猪熊 弘子 (ジャーナリスト)
わずか2カ月前に起きた事故である。

2月8日、東京・池袋の雑居ビルにある認可外保育施設「トムインターナショナルスクール」(以下、トム)で「訃報」と書かれた1枚のプリントが配られた。

〈去る2月5日(火)午後6時32分、2歳児クラスの男の子が病院にて死去致しました。病院の緊急治療室に入って約1時間後でした〉

そんな書き出しで始まるプリントには、この保育園に通っていた2歳4カ月の男児、上田浩太君(仮名)が高熱を出し、搬送された先の病院で死亡が確認されるまでの状況が淡々と記されている。

〈脈が少し持ち直したり又弱くなったりを繰り返している間に、救急車が来てくれて、病院に向かいました。病院につくまで心電図は不安定ながらもずーっと心臓が動き、生きている事を証明しておりました。私共は、このまま治療を受ければ何とか助かるのではと祈っておりました〉

〈真に残念ですが、間もなく訃報が届きました。私共スタッフ全員非常にショックを受け、泣き、悲しみました。あってはならない事が起こってしまいました。とてもとても無念でなりません。彼のご冥福を心からお祈り致します〉

(以下省略)
http://shukan.bunshun.jp/articles/-/2678

極めて痛ましい事故です。
上記記事を読む限り、キーポイントは登園直後の朝9時半での検温で39.2度が計測された点です。
この時点で即座に医療機関で受診するないしはすぐに保護者にお迎えを強く要請していたら、異なる結果になったという印象を受けました。
保護者の携帯電話に連絡するまでの2時間半あまり、保育施設が適切な対応を行わなかったのでしょう。
初動が余りに遅いです。
保護者の勤務先に電話するなり独自の判断で医療機関を受診するなど、真っ先に行うべき対応を行っていません。
その後の連絡・座薬投与・医療機関受診等、全てが後手後手に回ってしまっています。

男児の死亡と保育施設の対応に因果関係があるかは分かりません。
ただ、施設の不適切な対応が結果に繋がったという疑いは拭いきれません。
「施設の看護師が出来る限りのことをしました」というのは施設の自己弁護にしか聞こえません。
また、NHKニュースによると、当時は保育士が1人もいなかったそうです。

その背景には、改善勧告の内容で触れられている通り、施設規模や保育士に見合わない多数の園児を狭いスペースで預かり、1人1人の様子に目が行き届かなかった保育施設の問題があるでしょう。
1人あたり1.36平方メートルのスペースで乳児を預かっていたら、子供同士のケンカは絶えず、病気もうつし合いっこしているでしょう。
あまりに多数の園児を受け入れ、「少しぐらいの発熱なら寝かせておけば治るだろう」ぐらいの気持ちでいたのかもしれません。

利用者の声が下記ブログやコメント欄に多数掲載されています。
http://makuhari-windy.blog.so-net.ne.jp/2007-04-11
記載されている内容が事実であれば、東京都はこうした認可外保育施設であっても利用できる状態に放置して黙認していたのでしょうか。

これは認可外保育施設の例ですが、自治体の監督等が行き届いている保育所等も無縁ではありません。
保育所等と言えども、数々のトラブル(噂も含む)を耳にします。
その中には少し間違えば重大な結果を招きかねないものもあります。

保育施設選びの基本は「見学と評判」です。
自分の目と耳で施設を確認し、同時に評判という形で他の方の目と耳を通じた話も聞きます。
複数人の目耳のチェックを通過した施設であれば、恐らく大丈夫でしょう。
そうではなく、何かしら引っかかる要素があれば要注意です。
再度見学するなりネット上の情報を調べるなり、何らかの更なる深掘りが必要でしょう。

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(6/10追記)
警視庁が業務上過失致死の疑いで捜査に着手しているそうです。

認可外施設で2歳児死亡 業過致死の疑いで捜査

 東京都豊島区の認可外保育施設「トム・インターナショナル・スクール」で平成25年2月、2歳男児が体調が急変して死亡し、警視庁池袋署が業務上過失致死の疑いがあるとみて捜査していることが10日、捜査関係者への取材で分かった。

 都や施設などによると25年2月5日、預かっていた男児が高熱を出し、病院でインフルエンザと診断された。その後、男児は施設のベッドで寝ていたが、夕方ごろに母親が迎えに来た際にはぐったりしており、救急搬送先で死亡した。

 解剖の結果などから、男児は吐いた物をのどに詰まらせて窒息死した可能性があるという。当時、施設は保育士を一人も配置していなかった。

http://www.sankei.com/affairs/news/150610/afr1506100005-n1.html