企業主導型保育所は大阪府が助成トップ　災害共済給付制度も適用

昨年度から始まった「企業主導型保育」が順調な滑り出しを見せている様子です。既に2万人以上の施設への助成が決定しています。助成対象となった施設が最も多かったのは大阪府です。

待機児童解消に向けて政府が平成２８年度にスタートさせた「企業主導型保育事業」で、３月末時点で大阪府内の７６施設（定員１７３９人）に助成が決定するなど順調に進んでいる。対象となった定員数は全国の都道府県のなかで最も多く、大阪の企業や団体の保育事業への関心の高さがうかがえる結果になった。

企業主導型保育事業は企業が主に従業員向けに整備する保育所で、保育士の人数など一定の基準を満たせば、企業や団体に助成金が交付されたり、税の減免措置などが受けられたりする制度。政府が即効性の高い待機児童解消策として導入した。

府内では、医療法人や学習塾、飲食チェーン、タクシー会社などさまざまな業種の企業、団体が制度を利用して保育事業に参入。地域的には大阪市内が４２施設と過半数を占めたほか、企業や団体の従業員の子供だけでなく、地域住民の子供を受け入れる「地域枠」についても、全体の８４％にあたる６４施設が設けている。

同市北区の外食チェーン「フジオフードシステム」が今年１月、本社近くに開設した「フジオひまわり保育園」もその一つだ。担当者によると、当初は定員が少ないため、外部への宣伝は控えていたが、開園直後から問い合わせが相次いでいる。

現在では、０～１歳児を中心に１７人の子供を受け入れており、同社の藤尾政弘社長は「保育所を設けたことで、働いている人のサポートもでき、地域の人にも貢献できる。今年中にさらに３カ所開設し、定員を計１００人まで増やしたい」と意欲を語っている。

「公益財団法人児童育成協会」によると、制度導入後、今年３月末時点で、４７都道府県の計８７１施設（２万２８４人）に助成を決定。府は東京都（７８施設・１７３５人）とほぼ同数となった。福岡（１５８６人、６６施設）、愛知（１２６８人、６３施設）と続いているという。

「地域枠」を設けた施設が全体の約７５％に上っており、待機児童解消を狙った政府の思惑が当たった格好だ。内閣府子ども・子育て本部は「地域のニーズに合わせて、設置主体が地域枠を柔軟に運用しているのではないか」としている。

http://www.sankei.com/west/news/170415/wst1704150037-n1.html

記事に掲載されている「フジオフードシステム」は、「まいどおおきに食堂」等の外食チェーンを運営している企業です。大阪市内でも数多くのお店を見かけます（たまに同じ保育園の園児に会ったりします）。

同社が開設した「フジオひまわり保育園」は本社の近く、大阪市北区松が枝町7-7に設置されています。大阪市内で保育所等への入所が最も難しい地域の一つ、北区南東部です。問い合わせが多いのも無理はありません。

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入園料は15,000円、保育料は0-2歳児が39,300円～44,300円、3歳児が34,500円～39,500円、4-5歳児が31,600円～36,600円となっています。

一般的な認可外保育施設より保育料は大きく抑えられています。公費による助成の影響です。反面、保育料が応能負担で決定される認可保育所等と比べると、0-2歳児はやや高め、3-5歳児は高めだと感じます。

企業主導型保育（H29.3.31助成決定分まで、大阪府内）

企業主導型保育の一覧は、助成を行う公益財団法人児童育成協会のウェブサイトに掲載されています。

企業主導型保育事業の助成決定（18回目）を行いました。（PDF）

スマホだとPDFは読みにくいので、上記資料から大阪府内分を書き出してみました。

半数以上の42施設（933人分）が大阪市内で開所

大阪府内で開所（助成）する71施設の内、半数以上の42施設が大阪市内に設置されます。驚くべき集中率です。

企業主導型保育は認可外保育施設の一類型です。保育ニーズが強くて施設が足りない大阪市内には、以前から数多くの認可外保育施設がありました。

新しい制度を利用する形で多くの事業者が大阪市内で開所を決めたのは自然な流れです。

ただ、誰でも企業主導型保育へ申し込めるわけではありません。当該企業の従業員等で無ければ、原則として「地域枠」が設定されている施設のみへ申し込む事が出来ます。

とは言え、大半の施設で地域枠が設定されています。大阪市内で地域枠が設定されている企業主導型保育の定員合計は797名です。上限である半数が地域枠と仮定すると、400人弱の地域枠が設定される公算となります。

一方、従業員向けの「従業員枠」は思う様に埋まらず、地域枠から埋まる傾向が生じているそうです。大阪市内等で数多くの保育施設を運営している　の学園長がブログで指摘しています。

保育所の待機児童問題の解決策として、内閣府が推進している「企業主導型保育事業」が着実に成果をあげつつあります。

今年の3月末時点で、全国で８７１施設（2万２８４人）に助成が決定されました。事業主体は企業や団体で、定員の50パーセント以下が地域枠として開放されています。

実は私共もこの事業に参画し、既に2カ所を大阪市内に開園していますが、正直、社員の利用よりも地域枠から定員が満了となっています。

そこで提言ですが、私どものような地域貢献の意味合いで保育園を開設しようとしている企業や団体の方々も多いように思えるので、地域枠なるものを事業主の判断で撤廃でき、より多くの地域の保育ニーズに応えれば、より機動的に“待機児童解消の起爆剤”になれるように思います。

http://renbi.com/blog/entry-6236

従業員枠が空いているのは勿体ない話です。一方、年度途中で育児休業から復職する従業員の為に、一定の枠を空けておきたいという意向がある施設もあるでしょう。

また、仮に地域枠を撤廃してしまうと、企業主導型保育ではなく「公的補助を受ける認可外保育施設」となるでしょう。公的補助を通じて指導監督の徹底を図るのは、あるべき将来像の一つかもしれません。

企業主導型保育も災害共済給付制度の対象に！

平成29年度から大きな変化がありました。幼稚園・保育所・地域型保育に加え、今年度から企業主導型保育も日本スポーツ振興センター（JSC）による災害共済給付制度の対象となります。

企業主導型保育施設が独立行政法人日本スポーツ振興センターによる災害共済給付制度の対象となりました

制度の最大のメリットは「過失の有無を問わず、児童が補償を受けられる」という点にあります。

認可外保育施設等で事故が起きて民事訴訟によって損害賠償を求める場合、施設側の過失を被害者側が主張・立証する責任があります。密室・被害者は幼い児童・目撃者はほぼいないという状況が多く、立証するのは容易ではないのが実情です。

しかし、災害共済給付制度が適用される施設であれば、過失の有無に関係なく一定額の補償が受けられます。園児が勝手に走って骨折した、というケースでも給付されます。

事故やケガはないのが理想です。しかし、万が一にも生じてしまった場合の「安心感」という意味で、同制度の存在感は極めて大きいです。