全国各地で保育所が新設されています。その殆どは私立保育所・公設民営保育所(行政が設置して運営を民間法人へ委託)です。
今年4月に運営を引き受けた事業者につき、来年3月末で契約が終了する事態が明らかになりました。原因は「不適切経理」です。
品川の保育園 開園1年で事業者の契約解除 公設民営で問われる質
東京都品川区が待機児童解消策として、公設民営で今年四月に開園した認可保育所「区立ひろまち保育園」の保育事業者が、開園からわずか一年で交代する見通しとなったことが分かった。区は、委託している社会福祉法人の運営費の使用方法に、不透明な部分があることを問題視。本来は五年間の契約だったが、来年三月で契約を解除する合意文書を十九日にも法人側と交わす。園は存続するものの、民間委託の保育の質が問われている。
区が公設民営で開設したのはひろまち保育園が初めて。定員数は区で最大規模の三百人。現在、約三十人の保育士が勤務し、約百八十人の園児が通っている。区は公募に応じた複数業者から、各地で保育園を運営する社会福祉法人「夢工房」(本部・兵庫県芦屋市)を選んで委託。経験豊富な点などを評価したという。二〇二一年三月までの五年間の契約で、毎月二千二百万円を運営費として補助してきた。
法人を巡っては、兵庫県内で運営する保育所で、男性理事長の親族らが架空勤務で給料を受け取っていたことなどが判明し、県は六月、少なくとも運営費約二千七百五十万円が不正流用された疑いがあると発表した。
関係者によると、ひろまち保育園についても、区が開園時の条件にしていた常勤の看護師などの配置がないまま給与分の運営費を受給していた。備品の購入でも不透明な支出をしていた可能性もあり、区は兵庫県で問題が発覚した六月以降、調査を進めてきた。
区は、法人理事長らが園の運営に関与しないなどの条件を法人側に示したが、法人側によると「区が示した条件は受け付けられない」と主張。双方の折り合いが付かず、来年三月に法人が運営から撤退することになった。
法人側は、取材に対し、看護師を配置していなかったことは認めたが、「人員配置も適正で備品購入も問題はない」と話した。
区は法人と契約解除の文書に調印したうえで、八月中にも新たな保育事業者を募集する予定。区は取材に対し「詳細については答えられないが、保護者には適切に情報提供し、不安を与えないよう努める」としている。(以下省略)
品川区が契約を解除するのは社会福祉法人夢工房運営する、区立ひろまち保育園です。同法人は兵庫県芦屋市に本部があり、保育所・老人ホーム・デイサービス施設等を運営しています。
保育部門に属する保育所・こども園等は約20施設ほどあります。殆どの施設は関西、特に兵庫県にあります(一覧)。上場している保育所運営会社ほどではありませんが、1社会福祉法人が運営する規模としては全国有数でしょう。
私的流用等は少なくとも3800万円
不適正経理の内容は山田みち子氏(芦屋市議会議員)のウェブサイトに詳しく掲載されています。不適正な経理が行われた金額は、少なくとも3800万円に達しています。
社会福祉法人夢工房(本部:芦屋市、黒石誠理事長)にかかる不適正経理(理事長親族等への利益供与)疑惑について
期間 場所 対象者 内容 金額 平成26年度(H25.5-H27.8も疑義) 姫路保育園 園長(理事長の実母) 架空勤務 1000万円 補助金の不正受給 1050万円 平成22年4月~27年8月(H9-H22.3も疑義あり) 同園イーグレ分園 事務員(理事長の義母) 架空勤務 1200万円 平成22年9月~平成27年7月 理事長の実母宅 家政婦 老人ホームシスナブ御津の職員給与として支給 380万円 平成27年度 理事長娘宅 理事長娘 家具・家電製品代金を保育所備品に偽装して支出 170万円 合計 3800万円 ※県・姫路市の監査等に対して、事実隠ぺいのための妨害行為が行われたことを確認している。
保育所職員・備品代等として使われるべき金銭を、勤務実態のない親族への架空給与・プライベートな部分への支出へ充てている疑いが持たれています。同族で経営されている法人における、典型的な不正パターンです。公私の区別が付かず、それが常態化していたのではないでしょうか。
同法人の現況報告書に役員構成等が掲載されています。これによると理事長と同姓の女性理事が1名、評議員が3名(内1名は理事兼任)います。また、評議員2名は保育所の施設長に就いています。つまり、理事長とその身内が法人の主要部門を占めている形となっています。
こうした不正経理に気づいた職員等もいるでしょうが、言うに言えない環境だったと推測されます。言ったら最後、自分が職場を追われるだけでしょう。気づき、自ら職場を去った職員もいるのではないでしょうか。