ここ数日、保育施設での数々の虐待や不適切保育が報じられています。

吹上多摩平保育園(日野市)は虐待自体を否定

東京都日野市は改善勧告に従わない保育所を公表しました。吹上多摩平保育園です。

日野市は「言うことを聞かないとして園児の全身を締め付ける行為、園児を叩く等の暴力行為」「園児を怒鳴りつける等の威圧的な言動、園児の心を傷つける発言等」「女児を膝上に乗せて抱きしめる行為等、女児に対する過剰・不当な身体接触行為」「園児を懲罰と称して部屋に置き去りにし保育を行わない等、園児を放置する行為」等を事実認定し、これらを防止する為の措置を勧告しました。

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しかしながら園は虐待行為を全面的に否定し、勧告にも従っていません。

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(2/24追記)
暴行を加えた保育士が逮捕されました。何と現在は沖縄県に在住しています。

勤務先の保育所で園児に暴行を加えて負傷させたとして、警視庁は、この園の保育士だった吉冨弘敏容疑者(33)=沖縄県石垣市平得=を傷害容疑で逮捕し、24日発表した。

 警視庁によると、吉冨容疑者は2020年4月ごろ、当時勤務していた認可保育所「吹上多摩平保育園」(東京都日野市)で、園児に馬乗りになって両腕で体を強く抱き締め、激しく揺さぶるなどの暴行を加えて園児の顔面にうっ血による点状の出血をさせた疑いがある。当時園児は昼寝の時間だったという。

 吉富容疑者は調べに「けがをさせた覚えもないし、馬乗りにもなっていない。スキンシップとして抱きしめたことはある」と容疑を否認しているという。

 日野市は21年6月ごろ、この事案について警視庁に相談した上で、昨年7月に吉冨容疑者による複数の園児への虐待行為があったとして再発防止を求めて改善を勧告。しかしその後も改善が図られていないとして、昨年12月に子ども・子育て支援法に基づき、園と運営法人の名前や認定した行為を公表していた。

https://digital.asahi.com/articles/ASR2S5S9FR2SUTIL02K.html

同園を運営するのは社会福祉法人吹上会です。法人理事長及び各園の園長は、逮捕された容疑者と同じ名字です。

https://www.fukiage-kai.jp/for-meeting-fukiage.html

一族で経営する保育所の悪い面が出ました。理事長等は容疑者を庇い続けました。吉富一族を保育に関わらせ続けるわけにはいきません。

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本郷町保育園(富山市)の保育士2人「暴行ではない」

園児に対する暴行が明らかになったのは本郷町保育園(富山市)です。

物置に閉じ込める、棒で体を突く、両足を持って引きずる、園児が座っていたいすを引っ張って転ばせる、両足をつかんで宙づりで移動させる、立たせながら食事をさせる、コップを無理やり口に押しつける等を行った疑いが持たれています。

 富山市の私立認定こども園「本郷町保育園」で勤務していた20代の女性保育士ら2人が、園児に虐待とみられる行為をして県警に暴行容疑で書類送検された事件で、市は13日、園に特別監査に入った。県も立ち入り調査した。

 午前10時ごろ、市と県の担当者約10人が園内に入った。市こども保育課によると、認定こども園法などで、不正や著しい不当があった場合に特別監査ができるという。

 市は2日に立ち入り調査をしているが、熊本真紀課長は「暴行容疑で書類送検された人もいる。市もしっかり対応するということで特別監査になった」と説明する。園では保育や給食の状況をみて、必要な書類を確認し、職員から聞き取りをしたという。

https://digital.asahi.com/articles/ASQDF7K7BQDFPISC01B.html

加害した保育士2人は「暴行にはあたらない」と供述しているそうです。よくある言い訳です。当たるか当たらないかを判断するのは本人や保育施設ではありません。

鹿児島市の保育所は園児を倉庫に閉じ込め

鹿児島市の保育所では園児を掃除用具等を収納する倉庫に閉じ込める事案が発生しました。園児は退園し、PTSDを発症しています。

 園によると、50歳代の女性保育士が9月15日、掃除用具や段ボールなどを入れる倉庫に、電気をつけずに男児を閉じ込めた。広さ1、2平方メートルほどで、ドアノブは男児が届かない位置にあったという。

 保育士は同日、迎えに来た保護者に閉じ込めたことを伝えた。男児は10月に退園した。

https://news.yahoo.co.jp/articles/7a3cf859dc073e27d7a1dc5cfaba7debecf1bc3b

倉庫は薄暗くて狭い部屋です。反省を促す為の行為としては余りに不適切です。昭和の感覚のままだったのでしょうか。

ポポラー新潟東中通園(新潟市)で園児を布団でぐるぐる巻き

ポポラー新潟東中通園(新潟市、認可外保育施設)では、責任者の子育て支援員が園児を敷布団で巻きつけたり、長時間厳しく叱責したりする行為が行われていました。

職員から聞き取りをした結果、5月から6月にかけて、責任者の女性の子育て支援員が1人の園児に対し、敷布団で巻きつけたり、長時間厳しく叱責したりする行為があったということです。

https://news.yahoo.co.jp/articles/9ded749e6edcdc37f3b751ba6635bafb045762d4

驚くべき事に、責任者は保育士資格を有していませんでした。

女性は、保育士の資格を持っていなかった。
https://news.yahoo.co.jp/articles/30c48db05f7275b11d8d3a82f12261213dc20952

たまたま見つけたのですが、グーグルマップには「虐待型保育園」と揶揄する投稿がありました。

配置基準、労働環境の改善も重要

こうした報道が続く背景には、さくら保育園(裾野市)の暴行事件が広く報道された件があります。「ひょっとしてうちの子も」と心配になった保護者が自治体等へ相談したり、内閣府が各自治体へ通達を発した事も影響しています。

保育所等における虐待等に関する対応について
https://www8.cao.go.jp/shoushi/shinseido/law/kodomo3houan/pdf/r041207/taiou_hoikujo.pdf

ただ、単に「虐待や不適切な保育を行わないように」という声がけだけでは、こうした事態が繰り返されるでしょう。虐待等を行ってしまったメカニズムを明らかにし、再発防止策を講ずるのが必要です。

数多く指摘されているのは「配置基準」の問題です。特に1歳児(保育士1人で園児6人)にや4-5歳児(保育士1人で園児30人)が過大ではないかという指摘です。

お世話になっている保育所でも、1歳児クラスの担当保育士は本当に大変そうです。休む間もありません。私だったら到底務まりません。

保育士不足の原因の一つは常々「労働環境」と言われ続けています。賃上げが必要という意見もある一方、「1人あたりの負担が重すぎる」という意見も強いです。

フルタイムでしっかり働きたい保育士もいれば、可能な範囲で働きたいという保育士もいます。後者は子育て中や足腰に不安を抱えている年配の保育士が多い印象です。ベテラン保育士からは「腱鞘炎が」「腰が痛い」「疲れている」という話もよく聞きます。

単純な賃上げだけではなく、保育士1人あたりの担当園児数や業務量を減らし、仕事を続けやすい環境作りも必要でしょう。いずれにしろ、子育て、特に保育分野により多くの予算を充てて欲しいです。

ただ、保育の更なる充実が少子化対策の最たるものとは考えていないです。少子化対策に重きを置くならば、重要なのは若年層の経済的安定です。具体的には雇用対策です。これがなければ出会いも結婚も出産にも結びつきません。

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(12/21追記)
更に報じられています。コモレビ・ナーサリー(千葉県松戸市)では、保育士3人が児童に暴行等を加えていました。

千葉県松戸市にある小規模保育事業所「コモレビ・ナーサリー」で、園児の頭をたたくなどの不適切な保育が行われていたことが判明し、運営する社会福祉法人菊光会は20日、保護者への説明と記者会見を開いた。(中略)

市によると、3人の女性保育士が計10件の不適切指導を行っていたと認定された。同事業所で6年目の保育士(31)は、男児(2)の弁当のふたで頭をたたいたり、泣いている女児(2)に寄り添う必要があったがトイレに約5分間1人で放置したりした。3年目の保育士(30)は、給食時に眠くなっていた男児(1)の頭を手でたたいて起こそうとし、派遣の2年目の保育士(44)は男児(1)の頭を7度指で小突くなどしていた。

https://news.yahoo.co.jp/articles/ab04ee0ce3f913b121610c9876f1f3e841d547fe

小さな暴行が繰り返されていました。こうした行為は決して許されませんが、保育士に相当のストレスが溜まっている印象を受けました。

鳥取県中部の保育所では、長年に渡ってきつい言葉で叱り続けていました。

 鳥取県は20日、県中部の民間法人が運営する認可保育施設で、職員が大声で園児を叱るなど不適切な行為があったと明らかにした。

 県が確認した不適切な行為は、1人の職員が少なくとも3年前から、お漏らしをした園児を大声やきつい言い方で叱るなどした▽他の複数の職員も感情のコントロールができず園児をきつい言葉で叱ることがあった▽園長は職員の行為を知りながら具体的な指導をせず、職員が助言し合える職場環境も構築できていなかったーの3点。

 県民から情報提供を受けて10月21日と今月12日、児童福祉法に基づく立ち入り調査をして確認。「国の保育所保育指針」に抵触する不適切な行為に当たると判断した。同14日に文書で改善を図るよう指導したという。

https://news.yahoo.co.jp/articles/4c6d044f489c8ec2368b83faf3dd9ae92aaf6ff7

園長が放置(事実上の黙認)し、根付いてしまったのかもしれません。暴行や暴言が繰り返されている保育施設では、往々にして園長や主任保育士の指導力が不足している印象です。