第24回大阪市待機児童解消特別チーム会議が開催されました。

Download (PDF, 5.63MB)

第1子保育料無償化の実施を決定する可能性が取りざたされていましたが、今回の会議では結論に至りませんでした。会議にて横山市長が「公約に掲げている最も重要な施策だ。私としても絶対にやり遂げたい思いだ」と述べた通り、様々な課題を克服できるか否かが焦点となります。

同会議の資料では、2026年度一斉入所の状況・入所保留児童対策(特に1歳児)・保育料無償化について多くのページが割かれています。

以前から当ウェブサイトで指摘している通り、入所保留児童(大阪市の資料では「利用保留児童」と記載)の大半は1歳児です。2025年4月1日では保留児童の約63%(1,589人)が1歳児でした。

主たる理由は1歳児募集数の相対的な少なさです。1歳児申込数は0歳児申込数の倍近いのにも関わらず、0歳児と1歳児募集数は約900人ほどしか違いがありません。申込倍率は0.82倍と1.33倍と大きな差があります。

ただ、本資料には「どうして1歳児募集数が少ないのか」という根本的な理由が記されていません。

年齢別申込数と申込倍率の年次推移です。0-1歳児申込数は減少から反転して増加しています。それをうけて0-1歳児申込倍率は年々上昇、そして0-1歳児で入所出来なかった児童が改めて申し込む2歳児倍率も上昇中です。

区別・年齢別の枠不足見通しです。実は大阪市中心部はここ10年あまりで保育所等が急激に整備され、入所倍率や保留児童は劇的に低下・減少しました。上記図表でも北区・中央区・天王寺区・西区は上位にありません。

代わりに深刻なのは、市中心部への通勤利便性が高い周辺区です。1歳児の不足枠が酷い、城東区・東淀川区・淀川区・住吉区・鶴見区・旭区・東住吉区・西淀川区が典型的です。特に旭区・東住吉区・東淀川区は入所倍率も非常に高く、数字以上に深刻です。

【2026保育所等一斉入所申込分析】(4)旭区/入所倍率1.38倍は市内ワースト、深刻な保育所等不足と偏在

【2026保育所等一斉入所申込分析】(3)東淀川区/上新庄・下新庄駅周辺の1歳児が極めて深刻、実質倍率24倍という園も

第1子保育無償化の実現には、保育所等の入所を希望する児童がすんなりと入所出来るのが望ましいです。希望しても入所出来ない子育て世帯は保育料無償化に強い不公平感を抱きます。

現状は厳しいです。上記図表には「利用保留児童は2,500人以上、大半は1歳児」「入所枠整備は目標未達、応募事業者は減少傾向」「第2子無償化等によって保育ニーズが増加」といった理由が端的に記されています。全くその通りです。

保育無償化を実施するには、1歳児入場倍率の緩和が必要不可欠です。現状でも入所するのが難しく、無償化によって更に多くの申込があると見込まれています。

同会議で配付された資料には「既存施設活用のさらなる対策」とした、1歳児の受入を促進する項目が並んでいます。(1)0歳児定員を減らして1歳児定員を増やす、(2)保育室の活用可能スペースを利用した1歳児受入枠の拡大、(3)定員拡充工事による1歳児定員の追加が例示されています。

好意的に捉えると「既存施設の活用」ですが、反対に「詰め込み保育」という批判も可能です。

資料に記されている方法には大きな課題があります。

いずれの方法も1歳児定員を増やすとしていますが、翌年以降の2歳児定員等には目を向けていません。在籍している1歳児は、原則として翌年は2歳児クラスへ進級します。2歳児クラスの定員に占める1歳児クラスからの進級者が増える結果、2歳児クラスでの新規入所枠が減少してしまいます。仮に2歳児定員を増やしても、今度は3歳児入所枠を圧迫します。

1歳児定員を増やすのであれば、2歳児以降の定員についても並行して考える必要があります。この資料では抜け落ちています。

1歳児入所枠を増やすのに最も簡単なのは、0歳児入所枠を絞る方法です。1歳児入所枠への転用はしません。

一斉入所で0歳児募集枠を下回る第1希望しかないにも関わらず、1歳児では募集枠の数倍もの第1希望がある保育所等もあります。中には0歳児入所枠よりも1歳児入所枠の方が少ない保育所等もあります。0歳児で入所するのと1歳児で入所するのに必要な点数に大きな乖離が生じており、2か所保育を誘発しやすくなっています。

保育ニーズが更に増大する可能性が高い一方、保育施設の整備は難航しています。保育人材の確保も厳しさを増す見通しです。大阪市内でも少子化傾向が加速しない限り、全ての指標が「今後は保育所等への入所が難しくなる恐れが強い」と示しています。

「保育が必要なすべての児童の入所枠確保」を実現するには、まだまだ長い年月が掛かります。むしろ目下の1歳児対策が急務です。

今回の待機児童解消特別チーム会議で「第1子保育料無償化」に関する結論は出ず、予算編成過程において判断していくとしています。

しかし、この資料は1歳児を中心とする入所保留児童対策は非常に難しいという現実を指し示しています。様々な対策が予算編成で認められたとしても、すぐに結果が出るものではありません。ましてや、「第1子保育料無償化」と「保育が必要なすべての児童の入所枠確保」を同時に実現するのは困難です。

政治的決断が無い限り、第1子保育料無償化の実現は先送りされる可能性が高いと感じました。確実に増大する保育ニーズに対応できるだけの保育所等がありません。