総務省行政評価局が調査したところ、多くの小規模保育施設で受け入れ先(連携施設)に問題がある事が明らかになりました。また、下記ニュース記事は「連携施設の定義」に重大な誤りがある可能性があります。

小規模保育施設の3歳児以降受け入れ先確保に課題 総務省が勧告
12月9日 11時58分

保育所などの空きを待っている待機児童の現状について、総務省が保育施設を抽出して調査した結果、2歳児までを預かる「小規模保育施設」の3割近くが3歳以降の受け入れ先を確保できていないことがわかり、総務省は厚生労働省などに対し、市町村と連携して対策を徹底するよう勧告しました。

待機児童は共働き世帯が増える中、8年連続で全国で2万人を超え、国は去年4月、2歳児までを預かる「小規模保育施設」の整備を推進する新しい制度を施行し、来年度末までに「待機児童0」を目指しています。

待機児童の現状について、総務省行政評価局が去年、930余りの小規模保育施設を抽出して調べた結果、その3割近くで、設置の要件となっている3歳以降の受け入れ先の確保ができていないことがわかりました。

一方、確保できていると答えた施設に、受け入れ先までの距離を尋ねたところ、回答した160の施設のうちおよそ2割が「5キロ以上離れている」と答え、利用者が通いにくい実情があるということです。(以下省略)

http://www3.nhk.or.jp/news/html/20161209/k10010800851000.html

勧告内容は総務省行政評価局ウェブサイトに掲載されています。

子育て支援に関する行政評価・監視 -子どもの預かり施設を中心として-
要旨勧告結果報告書

勧告要旨は下記の内容です。

Download (PDF, 833KB)

上記記事では小規模保育のみが取り上げられていますが、より正確な需要把握に基づく子育て支援計画の作成・待機児童数の範囲の明確化とそれを踏まえた入所保留児童数の公表を求めています。

子育て世帯やに直接関係するのは、小規模保育施設において「施設を利用する子ども に対 する保育が適正かつ確実に行われ、小規模保育施設等による保育の提供の終了後も 満3歳以上の子どもに対して、必要な教育・保育が継続的に提供されるよう連携協 力を行う保育所、幼稚園又は認定こども園」と定義される連携施設の確保です。

具体的には「卒園後の受皿」「保育内容の支援」「代替保育の提供」、これらを合わせて「連携3要件」とされています。3要件全てを満たす連携施設の確保が必要とされていますが、平成31年度末までの経過措置が設けられています。

ここからが重要です。勧告では「連携3要件のうち、1要件以上設定できていれば連携施設を確保済みとして整理している」と記載されています(結果報告書124ページ)。

161209-1

すなわち、卒園後の受皿がなくとも「連携施設が設定されている」とカウントされてしまっているのです。1要件すら設定できていないのが27.2%(3割弱)です。では、実際に卒園後の受皿が確保できている施設はどの程度の割合でしょうか。

6割の施設が受け入れ先が確保できていない!

これを踏まえた内容が要旨の3ページにも掲載されています。

ここでは実地調査を行った小規模保育(35箇所)の内、3要件全ての設定もしくは「卒園後の受皿」の要件が書面で確認された施設は15箇所に過ぎませんでした。4割強です。

設置の要件となっている3歳以降の受け入れ先の確保ができていないのは3割ではありません。「6割」です。連携施設までの距離等を含めると、入園可能な連携施設は更に少なくなるでしょう。

残念ながら小規模保育を卒園した後の保育の場は未だ不安定となっています。大阪市等の一部自治体では卒園児に加点措置が設けられており、連携施設以外の保育所にも入所しやすくなっています。

しかし、更に小規模保育が増えていくと3歳児入所がますます困難となるのは目に見えています。既に大きな影響を受けているのは、2歳まで家庭保育を行っている家庭です。加点措置はなく、3歳児から入所するのは極めて困難です。多くは幼稚園+預かり保育を選択しているのではないでしょうか。

解決策については別記事で検討する予定です。幼稚園等に連携施設を求める・保育所3歳児入所枠の拡大・保育所の増設・3歳児以降も小規模保育で過ごす等、どの方法にも何らかの課題があるのは否めません。

また、保護者としては小規模保育施設を積極的に選択するメリットが殆どない点を見落としてはなりません。保育所に比べて施設規模に劣り、上にきょうだいがいる場合は2箇所保育を余儀なくされ、更に卒園後の受皿を心配しなくてはなりません。

一斉入所の中間発表を見ても、殆どの方は保育所を第1希望としています。小規模保育という制度が積極的に評価されていないのは事実でしょう(存在意義を何ら否定する物ではありません)。