大阪市が公表した資料より、令和7年度入所における各区・年齢毎の入所決定率を算出しました。

【重要】令和7年度(2025年度)4月1日の待機児童0人、入所保留数2,451人 大阪市

大阪市全体の入所決定率は80.2%でした。おおよそ5人に4人が入所決定した計算です。

年齢別では0歳児と3歳児が9割近くに達した一方、それ以外の年齢は8割を下回りました。0歳児は原則として年度前半に産まれた児童のみが申し込める、そして3歳児は幼稚園へ進学する児童も少なくない為です。

高決定率は大正区・生野区・平野区・浪速区・西区、急激な少子化や過剰整備が要因

入所決定率が最も高かった区は大正区、次いで生野区・平野区・浪速区・西区となりました。

大正区・生野区・平野区は大阪市の周縁部にあり、少子化が急激に進んでいます。いずれの区でも小学校の統廃合が進められています。梅田や本町といった中心部への交通利便性も決して良くなく、忙しい共働き世帯が選択しづらい地域です。

反対に浪速区・西区は市内中心部にあり、交通利便性が高い地域です。入所決定率の高さを不思議に感じる方もいるでしょう。

浪速区は区北部(概ね蔵前通以北)にファミリー向けのマンションが建ち並んでおり、この地域にある保育所等へは1歳児を中心に募集数を上回る申込数がありました。

一方、区中部は単身者向けマンションや古い戸建て住宅が増え、南部には市営住宅が建ち並んでいます。昔はこうした地域に保育所等を必要とする多くの子育て世帯が居住していましたが、昨今は激減しています。

反対に保育所等の募集数は大幅に増加しました。平成25年度一斉募集での募集数は215人でしたが、2025年度一斉募集では399人となりました。一方で申込数は346人から270人へと減少しています。

恐らくは大阪市は市内中心部の再開発によって浪速区もファミリー層が大幅に増加すると推測したにも関わらず、完全に外れてしまったのでしょう。

西区は待機児童問題が極めて深刻だった地域です。ピークはへ伊勢27年度一斉入所でした。1歳児の申込み倍率は3.29倍、全年齢を通じた倍率も2.05倍に達しました。危機感を覚えたのでしょう。その後数年に渡って非常に多くの保育所等が新設されました。

しかしながら申込数が急速に減少し始めました。2025年度の申込数は579人でした。最も多かった879人(平成30年度)の7割未満です。とりわけ0歳児は申込数が少なく、2025年度一斉募集では倍率0.47倍まで低下しました。

大正区・生野区・平野区は急激な少子化、浪速区は保育所等の増加と少子化、西区は保育所等の急増が主たる要因と言えます。

低決定率は旭区・東住吉区・鶴見区・東淀川区、保育所等の整備不足と利用率上昇が要因

決定率が最も低かったのは旭区、次いで東住吉区・鶴見区・東淀川区でした。この4区も市周縁部にありますが、中心部への交通利便性は決して悪くありません。

この4区の入所決定率が低いのは「保育所等の整備不足」です。

典型例は旭区です。平成25年度一斉募集における募集数は352人でしたが、2025年度は379人に過ぎません。12年が経過しても募集数はたった27人しか増えていません。一方で申込数は419人から528人へと増加しました。

決定率の低さが如実に表れるのが1歳児です。旭区は55.7%、東住吉区は64.9%、鶴見区が62.5%、東淀川区が69.8%でした。市全体の1歳児決定率75.5%を大幅に下回りました。

大阪市は待機児童問題が極めて深刻だった北区・中央区・西区・天王寺区等で集中的に保育所等の整備を進めました。北区は12年で募集数が3倍以上に増加するなど、待機児童問題は徐々に解消に向かいました。

置き去りにされたのは周縁部です。少子化が急激に進むという予測がありましたが、保育所等への申込者がそれを上回りました。しかも第2子保育料無償化が保育所等の利用を後押ししました。

この12年でどう変わったか

手元に待機児童問題が注目を集め始めた2013年と2025年とを比較したデータがあります。

2013年度に0歳児で入所した児童は中学1年生となりました。募集数が大幅に増加した区と殆ど変わっていない区が明確に読み取れます。