統一地方選前半戦が終了しました。大阪府知事選挙・大阪市長選挙・大阪府議会議員選挙・大阪市会議員選挙で大阪維新の会(以下「維新」)が公認する候補者が大きく票を伸ばしました。事前予報を大きく上回り、「圧勝」と言える状況でした。

注目していたのは大阪市会議員選挙でした。これまで維新は過半数を有しておらず、予算案や条例案を可決する為には他党(主に公明党)の協力を得る必要がありました。維新が大胆・先鋭的な案を提示しても、他党との協議を経る必要がありました。

しかしながら、昨日の選挙で維新は大阪市会にて46議席を獲得し、過半数(81議席中の42議席)を上回りました。

大阪市議会議員選挙では、▼大阪維新の会が46議席、▼公明党が18議席、▼自民党が11議席、▼共産党が2議席、▼無所属が4議席で、大阪維新の会は、大阪市議会では初めて目標としていた過半数の議席を獲得しました。

https://www3.nhk.or.jp/kansai-news/20230410/2000072694.html

これにより、大阪市会では維新がフリーハンドを握ることになりました。維新が推進したい予算や条例等はほぼ確実に市会を通過します。つまり、維新が統一地方選挙で掲げた公約等が迅速に実現される事となります。

今選挙戦では「教育無償化」が強く意識されました。

子育て世帯の一つとして、様々な費用が無償化されるのは助かります。子育てには本当にお金が掛かっています。家計簿を付けると心が沈むので、付けないようにするぐらいです。

一方で無償化される事により、様々な需要が増大します。たとえば今より多くの未就学児が保育所等の利用を希望しても、供給が著しく不足している地域や年齢等もあります。保育所等を利用できる家庭と利用出来ない家庭につき、投入される税金に著しく差が付いてしまいます。

保育料は世帯所得によって決定されます。高額の保育料を負担している高所得世帯ほど、無償化による恩恵は大きくなります。

塾代助成事業は厳しい所得制限が設けられています。共働きしている子育て世帯の多くは、現時点で所得制限に掛かっています。これが撤廃されると、塾等に対する需要は急激に増加するのは間違い有りません。希望する塾等に通えず、便乗値上げする動きも出てくるでしょう。

当初は「塾等に通わせる経済的な余裕がない家庭等への支援」という建前で開始されました。所得制限が撤廃されると、こうした理屈付けが失われます。

実は大阪府が実施している私立高校無償化は、東京都等より劣っています。大阪に住んでいると本当に気付きにくいです。

私立高校授業料無償化(大阪府)は所得制限あり、基準超過で年100万円負担も

私立高校の授業料はどこまで無償化されるかも不透明です。所得制限が撤廃されても、補助額(所得によって傾斜を設けるのか)、補助対象(授業料以外にも拡大するのか)は見えてきません。

私立高校に掛かる費用中高等所得世帯でも負担が重く、そもそも約4割の高校生は構造的に私立高校へ進学するものとされています。何らかの傾斜を残すとしても、所得制限を撤廃すべき必要性は高いでしょう。

大阪公立大学の無償化は支援対象が偏ります。公立大へ入学するには相当程度の学力が必要です。現在も関関同立に合格する以上の学力が必須だと言われています。

こうした学力を獲得するには、能力やトレーニングが必要です。小さな頃から塾に通っている子供が有利になるのは必然です。

保育無償化・塾代助成の拡大・大阪公立大学の授業料無償化は、全て「高所得世帯ほどメリットが大きい」ものです。

納税額に対する行政サービスが不十分だったと感じている高所得世帯には大歓迎される物でしょう。反対に子育て世帯の支援という名の下で「格差拡大」が進行するのは避けられません。

私個人の考えとしては、子育て世帯に経済的支援を行うのは助かります。しかし、格差を拡大する方向性が強い政策が強調されているのは、強い違和感を覚えます。保育所や小学校でも子供間の格差を感じる場面が多々あります。経済的に余裕が無い子育て世帯への支援策は、ほぼ現状のままで据え置かれます。

「教育無償化」を実行するのであれば、まずは児童・生徒が義務的に負担する費用を削減してもらいたいです。学校指定の学用品(制服・体操着・絵の具セット等)や部活動に掛かる費用(用具代・大会エントリー費等)等が代表例です。最も大きな費用の一つである給食費が無償化されたのは評価しています。

なお、これらの政策は「少子化対策」には繋がりません。大阪市内も少子化が進行しています。歯止めが掛かっていません。今度もますます学校の統廃合が進むでしょう。