所枠を確保するなど集中的な取り組みが行われました。令和6年9月からの0~2歳児の第2子保育園無償化により保育ニーズは増加したものの、枠確保の効果で待機児童ゼロが実現しました。

「待機児童」と「利用保留児童」の定義と実情
• 新規利用申込数(令和7年4月1日):14,840人
• 利用決定児童数:11,900人
• 転所希望者で転所できなかったが在籍園を継続利用する者:412人
• 利用保留児童数(申し込んだがどの保育施設も利用できなかった者):2,528人。これらは「隠れ待機児童」とも呼ばれます。
◦ この2,528人の「利用保留児童」は、国の定義により以下のいずれかに該当するため、「待機児童」には含まれません。
▪ 一時預かりや預かり保育が充実した幼稚園を利用した。
▪ 国が基準を定めた企業主導型保育事業(認可外施設)を利用した。
▪ 保育所に入れなかったため育児休業を延長した(育休中の場合、保育所利用不可証明が育児休業給付金延長の条件となるため、実際には育児休業給付金延長目的で申請している場合が圧倒的に多い)。
▪ 求職活動を休止している。
▪ 特定の保育所のみを希望し、区役所が斡旋した他の空き枠を断った。

会議での議論(待機児童関連)
• 「隠れ待機児童」への認識:大阪市としては、国の統計上の待機児童はゼロであるものの、申し込んでも入れなかった「利用保留児童」が前年から微増しており、待機児童を含む「利用保留児童」の解消を目指し、引き続き入所枠の拡大に努める方針です。佐藤こども青少年局長は、市長も統計上のゼロだけでなく利用保留児童への対応を重視していると補足しました。
• 地域差と年齢差:保育ニーズには地域差があり、特に市内中心部や1歳児の入所が厳しい状況です。例えば、旭区の1歳児は申し込みが決定数の約1.8倍ですが、大正区ではほとんどの申し込みが決定されています。公立・民間問わず、区を超えた利用調整も行われていますが、通勤や兄弟の関係で遠方の園には通えないといった事情から、「特定保育所希望」となるケースも多いとのことです。
• 「特定保育所希望等」の課題:この分類の分析は難しく、空き枠が十分にある区と、そもそも空き枠が足りない区の両方で発生しています。また、第一希望しか書かない利用者や、複数の希望を書いても入れない利用者など、事情が多様であるため、今後の詳細な分析と対策検討が必要と認識されています。
• 入所可能月齢の問題:黒田委員からは、大阪市が原則生後6か月からの認可保育園入所としている点(堺市は生後60日頃からなど、他都市より厳しい)が指摘され、特に10月以降に生まれたこどもを持つ親は不利であり、自転車に乗せられない乳児を遠い保育所に通わせる切実な問題から「特定保育所希望」にならざるを得ない実態があるとの意見が出ました。事務局は、他都市のような早期受け入れは現状困難だが、今後の検討課題であると応じました。
• 小規模保育事業の課題と支援:地域によっては小規模保育園の0歳児入所が少なく、経営難に直面する園もあるという声が上がりました。保護者は0歳から5歳まで通える園や、3歳以降の確実に連携先を確保できる園を希望する傾向が強いためです。大阪市では、2歳児卒園時の受け入れ枠確保(受け入れ連携)を推進しており、昨年度からは「0歳児の途中入所対策事業」として、年度当初に空き枠がある施設に人件費を補助し、年度途中の0歳児受け入れを促進することで、施設の運営安定と利用者メリットの両立を図っています。
• 保育人材の確保方策:ト田委員からは、保育士養成校への入学者が減少している現状を踏まえ、保育士確保策についての質問がありました。大阪市は以下の対策に取り組んでいます。
◦ 定着支援:勤続年数に応じた一時金(1年目から25年目までの節目で年間20万円)を支給。
◦ 労働環境改善:保育士を多めに配置することで完全週休2日を実現しやすくするための補助。
◦ 国庫補助活用:宿舎借り上げ支援(上限月66,000円)など。
◦ 予算増額:令和6年度・7年度の集中取り組み期間において、100億円規模の保育人材確保予算を確保。
◦ 連携とアピール:養成校との連携を深め、中学生・高校生への保育士の仕事の魅力発信にも取り組んでいます。

佐藤こども青少年局長は、児童数自体は減少傾向にあるものの、共働き世帯の増加や雇用回復により保育の申し込み利用数は増加しており、この傾向は今後も続くと見通し、「利用保留児童」も含めたきめ細やかな対応が必要であると強調しました。

令和7年度 第1回こども・子育て支援会議 会議録より生成AIを利用して要約

大阪市は「待機児童ゼロ」を強くアピールしていますが、会議では申し込んだが入所できなかった「利用保留児童」の増加が重要視されています。

待機児童と利用保留児童の違いの一つに、「育休中」が挙げられます。前者には含まれませんが、後者には含まれます。「育休中」の内訳につき、会議では「育児休業給付金の延長が圧倒的に多い」と言及されました。

本市のほうでは、保育施設申し込みの欄に、いわゆる後順位、決定が後順位になってもいいですよというチェック欄を設けています。こういった方は実は非常に多いんです。細かい数字のほうまでは取ってないんですけども、7割、8割、ひょっとしたらもっと高いかもしれないんですけども、今年度で言いますと育休中が767人おるんですけども、ほとんどの方は育児休業給付金の延長をしたい方っていうのが、実は圧倒的に多いです。で、委員がおっしゃられたように、仕方なく育児休業延長したという方のほうが数としては圧倒的に少なくなっております。

入所できずにやむを得ず育児休業を延長したというよりも、当初から育児休業を延長する予定で申し込んだ方が多いと指摘しています。これは意外な発見でした。もしもチェック欄がなければ、入所調整事務に更なる負担が掛かっていたでしょう。

保育ニーズの地域差についても指摘がありました。当ウェブサイトで何度も取り上げている通り、「旭区の1歳児入所」は会議でも問題視されています。ただ、旭区は1歳児以外の入所も困難であり、こうした部分も指摘されるべきでした。

【2025保育所等一斉入所申込分析】(5)旭区/市内ワーストの入所倍率1.39倍 0歳児0.97倍、1歳児1.96倍、3歳児1.97倍

「特定保育所希望等」については意見が分かれました。大阪市の担当者は「空き枠の不足」や「第1希望しか書かない利用者」と釈明する一方、出席した委員は「原則として生後6カ月からの入所」や「遠い保育所等へ通わせる事への敬遠」と指摘しました。

第1希望しか書かないのには理由があります。既にきょうだいが保育所等を利用している場合、第2希望以下に他の保育所等を記入するのは避けたいとするものです。

仮にきょうだいと異なる保育所等へ入所内定すると、極めて煩雑な2箇所保育が始まってしまいます。子育て家庭には極めて思い負担か掛かります。であれば、4月から育児休業を切り上げて復職するのではなく、きょうだいと同じ保育所等へ入所できるまで育児休業を利用(延長も含む)すると考える方は一定数おられるでしょう。

「原則として生後6カ月からの入所」は、0歳児年度途中入所枠や1歳児入所枠の拡大で対応すべき点でしょう。委員は「堺市さんなんかでは、生後60日ぐらいから預かりもしていただける」と指摘しましたが、育児休業を利用出来る限りではより早い月齢での保育所等の利用には慎重であって欲しいです。

遠い保育所等へ通わせる事での負担感も重いです。通勤経路と反対側の保育所等に通わせるとなると、通勤時間が実質的に伸びてしまいます。たとえ15分程度であっても、忙しい子育て世帯には受け入れがたい事もあります。

「特定保育所希望等」については、より掘り下げた調査が必要でしょう。でなければ、大阪市が効果的な対策を行うのが難しいです。

これに関連して、大阪市には是非改善して欲しい事があります。「0歳児入所枠と1歳児入所枠の不均衡」です。0歳児入所枠を多く設定しながら、1歳児入所枠は殆どない保育所等があります。第2子が早生まれだった場合、ほぼ自動的に2箇所保育となってしまいます。

対策は可能です。0歳児入所枠を減らします。0歳児クラスから1歳児クラスへ進級する児童を減らす事により、1歳児入所枠を増やせます。一斉入所における0歳児入所枠は過剰感があるので、実現は困難ではありません。

地域型保育事業の経営問題も取り上げられました。

小規模のほうが多分育休延長のあおりを受けて、児童数が少ないということで、常に小規模保育園の前には0歳児募集ということがありまして、経営難であるという声も届くんですけども

選んでいただけない理由としましては、何点かあるんですけど、当然0歳から5歳まで同じ園に通える園を希望される保護者様が、圧倒的に多いということですね。あとはやっぱり、3歳になる時に再度いわゆる保活しなければならない時に、行き先を確実に確保できていればいいんですけども、現状大阪市で言いますと、いわゆる受け入れ連携と言うんですけども、小規模園と3歳以降もやっている園のほうは、いわゆる連携していただいて、確実にその園に行けるよという受け入れ連携が完全に確保できておりませんので、例えば2歳で卒園する際に、ここの園に行けるよという枠確保を、大阪市のほうでも確実に出来るように進めております。

問題点は保護者目線と一致しています。地域型保育事業は原則として満3歳児を迎える年度の年度末までの保育を行います。一般的な保育所に喩えると、2歳児クラスまでしかありません。

3歳児クラス以降は他の保育所等へ入所する必要がありますが、再び保育所等を探す手間暇や、そして確実に3歳児クラスへ入所できる保証はありません(連携施設等を除く)。殆どの保護者が小学校入学までの6年保育を行う保育所等を希望するのは自然です。

対策の一つとして、大阪市は「年度途中での0歳児入所」を打ち出しています。

実際には年度の途中でも利用の申し込みをされたいという方も一定数おられます。そういった方々が年度途中であっても入れる、入りやすい、一方で施設側からしますと、運営面で年度当初から0歳児がうまっているほうが、やはり運営的にはやっていきやすいと。そういったところから年度当初に0歳児の空き枠があっても、一定の相当する人件費の補助を施設にすることで、年度途中の0歳児の入所がしやすくなるというような、施設にとっても、年度途中の利用を希望する方にとってもメリットがあるような、そういう制度に取り組んでおります。結果、小規模の施設についても、年度末の利用状況で申しあげますと、かなりの施設で定員がほぼ100%充足している施設もあるということで、そういった効果も出ているのではないかと思っておりまして。

大阪市の担当者は「年度末は定員がほぼ100%充足している施設もある」と強調していますが、「年度途中で入所できるのは地域型保育事業しか無かった」という側面も強いです。いわば消極的な選択です。

殆どの保護者が希望しているのは「小学校入学前までの6年保育を行う保育所等」です。小規模保育を利用していた知人は子供が卒園した後の入所先が決まらず、やむを得ず幼稚園へ入園しました。勤務先は退職せざるを得ませんでした。極めて嘆かわしい事態です。

日本全体では急激な少子化が進んでいますが、大阪市での少子化は緩やかに進んでいます(但し地域差は大きい)。その反面、保育所等への入所希望者は現時点で微増しています。第2子保育料無償化(今後は第1子も検討)に加え、万博開催等による雇用拡大が後押ししています。

とは言え、数年度には保育需要は減少に転じるでしょう。少子化は止まらず、雇用拡大も続くわけではありません。

子育て世帯として強く望むのは「現に保育所等が著しく不足している地域、及び6年保育を行う保育所等の新設」です。特に旭区は子育て世帯からの不満が爆発しかねない状況です。大阪市中心部での新設より優先すべきです。

少子化による影響をより強く受けるのは地域型保育事業です。6年保育を行う保育所等は充足し続けるでしょうが、地域型保育事業の入所希望者は激減します。年度途中でも6年保育を行う保育所等の0歳児クラスへ入所しやすくなれば、地域型保育事業への年度途中入所者も減ります。

地域型保育事業は連携施設の設定を強化する、もしくは6年保育を行う保育所等への移行を促す必要があるでしょう。さもなくば、子育て世帯の選択から外れてしまいます。