大阪市は多くの区で「学校選択制」を導入しています。住所によって自動的に定められる指定校とは別の小中学校へ進学できる制度です。
制度の詳細は区によって若干の違いがあります。区内全域にある学校から選択できる区もあれば、居住している学区に隣接している学区からのみ選択できる区もあります。詳しくは区役所から対象者へ送付された「学校案内」に掲載されています(ウェブでも公開中)。
一方、学校選択制を導入している区にありながら、選択できない学校もあります。非常に多くの児童が在学しており、校内環境が著しく狭隘化している学校です。
令和7年第3回教育委員会会議にて承認された「学校選択制 事務の手引き(受入抑制の検討について)」に基づき、各区で学校選択制からの一時除外(受入抑制)を行います。具体的には下記各校が「学校選択制抑制校」とされています。
| 区 | 学校名 | 学校規模 | 児童数(R6) | 1人あたり運動場面積 |
| 福島区 | 鷺洲小学校 | R8より過大規模校 | 881人 | 7.2平方メートル |
| 中央区 | 開平小学校 | 適正 | 427人 | 3.19平方メートル |
| 天王寺区 | 真田山小学校 | 過大規模校 | 1,040人 | 5.06平方メートル |
| 五条小学校 | 大規模校 | 988人 | 3.91平方メートル | |
| 阿倍野区 | 常盤小学校 | 過大規模校 | 1,248人 | 3.45平方メートル |
| 阪南小学校 | 過大規模校 | 1,056人 | 5.44平方メートル |
これらの小学校では、抑制基準とされている「児童数の増加や学校施設の狭隘化による学校運営上の課題」が生じています。
h6校中4校が31学級を上回る「過大規模校」となっています(見込みを含む)。それ以外の2校は1人あたりの運動場面積が4平方メートルを下回っています(国基準は10平方メートル)。いずれも学校運営にて著しく大きな支障が生じます。
こうした学校が学区外から児童を受け入れる余裕がないのは当然です。受入抑制は遅すぎた判断です。
ただ、学区内の児童だけであっても溢れかえっているのが現状です。これらの学区は住環境に恵まれている「文教地区」や、生活利便性が著しく高い地区とされています。
ここ数年の間にも多くのタワーマンションや大規模マンション等が建設されています。多くのファミリー層が転入し、地域の小中学校の受け入れ能力は限界に達しています。
当然ながら待機児童問題が深刻な地域とも重複します。フルタイム共働きであっても1歳児で保育所へ入所するのが危うい地域が少なくありません。学校も保育所等も足りていません。
しかしながら、タワーマンションの乱立は止まりません。天王寺区選出の須藤市会議員ですら「旧郵政庁舎跡地に地上13階建てと25階建てのタワーマンションが建設されこととなりました。」「小学校はすでにキャパオーバー」「ショッキングでした。」と衝撃を受けていました。
https://x.com/sudo_shota/status/1966694805544796332
児童数が非常に多く、狭隘な学校では様々な問題が起きます。先生方の目は児童1人1人になかなか行き届かず、様々な問題が潜在化します。
運動場で遊ぶのも難しいです。とある小学校は屋外で遊べる日を学年毎に指定したり、少し離れた場所にある広場を運動場替わりに利用しています。子供が外でしっかり遊べないのは不適切です。文教政策・都市政策の失敗です。
これらは市内中心部のみの問題ではありません。タワマン問題の対応に多額の分教予算が費やされる事により、それ以外の地域にある小中学校の整備等が二の次とされてしまいます。数年程度は先延ばし出来る老朽化対策より、目の前にある狭隘化対策が優先されるのは致し方ありません。
小学校の狭隘化に先行する形で問題が噴出した待機児童問題では市内中心部での新設が優先されたあまり、それ以外の地域では新設が停滞しました(特にコロナ禍以降)。
コロナ禍明け・第2子保育料無償化・景気回復等によって保育需要が高まり、急激な入所難が生じています。
歪な都市計画の産物です。

学校選択制の弊害がモロに出ています。学校選択制をやめて人口増加地域は新設校を作るなどして安全な環境を確保すべきです。