ヤフーニュースにて「運動会で「うちの子だけ違うシャツ」 “卒対”不参加で仲間外れ?保育園トラブルが法廷へ」という記事が注目を集めています。
一連の経緯を仲間外れにされた原告がnoteに投稿しています。
どこかの私立保育園でのトラブルと思いきや、現場は東京都墨田区の公立保育所でした。都会の真っ只中、しかも多種多様な家庭が集う公立保育所で発生したのが端的に驚きです。しばしば批判される「田舎の同調圧力」ではありませんでした。
事前相談で保育園は提案拒否、狡猾に決行か
原告側主張を読む限り、卒園対策委員会を主導した一部保護者は極めて悪質かつ狡猾でした。保育園へ事前に相談しながらも拒絶されたお揃いTシャツ着用に代わり、お揃いのアイロンプリントシールを貼ったシャツを着用しました。
保育園も運動会当日に不意打ちされました。お揃いのプリントTシャツの着用を拒否し、着替えを求めるのは難しかったかもしれません。
でも、プリントTシャツを着用していない一部の園児が事実上阻害されていた光景は認識できた筈です。毅然と「これはいじめです。当該プリントTシャツの着用はお断りします。」と拒絶するべきでした。
保育所等の施設長は人権に関する研修等を受けている筈です。ましてや公立保育所(公設置民営を除く)の施設長は公務員です。感覚が鈍すぎます。
同種事案の発生を防ぐべく、後日、墨田区役所は園への持ち込みに関する留意事項を定めた通知を発しました。
https://x.com/sotsutaisabetsu/status/1778235803833176116
「卒対」はよくある組織
我が家がお世話になっている保育園にも「卒園対策委員会(卒対)」と類似した組織があります。位置づけは保護者会の一組織です。年長児クラスの保護者で構成されています。同クラスの保護者から別途集めた卒園対策費を元に、卒園へ向けたイベントや記念品の購入を検討・実行しています。
もしも卒対から「卒園対策費から運動会でお揃いのTシャツを揃えたい。」との提案があった場合を想定しました。卒園対策委員や卒園児の保護者の了承が得られていれば、恐らくは保護者会役員会(役員会)は承諾するでしょう。保育園も同様です。
苦慮するのは、卒園対策委員会に加わっていない家庭の存在です。全員参加が原則であっても、中には様々な事情によって加入していない家庭もあるでしょう。そうして家庭の存在は役員会でも認識されています(本投稿では強制加入性には触れません)。
卒対からの予算申請書には、Tシャツの発注先・単価・数量等を記した見積書が添付されている筈です。在籍園児数と発注予定数量が食い違っていれば役員会での話し合いにて誰かが気づき、卒対に釈明を求めます。そこで「卒対に加入していないAさんを除いた数量です。」との回答があったら、役員会は紛糾するでしょう。
「加入していないAさん以外の家庭は了承しているのだから、役員会も承諾すべき。」という意見もあれば、「運動会にてAさん以外の園児がお揃いのTシャツを着用し、Aさんだけが違うシャツを着ているのは異様だ。」と言う意見も、更には「保護者会や卒対は全ての園児に同様に対応すべきであり、加入の有無で異なる取扱いを行うべきでは無い。」との意見も出るでしょう。
どう対応するのが望ましいのでしょうか。
PTA協議会「加入未加入で差別しない」「有志の会活動は学校外で」
先例となるのは、同じく保護者によって組織されているPTAでの取扱いです。一般社団法人全国PTA連絡協議会のウェブサイトに掲載されている相談事例集から引用します。
Q.
卒業式で記念品を配る際、記念品を希望する未加入の方から実費を徴収したいのですが?A.
記念品を贈る場合に、未加入の保護者から実費を徴収しているPTAも多いと思います。しかし、保護者が実費を支払わない選択をする場合もあるため、任意での実費徴収自体が平等とは言えない区別のある対応となります。
PTAから子どもたちに、卒業や入学の記念品を贈るのは、PTAという任意団体としてお祝いの気持ちを贈るものです。記念品は、各会員が支払ったPTA会費の還元ではありません。加入、未加入の区別なく、全ての子どもたちに贈ることが必要です。
PTAから全ての子どもに平等に配付することを、会員が受け入れられない状況が続く場合は、会員への丁寧な説明をするとともに記念品の制度自体を見直すことも必要です。
2024年5月5日_501
https://zen-p.net/faq/pta1.html
「加入、未加入の区別なく、全ての子どもたちに贈ることが必要です。」がポイントです。保育園の保護者会や卒対でも同様の対応が求められるでしょう。
では保護者会や卒対を回避し、完全な任意組織(いわゆる「有志の会」)が集めた実費にてTシャツ等の記念品を贈呈する方法は受け入れられるのでしょうか。同じ相談事例が掲載されています。
Q.
PTAとは別に、有志の会を立ち上げて、保護者から実費を集めて子どもたちに卒業記念品を配ることを考えています。注意すべき点はありますか?A.
記念品制度を維持する一つの方法として、有志の会が保護者から実費を集めて共同購入のような形もあります。
当協議会では、有志の会で共同購入したものを、全ての子どもたちの前で購入者のみに配布することは、「全ての子どもたちへの平等な対応」「子どもにとってマイナスの記憶」などの側面から適切ではないと考えます。
有志の会で共同購入したものを配布する場合には、学校の行事内やPTA活動ではなく、学校と関わりのない形の有志の方だけの集まりで配布する配慮や、郵送利用などでの対応が望ましいと考えます。
「有志の会で共同購入したものを、全ての子どもたちの前で購入者のみに配布することは、「全ての子どもたちへの平等な対応」「子どもにとってマイナスの記憶」などの側面から適切ではない」としています。
Tシャツは事前に配布する物ですが、運動会にて着用する事によって購入の有無が判明してしまいます。全ての子供への平等な対応と言えず、子供にとってマイナスの記憶となります。
個人判断でも事実上「いじめ」に
更に別の手段として、一部(実態はほぼ全て)の保護者が相談した上で個別に同じTシャツを購入し、運動会で「たまたま」同じTシャツを着用する方法も考えられます。保護者会や「有志の会」等を経由しておらず、あくまで「個人の判断」として押し通します。
しかしながら、多くの保護者が話し合った上で同じシャツを購入したのが実態です。結果として話し合いに加わらなかった一部の園児や保護者のみが異なるシャツを着用する事により、事実上の「いじめ」が生じます。保育園でのいじめが許されないのは常識です。
一部の気の合う保護者のみでイベント等を行いたいのであれば、保育園を通さずに完全にプライベートの時間と空間を利用すべきでしょう。