NHKは全国転勤がつきものです。学生時代の友人に局員がいますが、地方や東京を行き来しています。年賀状の住所が頻繁に変わるので気づきます。

福岡から東京へ転勤するNHK職員が、保育所探しに追われる経験を記事化しています。共感できる内容です。

待機児童問題が依然として続く中、子どもの保育園探し=「保活」のしれつさも指摘されて久しくなります。この夏、福岡から東京に転勤した私の前に立ちはだかったのは、厳しすぎる「転勤族の保活」の壁でした。壁に立ち向かう中で感じたのは、女性が男性同様に転勤しながら働き続けることを社会が想定していないこと。私の保活体験記です。(以下省略)

https://www3.nhk.or.jp/news/web_tokushu/2018_0822.html

男性が転勤する場合は、家族が共に転居するか単身赴任するのが一般的です。反面、女性が子供を残して単身赴任するケースは稀であり、子供と一緒に転居するのが大半でしょう。

地方への転居であれば、保育所等にも比較的入りやすいでしょう。ただ、NHK職員の勤務地は県庁所在地が殆ど、地方でも保育所等へ入所しにくい地域です。

壁(1)家を借りないと申し込めない!
そもそも区民ではない場合、申し込める園がほとんどないこと。ただし、区内にある住宅の賃貸契約書などの写しを提出し、確実に区民になる予定だということを証明できる場合のみ、すべての園に申し込むことができるということでした。

大阪市は市外住民でも入所申込できます。ただ、基本点数が大幅に低くなり、入所するのは非常に難しいのが実情です。事実上、大阪市民で入所枠が埋まらなかった場合にのみ入所できます。

しかし、住居の賃貸契約書・売買契約書等を提出すると状況は激変します。市内住民とみなされ、同じ基準で入所調整が行われます。

壁(2)窓口に行かないと理解できない
電話などでのやり取りではなく、紙を目の前にして説明してもらわないと理解できないと感じました。遠方から何度も区役所に通うことも大変です。

保育所等の入所調整基準はほぼ全ての自治体が掲載しています。しかし、非常に複雑であり、更に自治体によって異なります。

電話で相談しても説明は受けられますが、一般的な内容に留まってしまいがちです。電話の限界です。個別具体的な相談は窓口で行った方が良いでしょう。

壁(3)不確定要素が多すぎる
区役所の窓口でわかったのは、4月でほぼすべての園の定員が埋まっているため、年度途中では空きが極めて少ないということ。
不確定な要素が多すぎて考えが堂々巡りする中、まずは、現段階で募集があるいくつかの園を見学してみることにしました。

特に待機児童問題が深刻な地域では、年度途中に入所するのは非常に難しいです。そもそも誰かが退所しないと入所枠が空きません。更に、希望者の中から入所調整によって選ばれなければなりません。

保育所等の見学や申込みと同時に、認可外保育施設の見学も進めるべきでしょう。「転居・転勤したが保育施設がない!」という事態だけは避けるべきです。

壁(4)子どもに負担をかける罪悪感
ただでさえ親の都合で引っ越しをして、子どもに負担をかけるのに、より良い環境を選ぶこともできないのか…。そこまでして私が仕事を続ける意味はあるのだろうか。

仕方ないとは言え、親の都合で子供の環境や人間関係が全て変わってしまいます。転勤族の宿命かもしれません。

ただ、小さい子供は新しい環境に慣れるのは早いです。多くの子供は、新しい保育所・保育士・お友達に囲まれ、すぐに仲良くなるでしょう。

反対に親の方は時間が掛かります。転居・異動によってプライベートも仕事も非常に慌ただしくなります。保育所の親仲間を作るのは、どうしても後回しになってしまいます。

壁(5)家探しにもリスク
家賃は福岡の3倍。敷金や礼金、保証金などで初期費用だけで数十万円がかかるといいます。しかも、多額の費用を払っても、保育園に入れる保障はない…。

NHK局員の好待遇を聞いているので、ここは共感できません。転居に伴う費用も相当部分を勤務先が負担するでしょう。

壁(6)自治体によって異なる申し込みの条件
これだけの条件を調べ尽くすのは相当な苦労と手間がかかります。情報収集に慣れている人とそうでない人の間で、得られる情報に格差が生まれかねないと感じました。

これは非常に大きな差が出ます。特にパソコンを利用してウェブサイトを調べられるかで、致命的な違いが生じるでしょう。自治体のウェブサイトはパソコンに最適化されています。

スマートフォンでの情報収集はあまり勧められません。スマホの小さな画面で得られる情報は制約されます。

なぜ転入者は優先度低い?
渋谷区の担当者は、「保育園の定員に十分余裕があれば、転入者も含めて申し込みをした人全員を受け入れたいのですが、供給が間に合っていない現状では、どこかで線を引かなければなりません。保育所の整備や利用にかかる費用の負担は区の税金で行っていることから、税金を納めたり、地域の活性化に貢献している区民を優先させていただいています」と答えてくれました。

保育所等の設置・運営では、その費用の一部を各自治体が負担しています。住民が優先されるのは仕方ない(むしろ当然)でしょう。

また、その自治体に居住する証明書(住居の賃貸借契約書等)を提出すると、他の住民と同じ基準で調整が行われます。許容性も認められます。

転勤族の保活 最大の壁は社会の構造
取材で見えてきたのは、社会制度の柔軟性のなさ。保育制度の煩雑さだけではなく、勤め先の制度も、子どもがいる女性が男性同様に転勤することを想定していないことが、転勤族の保活の「最大の壁」となっていることが浮き彫りになってきました。

記者は「女性が男性同様に転勤することを想定していない」としています。しかし、男性が転勤する場合でも家族には非常に大きな負担が掛かります。問題視すべきなのは「転勤を前提とした企業制度」ではないでしょうか。

会社員+専業主婦+子供という世帯であれば、転勤に伴って家族全員が転居する事も可能でした。

しかし、共働き世帯は年々増加しています。夫が転勤する場合、妻は退職して同行するか、それとも残って仕事を続ける(=夫は単身赴任)かという選択を迫られがちです。

知人が勤務している会社(東証一部上場の有名メーカー)では「転居を伴う異動でも3日前に発令、2-3年毎に異動、疲弊する中年社員を見た若手が雪崩を打って転職している」という現象が起きているそうです。

転勤・共働き・家族の時間、現時点で両立させるのは容易ではありません。一世代前と比べて多くの家庭に余裕が無くなりつつある現在、仕事に伴う負担を家庭へ転嫁する企業は敬遠されるかもしれません。