大阪市から「学校選択制にかかる検証報告書」が公開されました。

学校選択制にかかる検証報告書について
https://www.city.osaka.lg.jp/kyoiku/page/0000595393.html

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意外と知られていませんが、大阪市は通学する小中学校を一定の範囲で選択できる制度を導入しています。本報告書は保護者・地域団体関係者・学校へのアンケート結果を基に、教育学や統計調査の専門家の意見も踏まえて作成された物です。

記載されている内容は肌感覚と一致する物が殆どです。その上で、

「隣接校の方が近い」

周囲で学校選択制を利用している方から最も多く聞いたのは、「隣接する学校の方が近い」という理由でした。隣接する学区の学校へ進学する子もいれば、反対に隣接している学区から(我が家の子供がお世話になっている)学校へ進学する子もいました。

保護者としては「通学距離や交通障害」は非常に気を遣う要素です。遠いよりも近い方が良いのは当然です。

実は大阪市の小学区の学区は極めて歪な形をしています。例えば北区です。

https://www.city.osaka.lg.jp/kita/page/0000490435.html

更に小学校が学区の中心部にあるとは限りません。学区の端にある学校も少なくありません。上記地図では概ね「文」の場所に小学校があります。

自宅の目の前に隣接校の小学校があるのに、指定されるのは遠い学区内の小学校というケースも多々起こっています。

幼稚園や保育所等には「学区」がなかった事もあり、小学生やその保護者には「学区」は見えません。

むしろ学区を強く意識しているのは、学区単位で活動していた地域関係者(連合町会等)でしょう。今回のアンケートでも保護者や学校と比べ、地域関係者から否定的な意見が数多く寄せられています。

気持ちは理解できます。小学生の通学先と学区が食い違うケースが増え、諸活動に支障を来しています。

私も当惑した事がありました。近所で小学生が使っている上履きを拾った事があります。記名もありました。でも、(同年代の筈の)子供に訊いても「知らない」との返事がありました。小学校に電話で訊ねても「うーん、その子はうちではありませんね」という返事でした。

ひょっとすると隣接校に通っているのかもしれないと思って電話をしたところ、「うちの児童です。申し訳ありません。」という返事がありました。近くへ行く所用ついでに上履きを学校まで届けました。

下校中の小学生がいじめをしている様な場面も見かけました。でも、どの子の顔もお世話になっている小学校で見かけたことがありません(他学年でも1人ぐらいは分かる)。どの小学校か分からず、そのまま見過ごしてしまいました。

また、学校からは地域活動に関する様々なプリントが配布されています。盆踊り・餅つき大会・スポーツ大会が典型例です。しかし、学区外の小学校へ通っていると、居住学区からのプリントは配布されません。

学区外へ通っていても学区内の地域活動に参加できますが、何となく参加しにくいと聞きます。知っている友達が殆どおらず、居心地が悪いそうです。

学校選択制を利用して学区外の学校へ進学する事は、事実上、学区外の地域活動等に組み込まれる事を意味します。地域活動等をどれだけ重視するかは各家庭の判断によるでしょう。

「風評」

報告書では「区や学校が提供する情報ではなく、風評等による学校の選択がなされていないか」という項目に多くのページが割かれています。

上記報告では「〇〇学校はガラが悪い。荒れている。」「〇〇学校は学力レベルが低い」を風評、反対に「〇〇学校の特別支援学級は先生が熱心」「〇〇学校は〇〇の部活動に実績がある」を(信頼できる)情報としています。

しかし、保護者としてはどちらも重要な情報です。学校等にとって都合が悪い情報を「風評」と見做すのであれば、それは恣意的な対応です。「風評にも理由がある」が率直な感想です。

少なくとも各学校の学力水準は、全国学力・学習状況調査の平均点や進学先の高校から概ね把握できます。

大阪市立学校データベース

大阪市立中学校からの進学先はウェブで公開中、小中学校の学内順位から進路を想定できる

が、これらは各学校の教育内容の善し悪しではなく、その学区に居住している子育て世帯の経済水準や教育水準(SES)を色濃く反映したものです。学校を忌避する要素では泣く、むしろ当事者たる子育て世帯に帰属する問題です。いわゆる「おまいう」です。

「〇〇学校はガラが悪い。荒れている。」という話もよく聞きます。が、少なくとも見学した数校ではいずれも荒れている様子はありませんでした。ガラス窓は全てありました。

最近は反対に「荒れるほどの元気がない。無気力や不登校の生徒が多い。」という話を頻繁に聞きます。

「荒れている」という風評を批難するのではなく、むしろ学校には現状を正しく発信してもらいたいです。未就学児世帯でも小学校へ足を運ぶ機会は多いのですが、小学生がいる世帯が中学校を訪れる機会は非常に少ないです。

痛感するのは「小学校・中学校と子育て世帯との距離」です。小学校と子育て世帯との距離は非常に近いです。様々な地域行事で未就学児が小学校を訪れる機会も多く、勝手に遊具で遊んでいます(「遊ばないでね」という張り紙があるのですが)。

反対に小学生やその保護者が中学校を訪れる機会は稀です。地域一般に開放される機会がありません。学校説明会等で保護者が中学校の先生へ直接訊ねるのも勇気が必要です。

風評を問題視するのではなく、そうした風評を打ち消せない情報発信の弱さを問題視すべきです。地域や小学生・保護者に学校を公開すれば、荒れているという風評は吹き飛びます。