(市川中学校、グーグルSVより)

目を疑いました。

兵庫県市川町立市川中学校で少なくとも22人が感染するクラスターが発生しました。

20日に開催された「合唱コンクール」後に発症が広がったと見られています。

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(12/1追記)
市川中学校の生徒3人及び関連して8人の感染が明らかになりました。

 兵庫県市川町教育委員会は30日、新型コロナウイルスのクラスター(感染者集団)が発生した市川中学校で、新たに生徒3人の感染を確認したと発表した。いずれも軽症。感染した同校の教員、生徒は計25人となった。

 同校では、20日に校内で開いた合唱コンクール後に生徒20人と教員2人の感染が判明。26、27日の2日間で、行事に参加したほかの生徒167人、教職員24人、学校関係者19人、保護者124人の検査を行った。うち生徒3人が陽性で、ほかは全員陰性だった。

 町教委は合唱の練習や当日の舞台上で感染が広がった可能性があるとみている。健康観察のため、市川中は12月6日まで臨時休校を延長。登校再開は同7日を予定している。

 一方、県はほかに、中播磨健康福祉事務所管内(市川町、福崎町、神河町)に住む10~50代の男女9人の感染を確認。うち8人は「市川中関連で、学校以外での感染」としている。家庭内などでの感染とみられ、いずれも軽症か無症状という。

https://www.kobe-np.co.jp/news/sougou/202011/0013903944.shtml

やはり家庭内感染も広がってしまいました。

しばしば「感染するのは仕方ない」「お互い様」という話を耳にします。しかし、本件は異なります。この時期に学校が合唱コンクールを決行した事によって大クラスターが形成されました。

そして、合唱コンクールへの参加を拒む権利は生徒にありませんでした。仮に拒否した場合、内申書等に悪い評価が付けられるのは避けられないでしょう。

また、各校の行事予定等は教育委員会も把握していたはずです。しかし、これを漫然と放置していました。

学校や教育委員会の責任は極めて重大です。判断ミスによる重大な過失があります。

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 兵庫県市川町教育委員会は26日、町立市川中学校で新型コロナウイルスのクラスターが発生した、と発表した。関係者によると、同日までに生徒20人と教職員2人の感染を確認したという。

 町教委によると、24日に1人の感染が分かり、同日から学校を閉鎖。現在、全生徒約270人と教職員約40人のPCR検査を実施しており、26日に新たに21人の陽性が判明したという。27日までに全員の検査結果が出る見通し。

 今月20日の合唱コンクール後に発症がみられたといい、関連を調べている。町は同日午後3時半から会見する。

https://www.kobe-np.co.jp/news/sougou/202011/0013893474.shtml

検査結果が衝撃的です。

https://web.pref.hyogo.lg.jp/kk03/documents/1126kishahappyou.pdf

市川中学校は兵庫県の中心部、中国山地の谷間に設置されています。姫路駅から播但線で北上する地域ですね。


合唱コンクールは11月20日に開催されました。行事予定表にも掲載されています。午前中に各学年がリハーサルを行い、午後からコンクールが開催されました。


https://www.fureai-cloud.jp/ichikawa/attach/get2/1368/0

また、コンクールと同じ週にはオープンスクールも開催されました。

★市川中学校★ 本日11月16日(月)~20日(金)まで、オープンスクール週間を実施しています。保護者の方は、都合のつかれる時間にご自由にご参観ください。職員室前に茶華道部員による「校内生け花展」も行っています。ぜひご覧ください。

https://www.fureai-cloud.jp/ichikawa/home/index/ichityu/yousu

現時点で感染経路は不明です。ただ、合唱コンクールまでに発症した生徒や教職員がいたら、コンクールその物を取りやめていたでしょう。

前後関係から考えると、症状が発生していない関係者が合唱コンクールに参加し、大クラスターを形成したと考えるのが自然です。

そもそもこの時期に合唱コンクールを開催した判断には重大な疑問があります。「合唱」は極めてリスクが高い行為であると、再三再四に渡って専門家が警鐘を鳴らしていました。

文部科学省も「室内で児童生徒が近距離で行う合唱及びリコーダーや鍵盤ハーモニカ等の管楽器演奏」が「特にリスクの高い」と指摘しています(学校における新型コロナウイルス感染症に関する衛生管理マニュアル)。

コンクールの開催形式は不明です。ただ、全ての生徒と教職員がPCR検査を受けているので、全員が濃厚接触者と考えられる様なシチュエーションで開催されたのでしょう。

学校活動で合唱コンクールは重要かもしれません。しかし、コロナウイルスが再び猛威を振るう状況で、全生徒が参加する合唱コンクールを実施した考えは全く理解できません。

「特にリスクが高い行為だから、今年は止めておこう」と声を上げる教職員や保護者はいなかったのでしょうか。いても声を上げられなかったのでしょうか。

少なくとも今年に限っては、よりリスクが低い別の活動を選択すべきでした。

また、同時期に開催されていたオープンスクールも疑問です。外部の人間が立ち入る機会は極力限定すべきでした。

恐らくはオープンスクールを合唱コンクールと同時に開催し、授業参観等も兼ねていたのでしょうい。保護者にも感染が広がるでしょう。

なお、合唱コンクールの翌週たる25日からは2学期の期末考査が予定されていました。当然ながら考査は延期となったでしょう。3年生の進路選択にも大きな影響を与えようとしています。

合唱コンクールやオープンスクールを強行した背景には、「中国山地の田舎だから、きっと周囲にコロナウイルス感染者はいないだろう。合唱しても大丈夫だ。」という甘さがあった様に感じざるを得ません。

第1波や第2波に襲われなかった地域で油断し、第3波で大きなクラスターを形成する事例が少なくありません。油断大敵とはこの事です。

学校における感染リスクをゼロにする事は出来ません。しかし、リスクを抑制する事は可能です。必要な知見も公開されています。

多くの子供達を預かる施設で働く方は、コロナウイルスの感染リスクに真摯に向き合って欲しいと思います。

なお、本日の兵庫県の感染者は過去最多の184人となりました。

兵庫の新規感染者184人、過去最多更新 新型コロナ
https://www.kobe-np.co.jp/news/sougou/202011/0013893550.shtml

兵庫県知事は「大阪との往来自粛を」と呼びかけていますが、大阪に近い地域以外にも感染が広がっています。

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(11/27追記)
詳しい状況が分かってきました。

やはりオープンスクールと合唱コンクール、そして授業参観を兼ねていました。

 兵庫県市川町教育委員会は26日、町立市川中学校で新型コロナウイルスのクラスターが発生したと発表した。25日までに生徒20人と教職員2人の感染を確認。いずれも同じ学年で、軽症か無症状。今月下旬に校内で開催した合唱コンクールで感染が広がった可能性があるため、全校生徒約200人と教職員約20人、行事に参加した保護者約150人を対象に、27日までにPCR検査を実施するという。

 町教委によると、20日の合唱コンクール後、23日に生徒1人の感染が分かり、24日から学校を閉鎖。25日までに同じクラスの生徒18人と、同学年で別のクラスの生徒1人、同学年の担当教員2人が陽性となった。最初に感染が分かった生徒の感染経路は不明という。

 合唱コンクールは保護者の来場数を制限するなど規模を縮小して体育館で開いた。客席では必ずマスクを着用させる一方、舞台上では外してもいいと指導していたという。26日に会見した大崎尚樹校長は「あいまいな指導で、今振り返れば100%(の対策)ではなかった」と謝罪。岩見武三町長も「生徒、保護者の皆さんに大変申し訳ないことをした」と陳謝した。

https://www.kobe-np.co.jp/news/sougou/202011/0013893474.shtml

教育委員会によりますと、学校では今月20日、全校生徒が参加して体育館で合唱コンクールが開かれ、集団感染が起きたクラスの生徒はほとんどがマスクをせずに歌っていたということです。

合唱の際生徒たちは例年と同じような並び方で、間隔をあけるなどの措置は取っていなかったということです。

市川町を管轄する中播磨健康福祉事務所は合唱コンクールの場で集団感染が発生した可能性もあるとして詳しい感染経路を調べています。

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20201126/k10012733201000.html

生徒200人・教職員20人・保護者150人、合わせて400人弱の人間がPCR検査を受けるそうです。リスクが高いイベントに多くの人間が参加すると、容易に大クラスターが作り出されてしまいます。

また、舞台上で歌う人間は間隔を空けずにマスクを外していたそうです。合唱は大きな声で歌います。1人でも感染者が混じっていたら、多くの人間に感染させてしまうでしょう。

コロナ禍での合唱コンクール、更に全生徒が参加、しかも多くの保護者も参観したという、あってはならない行事が行われていました。

コンクールの翌日からは3連休です。お出掛けした家庭も少なくないでしょう。中にはGoToトラベルで出掛けた家庭もあるでしょう。2次感染が広がっている可能性は高いです。

学校長は「あいまいな指導で、100%(の対策)ではなかった」と謝罪しているそうです。しかし、この謝罪はポイントがずれています。

100%の対策を行っていたら、合唱コンクールを行って差し支えないのでしょうか。そんな筈はありません。そもそも「100%の対策」はありません。

問題は「合唱コンクールの開催」です。開催に至った意思形成過程を検証すべきです。