公設民営保育所だからすんなり解除?

大きな問題となっているのは、品川区が設置したひろまち保育園の運営を同法人が受託していた点です。選定に関する流れは、品川区ウェブサイトに掲載されています。

・当法人は、昭和42年8月11日に創設され、現在認可保育園18園、幼保連携型認定こども園を1園、運営している。関西を拠点に全国展開し、都内で2園開設し、安定的な運営が図られている。また、当法人は第一種社会福祉事業である特別養護老人ホーム等を経営し、社会貢献にも寄与している。

・定員300人規模の保育施設、開設期間5年間という制約を配慮し、職員の計画的な採用の取組みと人材育成のための研修、家賃補助等の福利厚生面でも充実している。当法人の離職率は低く、開設期間の5年の経過後の職員の処遇についても、今後都内に新規の保育園を開設予定で、当該の新規園または法人内の他施設へ異動させる方向で検討がされ、閉園後の職員の処遇は十分に確保されている。

・提案された事業内容では、定員300人規模の大規模保育施設に適した内容で、保育内容と園児の健康管理と衛生面、保護者を含めた登降園時の安全面、近隣住民に配慮した提案が示されている。地域住民との世代間交流や特別に支援が必要な児童と保護者に対する配慮等、工夫された内容が提案されている。また、品川区独自の乳幼児教育プログラムを理解するとともに、子ども・子育て支援新制度にも対応しており、保育園開設まで区と円滑な連携が図ることが可能である。

品川区ウェブサイトより選定理由

良い内容ばかりが書かれています。しかし、「公私の区別が付いている」という重大な点を見落とした格好です。「保育の質」以前の問題です。

契約内容の詳細は定かでありませんが、今後に関する品川区・夢工房の意見が折り合わず、平成29年3月をもって運営から撤退するという流れとなっています。

一番の被害者は園児と保護者です。ようやく慣れ親しんだ先生方が、来年3月末に全て入れ替わってしまう可能性が濃厚です。転園を検討している家庭もあるでしょうが、他の施設は既に満員状態です。

仮に来年4月からの運営法人が決まらなかった場合はどうなってしまうのでしょうか。最終的には公立公営保育園として運営せざるを得ないのではないでしょうか。

都市部を中心に保育所が急増しています。しかし保育士不足は深刻です。保育所を運営する能力がある組織は限られています。公募等を行っても、事業者がなかなか集まらない地域が徐々に増えています。となると、保育所運営法人の力が相対的に強くなり、行政・利用者の力が弱くなるのは必然と言えるでしょう。

区立ひろまち保育園は園児数300名という大規模保育所です。運営には相当の経験とマンパワーが必要です。能力がある法人は決して多くありません。品川区の公募に幾つの応募があったか定かではありませんが、限られた応募者の中から消去法的に選んだ可能性もあるでしょう。

事業者を選ぶにあたっては離職率・人件費率等の精査も重要なポイントとなるでしょう。数値が異常に低い場合、何かおかしな事態が起きていると推測されます。説明を求めるべきでしょう。

民設民営保育所の閉鎖は極めて難しい

今回の事案は「委託契約」だったのですんなり解除という流れになっています。しかし、民設民営保育所だった場合、認可を取り消して保育所を閉鎖させるのは容易ではありません。

ここ数年、似た様な不正経理・保育士による園児暴行・保育士の大量退職等の労務問題が発生している保育所(認証園を含む)が少なくありません。しかし、行政から閉園を命令されたケースは知る限りありません。

夢展望は多くの民設民営保育所を運営しています。こうした保育所に対し、品川区と同じ様な対応を行えるでしょうか。多くの園児が行き先に困る事態となれば、行政としても強い手段は講じにくいでしょう。

同族経営保育所へ適切な監査を

不正が生じている保育所等の多くは「同族経営」です。構造的に不正が起こりやすくなっています。理事長・園長等の身内を役員・従業員等として雇用している保育所等に対しては、より強い監査が必要でしょう。

品川区は運営法人にたいして損失・不正受給額の返還等を請求すべきです。当初の契約書には、こうした項目が当然記載されているでしょう。

なお、夢工房に関する資料はよりよい保育・幼児教育を考える芦屋市民の会に詳しく掲載されています。こちらもご覧下さい。