平成28年2月23日の大阪市会教育こども委員会にて公立保育所に関する質疑が行われました。ここで公立保育所の定員がここ3年間で約400人減少していた実態が明らかになりました。原因は公立保育所で働く保育士不足です。

同委員会における、大阪市担当者の答弁を引用します。

(寺田委員からの質疑に対し)

○飯田保育所運営課長
平成25年度から3年間、正規保育士の採用を凍結している
欠員補充は任期付き・非常勤で補充している
予定数の確保が確保できていない
平成26年度には3歳児を中心に134人の運営定員を引き下げている
平成27年度には0-2歳児で215人の定員引き下げを行った
平成28年度は正規保育士を若干名採用するが、0歳児を中心に45人の定員を引き下げざるを得ない
厳しい厳しい状況となっている
http://www.city.osaka.lg.jp/contents/wdu260/live/committee/20160223kyo.html

大阪市内にある各保育所毎の入所予定数を経年比較しており、公立保育所の定員が減少傾向にあるのではないかという疑問は有していました。また、これを指摘する問い合わせも寄せられていました。この答弁により、疑いが真実であったと判明しました。

待機児童問題が深刻な大阪市では数多くの保育所等が新設されています。その一方、便利な場所にあって広い園庭を備えた公立保育所で定員を削減しているのは、保育所への入所という保護者の願いに逆行する措置です。

こうなった原因は、皮肉なことに大阪市の保育士採用政策にあります。正規保育士ではなく任期付き・非常勤で採用しようとしたところ、予定数を採用できなかったそうです。では、ここで任期付き保育士等の待遇を見てみましょう。以前に【ニュース】任期付き保育士らの昇給を 橋下大阪市長「正規と非正規で差をつけるのはおかしい」 来年2月議会に条例改正案提出へで比較しています。

運営者雇用形態や役職平均年齢平均給与月額(賞与含まず)
大阪市(公立)正規雇用45.2360,865円
任期付?188,600円
私立施設長50.3431,366円
主任保育士43.8323,917円
保育士30.8219,837円

大阪市の任期付き保育士の待遇は、ざっと正規雇用保育士の半分です。私立保育園の平均的な待遇も下回っています。

長期にわたって継続的に働いて昇級も目指したいのであれば私立保育園の正規保育士、短い空き時間を活かして働きたいなら公立・私立保育園のパートタイム保育士を検討するのではないでしょうか。正規雇用されている職員と大きな待遇の違いがある、大阪市の任期付き保育士を検討するインセンティブは働きにくいでしょう。

正規職員の好待遇・見せかけの人件費を圧縮する為の非正規職員の採用という、まるで官製ワーキングプアの教科書に出てくる様な事例が展開されています。

「保育士が足りないから定員を引き下げた」という間抜けな状態は早急に解消すべきです。任期付き給与よりも大幅に引き上げた、私立保育園の待遇に準拠した形(これが低すぎるのも問題ですが)で正規保育士を採用し、各保育所へ配置すべきでしょう。

これは人災です。