災害時には学校・保育所等・自治体の担当部局の底力が問われます。適切な対応が出来たか出来なかったか、保護者は冷静に見ています。
2024年台風10号で大きく株を下げたのは福岡市教育委員会でした。前日に「翌日は給食後に下校する」としながら、当日早朝に暴風警報が発表されたのを受け、午前7時45分頃に各校へ「今日の授業は中止とし、速やかに下校させる」との連絡を行いました。
暴風雨の中、何の為に学校へ登校したのでしょうか。児童生徒や保護者が憤慨するのは当然です。一連の経緯を時系列に並べました。
日時 | 出来事 |
8月28日 | 福岡市教委は「29日は朝から普通に登校し、給食後に一斉下校する」「30日は臨時休校とする」と各校へ通知した。 |
8月29日6時29分 | 福岡市に暴風警報が発表された。 |
7時頃 | 福岡市教委が「児童生徒を一旦登校させた後、安全が確保された学校から速やかに下校」と方針転換した。 |
7時5分 | とある小学校の保護者へ学校から「予定通り13時下校、明日は臨時休校とする」とのメールが届いた。 |
7時45分頃 | 福岡市教委が各校へ「暴風警報が福岡市域に発令され、避難指示が早まる可能性も高くなったことから、給食を待たずに、安全を確保できた学校から速やかに下校とします。放課後児童クラブは開室しますが、安全確保のため保護者のお迎えをお願いします」 とメール連絡した。 |
7時半~8時頃 | 小中学生等が自宅を出発し、学校へ登校し始める。 |
9時頃 | 多くの学校から保護者へ「台風10号による荒天の為、速やかに下校させる」と連絡があった。 |
9時~ | 多くの保護者が続々と迎えに来た。仕事を抜け出して来た保護者も少なくなかった。 |
20時半頃 | 福岡市教委が「29日午前6時29分に暴風警報が発令されるなど、想定を超える状況の悪化が見込まれたことを受け、登校した児童生徒の安全を確保しつつ、速やかな下校の対応を行うことが適切と判断いたしましたが、結果として、お子様に雨風の中、登下校させてしまったこと、また、保護者の皆様にも、急な対応やご心配をおかけしたことについて、深くお詫び申し上げます。」とのコメントを発表した。 |
未だにこうした旧態依然とする対応を行っている市教委、しかも福岡市という政令市の教育委員会が行ったとは唖然としました。大阪市で10年ほど前に似た様なトラブルが発生した記憶がありますが、最近はこうした問題が起きていません。
暴風警報でも臨時休業とならない福岡市立小中学校
福岡市の対応には数多くの問題があります。最大の問題は「どうして暴風警報によって自動的に休業とならないのか」という点です。
大阪市や殆どの自治体では、暴風警報や特別警報が発表されると自動的に臨時休業となります。昨晩は子供が「明日は暴風警報になってほしい!学校が休みになる!」とはしゃいでいました(私は冷静に「明日は強い風は吹かないよ、せいぜい強い雨が降るぐらい。」と返しました)。
とある福岡市立小学校が「防災気象情報による学校の対応について」との文書を公表しています。
http://www.fuku-c.ed.jp/schoolhp/fukusho/img/ooamenokijun.pdf
「暴風警報」という文言がどこにも見当たりません。福岡市は暴風が怖くないのでしょうか。
一方で一部の福岡市立高校はこれと異なる基準を設定しています。市立福翔高等学校は「台風接近時に暴風警報が発表されたら自宅待機とする」としています。
http://www.fuku-c.ed.jp/schoolhp/fukusho/00-3-akutennko.html
限られた地域から登校する小中学校と広範囲から生徒が集まる高校という違いがあるにしろ、暴風警報による危険性は小中学生の方が大きいでしょう。小中学校と高校で逆転現象が生じています。
もう一つの問題は「7時頃に方針を転換し、7時45分頃に各校へメールした」というタイミングの悪さです。
一般的な子育て家庭は午前7時~8時頃に保護者が出勤する、そして小中学生は8時前~8時頃に自宅を出発しているでしょう。7時45分に各校へメールをしても、それが保護者へ伝わるには1~2時間程度の時間が必要です。
福岡市教委は「児童生徒を登校させた後に下校させる」という考えがありました。しかし、大半の子育て世帯にとっては「全く理解できない」方針です。暴風雨の中、どうして学校へ行かせる必要があったのでしょうか。登校せずに自宅待機→臨時休業とするのが遙かに合理的です。
市教委からのメールがもう1~2時間ほど早く学校へ伝わっていれば、むしろ市教委から各保護者へ7時頃に直接連絡が行えれば、こうした混乱は回避できたかもしれません。
実は福岡市教委は昨年7月にもやらかしていました。福岡県内で大雨特別警報が発表される地域もある中、午前6時50分頃に一斉休校を決定しました。当然ながら、一部の児童生徒には知らせが間に合わず、登校してしまいました。
休校について、各校で判断する方針だった福岡市も、市内で避難所の開設が相次ぐなどしたため、午前6時50分頃、一斉休校を決定。通学時間近くの方針転換に加えて、一部の学校ではメールの送信トラブルも重なったため、登校した子どももいたという。
https://www.yomiuri.co.jp/local/kyushu/news/20230809-OYTNT50053/
何というのでしょうか。「間が悪過ぎる」と表せば良いのでしょうか。「午前8時までに連絡すれば大丈夫」と思っているなら大間違いです。
台風10号の襲来や暴風警報の発表は誰もが予期できた事態でした。にも関わらず、福岡市教委が考えられない程に杜撰な対応に終始しました。
予期できる事態に適切な対応ができなければ、地震等といった予期できない災害に適切な対応ができる訳がありません。非常に心配です。
今回のケースでは「暴風警報が発表されたら臨時休業とする」と示しておくだけで済みました。難しくない話です。