興味深い報告書を紹介して頂きました。「子どもの「体験格差」実態調査 中間報告書」(公益社団法人チャンス・フォー・チルドレン)です。

子どもの「体験格差」実態調査 中間報告書
https://cfc.or.jp/wp-content/uploads/2022/12/report_taikenkakusa.pdf

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全国の小学生保護者約2000人に対するアンケートを基に、学校外の体験活動(スポーツ・文化芸術・自然体験・社会体験・文化的体験)の有無を世帯所得毎に並べています。

世帯所得との強い相関

既に広く知られている通り、学校外の体験の有無は世帯所得によって大きく異なります。直近1年間で体験がない子どもは世帯所得300万円未満では29.9%である一方、600万円以上では11.3%に留まります。

出所:公益社団法人チャンス・フォー・チルドレン(以下同じ)

支出額も大きく異なります。世帯所得300万円未満では約38000円、600万円以上では約107000円となっています。約2.7倍の違いが生じています。

低所得世帯では親の時間的・体力的余裕が無い

興味深いのは次の回答です。

世帯年収300万円未満の家庭を他の世帯と比較すると、学校外体験をさせられなかった理由として「経済的な余裕がない」「保護者の時間的余裕がない」「精神的・体力的余裕がない」が相対的に多くなっています。

習い事をさせるには保護者の体力や時間も必要です。特に遠距離だったり低学年では送迎が必須です。

保護者にとっての最優先順位は「労働による収入確保」です。これに時間や体力を注ぎ込まざるを得ない状況だったら、子どもの体験にまで手が回りません。

反対に世帯所得が高い世帯の方が多くの回答を寄せた項目もあります。「家の近くに参加できる活動がない」です。一定の経済的余裕があるので学校外体験をさせたくても、近くになければ出来ません。

この点では大阪を初めとする都市部は恵まれています。大阪市内には数多くの博物館や美術館があり、隣接府県にまで足を伸ばすと様々な歴史的建造物や自然にも恵まれています。

コロナ禍は全世帯に同じ様に影響

コロナ禍の影響もシビアです。特徴的なのは世帯年収とコロナ禍による体験機会の減少との相関関係がほぼない点です。

我が家は非常に強い影響を受けました。コロナ禍前に興味を持っていた運動系の習いごとがあったのですが、コロナでそれどころではなくなってしまいました。運動系は感染リスクが高く、見学さえ躊躇してしまいました。

学校外体験への公費助成を(大阪市では実施中)

今後必要な施策の一つとして、報告書は「子どもの体験活動への公費投入及び施策づくり」を指摘しています。

実は既に大阪市では公費投入による施策が行われています。「塾代助成事業」です。所得が一定以下の世帯(対象学年の概ね半数)の中1~中3(2023年4月からは小5~中3まで)を対象とし、上限1万円が塾代等として助成されてます。一種のバウチャー制度です。

既に広く定着しています。助成対象者に対する利用率は50%を超えています。中学生の内、1/4が利用している計算です。

https://www.city.osaka.lg.jp/kodomo/cmsfiles/contents/0000212/212697/teisei0401.pdf

所得が低い生徒でも様々な学校外体験に接する事ができる制度は非常に意義深い物です。周囲からは「所得基準が厳しすぎる(就学援助よりやや緩い程度)」といった声も聞きますが、これだけ多くの生徒(全体の約半数)が対象となっている事が驚きです。大阪市内の子育て世帯の経済状況がそれだけ深刻なのでしょう。

学校の関与も大切

また、本報告書では触れられていませんが、学校外体験を「学校内体験」とする施策も必要でしょう。既に修学旅行・クラブ活動・社会見学等の形で実施されていますが、特に子どもが強い興味を持ちそうな社会体験や文化的体験は不足していると感じています。

「子どもがやりたい体験をさせてあげられなかった経験」として突出しているのは「ピアノ」です。習うには時間や費用が必要です。学校にはピアノがあり、弾ける人材も揃っています。例えばクラブ活動の一つとして「軽音楽部」を設け、ピアノに触れる機会があったら喜ぶ子どもは多いでしょう。