参政党の神谷代表が街頭演説で「間違えたんですよ、男女共同参画とか」「高齢の女性は子どもが産めない」等と発言し、批判を浴びています。演説全文や前後関係から、真意を読み取ります。

参政党の神谷代表は、3日の街頭演説で「高齢の女性は子どもが産めない」などと発言したことについて、適齢期に出産できる社会環境を政治の力でつくるという趣旨で発言したものだと説明しました。

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20250704/k10014853961000.html

政治家の発言を批評するには、その発言の文字起こしや前後関係を確認するのが必須です。でなければ「切り抜き」と批判されがちです。NHKニュースから当該演説の文字起こし(関係部分)を引用します。

(前略)経済がだめだから人口も減りますよ。去年89万人減ったんですよ、人口が。1年で和歌山県がなくなったようなもんですよ。すごい勢いです。子ども、全然、生まれません。

だから、参政党は少子化にも、ものすごく力を入れていきます。今まで間違えたんですよ、男女共同参画とか。もちろん女性の社会進出はいいことです。どんどん、働いてもらえば結構。けれども、子どもを産めるのも若い女性しかいないわけですよ。

これ言うと差別だという人がいますけど違います。現実です。いいですか、男性や、申し訳ないけど、高齢の女性は子どもが産めない。だから、日本の人口を維持していこうと思ったら、若い女性に、「子どもを産みたいな」とか「子どもを産んだほうが安心して暮らせるな」という社会状況をつくらないといけないのに、「働け、働け」ってやりすぎちゃったわけですよ。やりすぎたんです。

だから、少しバランスを取って、大学や高校を出たら働いてもいい。働く方もいいし、家庭に入って子ども育てるのもいいですよと。その代わり、子育てだけだったら収入がなくなるから、月10万円、子ども1人あたり月10万円の教育給付金を、参政党は渡したいというふうに考えています。

子ども1人だから、0歳から15歳、1人1800万円。2人いたら3600万円。これぐらいあれば、パートに出るよりも、事務でアルバイトするよりもいいじゃないですか。だって、子どもを産み育てるって、ものすごい労力かかるし、国の未来をつくる仕事なんですよ。

そういった女性や子育てをする方々、これは男性も含めて、応援しないと国が滅ぶ。経済合理性や個人の自由だけを求めていたら社会がもちません。だから、そこをしっかりとバランスを取って日本人の暮らしを守る、日本人ファーストです。

それをやってこなかったのが自民党。自公政権ですね。(以下省略)

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20250703/k10014851971000.html

一通り読むと「当たり前の事を言っている」様に聞こえます。

しかし、ところどころに強い違和感を覚える発言がありました。「今まで間違えたんですよ、男女共同参画とか。」「経済合理性や個人の自由だけを求めていたら社会がもちません。」です。

これは民主主義・男女平等・個人の尊重といった基本的人権を否定し、戦前回帰を思い起こさせる「強烈な出産奨励」です。

思い出した発言があります。柳沢伯夫厚労相(当時)による「産む機械」です。

「女性は産む機械」発言の柳沢厚労相、安倍首相が厳重注意
https://www.afpbb.com/articles/-/2174092

そもそも少子化の主たる原因は女性の社会進出なのでしょうか。答えは「否」です。最大の要因は「未婚化」であり、その背景には「生活苦」があります。

国立社会保障・人口問題研究所の岩澤美帆・人口動向研究部部長の研究では、少子化の要因の8割は未婚化によるものだという。
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUD195GU0Z10C25A5000000/

20代若者の経済的不安の解消こそが少子化対策であるのは明白なのに「とぼける人たち」
https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/70a802dc1983012788e8930667cfa561fc9345d7

若年層の経済状況は依然として好転していません(大卒や大企業正社員層は大幅な賃上げの恩恵を享受しているが、非大卒・中小企業ないし非正規雇用層は恩恵が薄い。)。

新卒時に正社員として採用されなければ、転職活動等によって正社員へ転職できる可能性は決して高くありません。自分の生活が精一杯であれば、交際や結婚に踏み切るのは難しいです。ましてや子供は遙か彼方の存在となります。

いずれも「女性の社会進出」との関係は薄いです。「女性が働かずに結婚すれば、男性の雇用難や経済苦も解消される。」という指摘もあるでしょうが、それは今を生きる現役世代が望む姿でしょうか。

少子化対策で最も重要なのは「未婚対策」です。経済的に恵まれない若年層を中心とした雇用・経済対策により、結婚や子育てができる経済力を有する層を増やすのが大切です。

参政党の政策を推し進めると、確実に保育施設は減ります。保育所等の運営予算を削減する事によって女性の社会進出を阻害し、その予算から家庭保育を行う子育て世帯へ給付しようとするでしょう。

教育・少子化対策・子育て支援に関する参政党の詳しい政策は、「参政党政策カタログ」をご覧下さい。

実はこの政策カタログには「保育」という言葉が一言も掲載されていません。これだけでも保育所等を軽視していると分かります。

同党の歴史は参政党の歴史を振り返る【特別企画】(黒猫ドラネコ)が詳しいです。