「それはそうですね」としか言い様がありません。
夫の通勤時間と第2子誕生の関係 財務省の研究所が分析
都市に住む夫婦の場合、夫の通勤時間が長いほど、第2子が生まれる可能性が低くなり、第1子誕生時の住まいが広いほど、第2子が生まれる可能性が高くなる――。そんな分析結果が財務省財務総合政策研究所の6月の報告書に掲載された。
分析したのは、同研究所の内藤勇耶研究官。第2子に着目したのは、第2子以降を産む人の減少が近年の出生率の低下に大きく影響していることが気になったためだという。
家族構成や夫の通勤時間など、ひとり一人の女性の生活情報を長く調べている家計経済研究所のデータをもとに分析した。その結果、夫に仕事があり、第1子が生まれた時に第2子を希望していた夫婦で、住まいが東京23区と政令指定都市の都市部の場合、夫の通勤時間が10分長くなると、第2子が生まれる確率が4%減ることが統計上、認められた。また、1959~73年生まれの女性に限ると、第1子が生まれた時の住まいののべ床面積が1平方メートル広くなると、第2子が生まれる確率が3%高くなった。
実際、国勢調査を使って20~45歳の女性が100人以上いる東京都内の約4千地区で0~2歳児の人数を調べてみると、平日午前9時に東京駅に着くためにかかる通勤時間が10分長くなると0・04人少なくなった。また、住まいの広さとも関連する1平方メートル当たりの家賃相場が1千円下がると、0・56人増えているという。
内藤氏は「子育て世代の経済負担が重いと、通勤時間が長い郊外への居住が増えてしまう」と指摘。出生率の維持や引き上げのためには、家族構成や年齢などを絞り、「都内に安く住める工夫が必要ではないか」と話す。
この分析結果が掲載されているのは『「人口動態と経済・社会の変化に関する研究会」報告書』です。
「人口動態と経済・社会の変化に関する研究会」報告書
https://www.mof.go.jp/pri/research/conference/fy2020/jinkou_report.htm
当該分析結果は第9章です。
第9章 パネルデータと地図からアプローチする第二子出生にかかる
【要旨】
完結出生児数の減少は、第二子及び第三子の出生数の減少に原因を求められるところ、パネルデータを用いて第二子の出生要因について「住まい」をテーマに分析した。本章では、第一子出生時点の延床面積の広さが第二子出生を促す影響を与えることを示すとともに、配偶者(夫)の通勤時間の長さは第二子出生を妨げる影響を与えることを示した。
また、本章は、町丁単位データを用いた「住まい」と出生の関係を分析した点に特徴がある。予算制約の中で、延床面積の逆数であり代理変数として家賃が機能すると考えられるところ、家賃の高さと地域における乳児割合(母親年代人口に占める乳児人口の比率)は負の相関関係を示し、通勤時間と地域における乳児割合も同様に負の相関関係を示すことが判明した。通勤時間と家賃は同時決定的であるため、回帰分析には内生性の課題を有するが、地図を用いた分析を併用することで分析の頑強性を担保した。
さらに、地方自治体が行う「住まい」に関する支援策を、本章の後半で俯瞰したところ、子育て世代に限定した住居支援策が功を奏していることが分かった。このことは、データの分析結果と相まって、世代を限定した家賃や住まいに関する支援策が少子化対策に有効であることを示唆している。
https://www.mof.go.jp/pri/research/conference/fy2020/jinkou_report09.pdf
以下、気になった点を指摘していきます。
都内市区町村(賃貸取引のない地域(西多摩郡の大半及び島嶼部)を除く)における、家 賃 と町丁単位での相関グラフである。この図表からは、家賃と乳児割合は負の相関関係を持つことがわかる。
綺麗な相関が現れています。直感で理解はしていましたが、面積あたりの家賃が高額になるほどに乳児は少なくなります。
平米単価が上がるにつれて間取りが広い部屋を借りにくくなり、複数の子供を育てられる広さを確保しにくくなります。
通勤時間も第2子出生に影響します。通勤時間が長ければ夫婦の時間を持つのが難しくなります。そして育児に携わる時間も短くなります。
ただ、家賃と通勤時間はトレードオフの関係にあります。これをどうするかが本分析の問題意識です。
これについて、本分析は「住居手当等の充実」や「有料特急券を含む通勤定期券の発行」が必要だと指摘しています。
長時間通勤や過密化する都市居住を促進する指摘には若干の疑義があります。
首都圏の有料特急電車は既に過密だと聞きます。また、速達列車ではなく、着席サービスが主となっています。通勤時間の短縮に寄与する効果は微々たるものでしょう。
都市部への居住をより促進する方針にも疑問があります。都市部の過密化を更に推し進めるのでしょうか。更に都市部での居住(タワマン等)にどれだけのコストが必要かを理解しているのでしょうか。
分析内容は当然の内容、そしてそれに基づく提言は効果が薄い、と感じました。「東京一極集中」を所与としています。
子育て世帯が長時間通勤や居住コストの高さを負担してまで都内等に居住する背景には、大企業の多くが都内に集中しているからでしょう。
であれば、こうした企業が少しでも地方に分散する事ができれば、居住地がばらけ、通勤時間や住宅費等に要するコストが低下します。
「都内に安く住める工夫が必要」ではなく、「首都圏に住まなくて済む工夫が必要」ではないでしょうか。東京の出生率は極めて低く、定期券や住居手当等でどうにかなるものではありません。
関西のとある学校に在籍していた当時の友人知人の大半は、気づいたら東京に住んでいました。関西の学校なのに同窓会は東京で開催されています。これが現実です。
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