2月市会に提出される、平成27年度(2015年)の大阪市認可保育所の利用者負担(保育料)案を見やすく加工しました。
認定こども園(保育部分)・小規模保育・保育ママでも同じ保育料表が利用されるでしょう。
末尾に解説・感想等を掲載しています。
中間低位所得世帯・高所得世帯の引き上げ幅が相対的に低い一方、中間所得世帯・低所得世帯の引き上げ幅が大きく重くなっています。

大阪市認可保育所におけるH27/4からの利用者負担(保育料)案(2月市会提出)

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http://www.city.osaka.lg.jp/kodomo/page/0000296978.htmlより作成

平成26年夏に公表された変更素案では、現行の保育料より大幅に値上げされる金額が提示されていました。
しかし、市会からは「保育所保育料が跳ね上がる事は認められないという」という意見が多数あったそうです。
これにより新たな保育料案は、現行の保育所保育料をベースとした上で様々な制度改革に併せて微修正をした内容となりました。

以下は全て保育標準時間認定を前提としています。

(1)総論
多くの階層・年齢層で保育料は引き上げられます。
また、やや所得が低い階層は現行保育料と変わりません。
一方、高所得者層の3歳児以上においては、保育料は引き下げられます。

なお、市立幼稚園保育料の様な経過措置に関する記載は見当たりません。
既に入園済の園児も含め、新年度から全面的に適用となるのでしょう。

(2)高所得世帯(D12階層以上・イメージとしては概ね世帯年収1,200万円以上(以下同じ))
0~2歳児の保育料は大幅に引き上げられます。
特に市民税所得割課税額が397,000円以上の世帯(概ね世帯年収1,500万円超)においては、月額5,000円の引き上げとなります。
一方、3歳児以上の現行保育料は公定価格(保育料設定上限)を上回っており、該当部分の保育料は公定価格まで引き下げられる予定です。
これにより、6年間登園した場合の保育料総額は、現行保育料と比較して4,800円(D15階層)~94,800円(D12階層)の増額となります。

(3)中間所得世帯(D6~D11階層・世帯年収450万円~1,200万円)
保育料の改定によって最も大きな影響を受けるのは、この所得層です。
全ての年齢の児童の保育料が引き上げ対象となっています。
特にD9~D10階層は全年齢で大幅な引き上げが予定されています。
また、D6~D8階層は0-3歳児の引き上げ幅が月400円と圧縮されていますが、4歳児以上は月3,000円の引き上げです。

これにより、中間所得世帯の保育料の6年間総額は91,200円(D6~D8階層)から180,000円(D9階層、月額平均2,500円)の大幅な引き上げとなっています。
新制度に伴う保育費用の増加による影響が、この所得層に集中してしまっている構図です。

(4)中間低位所得世帯(D1~D5階層・世帯年収300万円以上)
保育料の改定による変更はありません。
現行通りの保育料のままです。

(5)低所得世帯(A~C階層・世帯年収300万円未満)
生活保護世帯・市民税非課税世帯のうち母子世帯等以外は、0-2歳児は月500円、3歳児以上は月400円の引き上げとなります。
これは高所得世帯の3-5歳児の保育料を現行水準から公定価格まで引き下げた分を、B~C階層の引き上げで補った為です。
引き上げ額は6年間で32,400円となります。

(6)感想等
中間低位所得世帯・高所得世帯の引き上げ幅が相対的に低い一方、中間所得世帯・低所得世帯の引き上げ幅が大きくなっています。
特に中間所得世帯の引き上げ幅は大きく重たいと感じられるでしょう。
高所得世帯の3-5歳児の保育に係る公定価格が現行保育料より大幅に低く、新保育料をこの水準まで引き下げざるを得なかったのが主な理由です。
保育の質の改善に関わらず保育料を引き下げる事となり、他の所得層の保育料に影響が生じてしまっています。

また、他の所得層と比較して、高所得層は0-2歳児と3歳児以上の保育料に著しい開きが生じています。
これによって矛盾と捉えられる事態が生じる可能性があります。
「同一所得にも関わらず、児童1人の保育料より児童2人の保育料の方が低くなる」という現象です。

あるD15世帯(山田さん)が0歳児のみを、別のD15世帯(佐藤さん)が4歳児及び0歳児が保育所を利用すると仮定します。
山田さんの月額保育料は73,600円(2月市会案)となります。
一方、佐藤さんの月額保育料は29,800円(4歳児)と36,800円(0歳児・第2子は半額)の合計額、66,600円となります。
世帯所得は同一にも関わらず、1人が利用する山田さんよりも、2人が利用する佐藤さんの保育料の方が安くなってしまうのです。

こうなってしまう理由は、4歳児以上の保育料が0-2歳児の保育料の半額を下回っているからです。
3歳児以上の保育料の引き下げ額に見合う形で0-2歳児の保育料を引き上げて、高所得者の6年間の総負担額が減少しない様にしたと推測されます。
その結果、こうした不思議な事態が生じようとしています。
4歳児以上の公定価格が低すぎるのが根本的な原因だと考えられます。

新たな保育料案は2月市会で審議される予定です。
具体的には、2月19日(木)の教育こども委員会となるでしょう。
幼稚園・保育所・認定こども園・地域型保育施設等に関わらず、新たな保育料案に意見等がある方は教育こども委員に属している市会議員へ意見を直接伝えるのが良いと思います。
選挙前という事情もあり、有権者の声を届けやすい状況なのは確かです。
パブリックコメントは結局実施されませんでした。