「大阪は供給されたワクチンを死蔵している」と国会で指摘されてしまいました。実態は少々異なりますが、それにしても恥ずかしい話です。

ワクチン供給に対する接種率 最下位は大阪の45%

 内閣府は8日の参院厚生労働委員会で、新型コロナウイルスワクチンの供給量に対する接種率を都道府県別に明らかにした。6日時点で最も高かったのは67・8%の宮崎県、最も低かったのは45・5%の大阪府だった。ただ、自治体が接種回数や在庫量を入力するワクチン接種記録システム(VRS)の作業が煩雑だとして滞っているケースもあるという。

 自民党の自見英子氏の質問に、藤井比早之副大臣が答えた。2位は65・8%の佐賀県、3位は65・4%の岐阜県。下位は感染が広がった地域が多く、45位は46・2%の北海道、46位は45・8%の東京都だった。明らかにしたのは上位と下位の3自治体ずつで、それ以外を公表するかは今後、検討するという。

https://digital.asahi.com/articles/ASP784CXHP78ULBJ00F.html

これによると、大阪府へ供給されたワクチンの半分以上は使われていないそうです。ワクチンはいったいどこへ行ってしまったのでしょうか。

吉村知事や松井市長は「個別接種分を入力していないからだ」と反論しています。

吉村知事は「実態の接種率があたかも低いように言われるのであれば、明らかに事実とは違う。そこだけは指摘をしておきたいと思う」と強く反論した。

大阪市内には個別接種会場が約1700カ所あり、ワクチン接種を円滑に進めるため国が新たに導入した接種記録を個人単位で管理するシステム「VRS」について「大阪市内に1700カ所ある個別接種会場はほとんどが登録していないため、実際には接種しているのに、VRSに反映されていない」と説明した。

https://news.yahoo.co.jp/articles/ef20c178efd03d2f4883cc3779b00b7a0d8087e5

【大阪市 松井市長】
「(大阪市)は5月末から7月3日までの個別接種の数を打ち込んでいない」
と個別接種の数は含まれていないと、反論しました。

https://cdn.tv-osaka.co.jp/yasashii/news/?p=29622

5月末というのは大阪市が個別接種を開始した時期です(85歳以上は5月24日から、80歳以上は5月31日から)。「ほぼ全ての個別接種」と読み替えられます。

大阪市は医療機関から回収した接種券を市で一括して入力するとしています。しかし入力するまでには時間が掛かっていました。それどころか、全くの未入力でした。

 「VRSの作業は煩雑で負担になる。接種に注力させてほしい」。大阪市はこうした大阪府医師会からの要請を受け、診療所などから個別接種がすんだ人の接種券を回収し、登録作業を代行している。国は接種券の情報を瞬時に読み取る専用端末を全国に配布。医療機関や自治体が接種の際に登録する仕組みだが、個別接種を行う市内約1800の診療所などのうち、9割がVRSの端末の利用を希望しなかった。

 このため、接種日から登録まで平均1カ月のタイムラグが発生。市の集団接種会場では、当日のうちにVRSの登録を済ませるのとは対照的だ。松井一郎市長は、「VRSの作業に手間がかかり、(診療所などでの)接種人数が抑えられるなら本末転倒」と、登録より接種を優先してきた事情を強調する。

https://digital.asahi.com/articles/ASP757H8DP75ULFA024.html

記事では「平均1カ月のタイムラグ」とさらりと書かれています。しかし、個別接種が開始してからまだ1カ月半しか経っていません。つまり、大阪市は個別接種の殆どをVRS(ワクチン接種記録システム)へ入力していませんでした。

また、大阪市はV-SYS(ワクチン接種円滑化システム)へ入力していなかった可能性も高いです。5月31日に政府から「V-SYSへの入力は省略しても良い」との事務連絡がありました。

ワクチン接種記録システム(VRS)へ、「高齢者等」の接種記録の登録をタブレット端末による接種券の読み取り等により確実に行った場合は、ワクチン接種円滑化システム(V-SYS)へのこれら高齢者等の接種実績の登録は不要とする。

令和3年5月31日付事務連絡

VRSにもV-SYSにも入力していなければ、政府が大阪での接種状況を正確に把握するのは容易ではありません。

しかも、大阪では更に職域接種・自衛隊等の大規模接種が重なります。府内での接種状況を誰も把握していないのでは無いでしょうか。

大阪府が最下位というのは実態を現していない可能性が強い反面、「入力していなかったから」は反論になっていません。「宿題を済ませたけど未提出だった」と同レベルです。

現在は全国各地で猛烈なスピードで入力が行われている様子です。7月7日の登録数は全国で220万件を超えました。驚くべき数字です。この中には大阪市の入力分が相当数含まれているでしょう。

7月末までに希望する高齢者の殆どが2回目接種を終えられる見込みはたちました。しかし、それ以外は前途多難です。周囲からは「いつになるかなあ」という諦めの声が聞こえてきます。

一度でもワクチン供給が途絶えてしまうと、次からは「多めに請求しよう」「在庫に余裕を持とう」という動きが強まります。信用できるのは手元在庫だけとなってしまいます。

しかし、これを重視しすぎると全体の流動性が低下し、ワクチン接種にブレーキが掛かってしまいます。国・自治体・医療機関の相互不信による被害者は住民です。

こんなグダグダ具合はずっと続くのでしょう。期待せず、今後も悲観的に見ていきます。

(追記)
7月8日の登録数は2,503,068件でした。未入力分が山積みになっていました。