平成30年度に民間移管を予定している大阪市立保育所が発表されました。これは公立保育所新再編整備計画に基づくものです。なお、平成29年度分はこちらの記事をご覧下さい。

大阪市では、市政改革の基本的な考え方に基づき、平成25年4月に「公立保育所新再編整備計画」を策定し、公立保育所について具体的な再編整備を進めており、このたび、平成30年度に民間移管予定の9か所の保育所の公表を行うこととしましたので、お知らせします。

今後、当該保育所を利用している児童の保護者の方への説明会を実施するなど、保護者の方の理解を得ながら進めるとともに、民間移管にともなう児童への影響が最小限となるよう取り組んでまいります。

なお、法人の公募開始は平成28年7月を予定しており、平成28年12月頃に移管先法人を選定します。法人の選定後、保育の引き継ぎ等を進め、平成30年度から民間に移管します。

http://www.city.osaka.lg.jp/hodoshiryo/kodomo/0000366347.html

具体的には下記の保育所が民間移管・休止対象となっています。

現状移管予定保育所
移管方法保育所名所在地現在の運営形態備考
現状移管浪速区大国保育所浪速区大国2-13-1公設置民営
淀川区木川第2保育所淀川区三国本町1-13-16昨年は移管先決まらず
生野区東生野保育所生野区新今里7-15-6
阿倍野区三明保育所阿倍野区三明町1-2-24
西成区天下茶屋保育所西成区天下茶屋東2-1-12公設置公営
橘保育所西成区橘3-1-19公設置民営
建替移管此花区四貫島保育所此花区梅香3-7-16
東淀川区南江口保育所東淀川区小松5-6-9-101公設置公営昨年は移管先決まらず
住吉区浅香東保育所住吉区浅香1-1-24

平成30年度は9保育所の民間移管が予定されています。この内、6保育所の運営は既に民間へ委託されています。こうした保育所では、現受託法人へそのまま民間移管されるのが通例です。

目的は「経費削減・財源確保」

そもそも、大阪市が保育所の民間移管を進めているのはどうしてでしょうか。最大の目的は「保育所運営に要する経費の削減」です。

 子育て支援策の充実・強化に取り組むために、本市の厳しい財政状況においては、限られた人的・物的資源を有効活用することにより、財源を確保する必要がある。

これまで、本市では平成16年度から、公立保育所の民間委託(公設置民営)により、民間法人の迅速かつ効率的な運営を取り入れてきたが、その効果が限定的となっている。また、公立保育所は児童1人あたりの保育にかかる経費が民間保育所に比して高いという課題がある。

これらを是正し、さらに事務効率を高めるためには、民間活力をさらに活用する方式である民間移管を導入することが必要であると考える。

http://www.city.osaka.lg.jp/kodomo/page/0000214644.html

では、民間委託・民間移管により、運営費はどれだけ削減されるのでしょうか。大阪市の試算は下記の通りです。

100名定員保育所運営費(平成23年度決算)
公設置公営公設置民営民間保育所
歳出ベース1億6400万円9800万円1億400万円
実質市費ベース1億4200万円7800万円5000万円

公立が高コストである。これは、公立保育所では勤続年数が長い保育士が多いことや、給食調理業務を直営で実施していることにより人件費が民間保育所に比して高くなっているからである。

http://www.city.osaka.lg.jp/kodomo/page/0000214687.html

歳出ベースと実質市費ベースで違いはありますが、民間委託・民間移管する事によって運営費が大きく削減されています。大きな要因は「民間と比べ、正規職員たる公務員保育士・調理担当職員等の人件費が余りに高い」という点にあります。

大阪市の公務員厚遇問題はずっと指摘され続けています。保育士給料表が新たに導入されましたが、未だに官民比較があると感じています。平均給与月額が360,865円(平成26年度)から、なぜか382,321円(平成27年度)へ増加しています。また、福利厚生の違いも極めて大きいでしょう。

結局、保育所の民間移管・公務員保育士の削減(不足分は非正規で補う)により、保育関係の支出を削減しているのが実情です。大きな影響を受けているのは市立保育所です。正規職員は殆ど補充されない、非正規職員は集まらない状況です。これにより、乳児クラスの募集定員が400人以上も削減されています(詳細はこちら)。

また、予定通りに民間移管が行われるか、少し懸念される部分もあります。昨年度は3保育所で決まりませんでした。保育所運営法人の多くで保育士の不足感・募集難が生じています。既に受託している保育所ならまだしも、公設置公営保育所の民間移管を受けて多くの保育士を新たに募集するのが決して容易ではないでしょう。

中には「保育所運営を受託しているが、保育士の確保が難しいので、受託解除を検討している」という法人もあると聞きます。急激な保育所増加に、現場で働く保育士や管理要員が追いつかないのでしょう。

民間移管自体には賛成でも反対でもありません。しかし、より良い保育の為ではなく、専ら「公務員保育士・人件費を削減する」ための手段として用いられているのは少し悲しいです。