全国学力テストにおいて、大阪市は2年連続で「全都道府県・政令市で最下位」という結果でした。
基本的な学力を測る国語A・算数Aの結果を取り上げ、大阪市の児童の学力を探ってみます。
突出して悪い国語A、全児童に問題あり
では、どうしてこの様な結果となったのでしょうか。教科別の細かい数字を見ていきます。
調査結果には平均点だけでなく、教科別の正答率割合も掲載されています。児童の正答率を5分割し、それぞれの割合を算出したものです。
まずは国語Aです。
国語A | |||||
児童の正答率 | ~20% | ~40% | ~60% | ~80% | ~100% |
全国 | 2.8 | 7.0 | 20.8 | 26.5 | 42.8 |
札幌市 | 2.8 | 7.1 | 19.8 | 26.4 | 43.8 |
仙台市 | 2.4 | 6.2 | 21.1 | 29.1 | 41.4 |
さいたま市 | 2.1 | 5.7 | 17.8 | 26.1 | 48.2 |
千葉市 | 2.6 | 7.0 | 19.7 | 28.3 | 42.3 |
横浜市 | 2.5 | 6.4 | 18.4 | 24.4 | 48.3 |
川崎市 | 3.7 | 7.8 | 17.9 | 23.8 | 46.7 |
相模原市 | 3.7 | 8.9 | 22.0 | 25.1 | 40.3 |
新潟市 | 1.7 | 5.1 | 19.0 | 27.8 | 46.2 |
静岡市 | 3.0 | 6.4 | 20.6 | 25.4 | 44.7 |
浜松市 | 3.7 | 8.9 | 22.6 | 24.8 | 39.9 |
名古屋市 | 4.8 | 9.2 | 22.5 | 27.3 | 36.1 |
京都市 | 2.3 | 6.2 | 17.3 | 23.7 | 50.6 |
大阪市 | 3.7 | 9.6 | 25.8 | 28.7 | 32.2 |
堺市 | 3.0 | 7.1 | 21.2 | 26.8 | 42.1 |
神戸市 | 3.4 | 7.7 | 21.0 | 25.8 | 42.1 |
岡山市 | 3.1 | 7.5 | 19.5 | 25.8 | 44.1 |
広島市 | 2.5 | 6.7 | 19.6 | 26.6 | 44.7 |
北九州市 | 2.4 | 7.2 | 20.9 | 27.1 | 42.3 |
福岡市 | 2.6 | 6.8 | 18.9 | 25.9 | 45.7 |
熊本市 | 2.6 | 7.6 | 21.7 | 27.6 | 40.5 |
国語Aにおける大阪市の特徴は、「中下位層が分厚く、上位層が薄い」とまとめられそうです。
実は正当率が0-20%・20-40%・40-60%・60-80%の割合において、大阪市は1-2位となっています。名古屋市の0-20%の割合が突出しているのは、工場等で働く外国人の子弟が急増している為でしょう。
反対に80-100%の割合は32.2%と全国最下位です。隣の京都市は何と50.6%です。
国語Aは「身につけておかなければ後の学年等の学習内容に影響を及ぼす内容や,実生活において不可欠であり常に活用できるようになっていることが望ましい知識・技能など」が出題内容とされています。
つまり、最低限身につけておかなければならない国語力が欠けている児童の割合が突出していると言えます。
グラフで見ると一目瞭然です。大阪市が棒線部分、大阪府が▲印、全国平均が◆印です。
全国平均・大阪府平均と比べ、10-12問に正答している上位層が薄くなっています。全問正答者は全国平均の半分強しかいません。
また、全国・大阪府のピークが10問にあるのに対し、大阪市は9問にピークがあります。グラフ自体が左側にシフトしています。全国平均の中央値が「9問」であるのに対し、大阪市は「8問」となっています。
一定の層に問題がある(例:誰かが足を引っ張っている)のでは無く、全ての層・児童の国語力に大きな問題があると言わざるを得ません。
算数Aも悪い、まあまあ出来る子への指導に課題?
国語Aほど極端な結果ではないものの、算数Aも似た傾向です。正答率が0-60%だった児童の割合が多く、60-100%の割合は全国最低クラスです。
算数A | |||||
児童の正答率 | ~20% | ~40% | ~60% | ~80% | ~100% |
全国 | 2.7 | 13.6 | 26.7 | 31.9 | 25.0 |
札幌市 | 3.0 | 13.4 | 27.0 | 32.3 | 24.3 |
仙台市 | 2.6 | 13.3 | 26.2 | 31.9 | 26.0 |
さいたま市 | 2.6 | 12.5 | 24.8 | 32.4 | 27.5 |
千葉市 | 3.5 | 13.5 | 26.2 | 30.1 | 26.5 |
横浜市 | 2.7 | 12.1 | 24.4 | 30.9 | 29.9 |
川崎市 | 2.8 | 12.9 | 24.7 | 30.1 | 29.6 |
相模原市 | 3.3 | 16.0 | 29.1 | 30.3 | 21.1 |
新潟市 | 1.6 | 11.0 | 25.4 | 34.1 | 27.8 |
静岡市 | 2.3 | 12.7 | 26.9 | 33.4 | 24.7 |
浜松市 | 3.7 | 14.8 | 28.0 | 33.0 | 20.6 |
名古屋市 | 4.6 | 15.5 | 27.8 | 30.2 | 21.9 |
京都市 | 2.2 | 12.0 | 25.8 | 31.9 | 28.1 |
大阪市 | 3.0 | 15.5 | 28.7 | 30.2 | 22.6 |
堺市 | 2.5 | 12.6 | 26.0 | 32.5 | 26.3 |
神戸市 | 3.1 | 13.7 | 26.7 | 31.1 | 25.6 |
岡山市 | 3.2 | 14.5 | 28.4 | 31.8 | 22.2 |
広島市 | 2.4 | 13.0 | 26.2 | 33.0 | 25.3 |
北九州市 | 2.8 | 16.3 | 28.8 | 30.6 | 21.5 |
福岡市 | 2.6 | 13.3 | 26.3 | 32.3 | 25.5 |
熊本市 | 2.7 | 14.1 | 27.7 | 32.6 | 22.9 |
算数Aの結果を見ていて気掛かりに感じたのは「二極化」です。まずはグラフです。
全国平均と比べ、グラフ全体が左側にシフトしているのは国語Aと同じです。
ただ、全問正当した児童の割合が全国平均6.6%なのに対し、大阪市は6.3%と善戦しています。しかし、10-13問正解者の割合は全国平均より1%前後も低く、これが正答率60-100%の少なさに直結しています。
大阪市には算数を得意とする児童が全国平均と同程度に存在しています。一部は私立中学校の受験者と重なるでしょう(国語力の低さが問題ですが)。
しかし、それに次ぐ層(35人学級だと3-10番目ぐらいの位置)の算数力が目に見えて凹んでいます。学級の中では算数がまあまあでき、5段階評価で「4」が付く児童でしょう。
ただ、先生の指導がどれだけ行われているでしょうか。忙しい先生の学習指導は躓いている児童に偏ってしまい、こうした層の児童への指導が手薄になっている可能性があります。
国語B・算数Bも酷い
国語B・算数Bも同じ様な内容でした。
特に国語Bは酷い内容です。0-20%・20%-40%の割合が全国で最も高く、60%以上は全国最小でした。昨年よりも悪化しています。
これらから、大阪市の小学生の学力は「下位層が分厚く、上位層が極端に薄い」「算数は全国最低水準、国語は全国最低で飛び抜けている」という結果が窺えました。昨年と同じです。
大阪市の結果概要・講評も公開されています
大阪市役所ウェブサイトに「平成30年度全国学力・学習状況調査 大阪市の結果概要について」が公表されています。
しかし、横長のPDF形式で掲載されていて、スマートフォン等では非常に見にくくなっています。PCでも厳しいです。
そこでスマホ等でも見やすくなる様に、ページを分割した資料を作成・掲載します。
厳しい表情を浮かべる大阪市長
この結果に対し、大阪市の吉村市長が厳しい表情を浮かべています。
吉村市長が提起した対策、点数が低迷する原因等については、近日中に別記事にてまとめます。分量が余りに多すぎます。
大阪市の学力低迷において、家庭環境や地域特性は無視できません。大阪市立小学校データベースに掲載している学力テスト結果(H28)を見て分かるとおり、学校毎の点数差が非常に大きいのが実情です。
また、大阪市は「家庭の社会的経済的背景が低い地域が多いのではないか」という根源的な課題があります。
各学校・地域の特性を踏まえた、学習指導・生活指導・予算配分が必要ではないでしょうか。